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信じられないでしょうけど、色って意外といい名前なんです!

「お客様が落札したアイテムが《Silver cat of lifeblood》《Immortal ruin Dragon》《Common Slime》以上の三点となります。ゴールドは一兆七百億六万ゴールド。よろしいですね?」

「ベット、一兆七百億六万ゴールド」


俺のプレイヤーバンクから滝のようにゴールドが溢れ出し、ジャラジャラと溢れる金の波はバンク五つ分を満腹にさせた。

俺のバンクはプレイヤー特典で限度無制限だが、店で扱っているようなのはそうでは無いらしい。

一つにまとめて入れておいて、盗難にでもあったら大変だからな。

警備の厚いこの国でも無いわけじゃない。むしろ、この国だからこそ多いのだ。

金に困った奴はそっちの方向に流れがちだから。警備が厚いのもそのためだな。


「では、こちらが商品となります。エネミーに関しては、この契約書類にサインをいただければ、その時点でお客様のテイムエネミーとなります。こちらにサインを」


指定された契約書を鑑定し、特に異常もなかったのでサインをする。

一瞬ローマ字でいいのか悩んだすえ、《Yuberu》と綴りを書いた。


それでサインと認定されたのか、契約書が一瞬ぽぅ……と光りすぐに消える。


「これで完了です。お疲れ様でした」

「あいお疲れ。次来る時は是非フリーパスで頼むよ」

「畏まりました」


また今度来る時はもう大人になってるかもしれないけどな。

まだガキだった時、また一悶着あるのは面倒だ。


赤色の液体が少量入れられた小瓶をアオの『底無大胃袋』に収納してもらい、ゴツゴツとした荒々しいフォルムが印象的な腕輪を右腕に装備する。

そして、籠のような窮屈な空間から出してあげた、今は寝ているのか動かない黄緑色のスライムを抱きかかえその場を後にした。


--- --- --- ---


《むぅ。そこは私の特等席なのに》


とは、宿に戻ってのアオの第一声である。

俺の手の中で眠っているスライムちゃんに恨めしげな視線を送っている。


アオの特等席はフードの中とか前言っていたのに。

特等席多すぎるだろう。少しは譲ってあげなさい。


「この子はなんだか眠ってて起きないし。一回放置して、まずは《Immortal ruin Dragon》から調べていくか」


検索……じゃねえや。鑑定っと。

アイテム扱いだからな。違和感が半端じゃ無いわ。


「う……ん……ロードが長いな。直ぐに鑑定結果が表示されない」

《ロード?》

「鑑定にもやっぱり制限があってな。初めてのものを鑑定したり、今回の場合自分のものだから該当しないけど、レベルが一定以上のものは鑑定できなかったりするんだよ」


アイテムには時々レベルがついた意思持ちし魔道具インテリジェンス・アイテムというものがあるんだけど。

そんな大仰な呼び方して起きながら、ゲーム時代ではただエネミー扱いされるアイテムってだけだった。


そんで、それを鑑定しようとすると少し時間がかかるというものがある。

エネミー扱いだから生物に該当する『検索』が適用されるんじゃないかという考えもあり、運営はその間をとったとかわけわからん憶測が攻略ウィキで流れてたっけ。


「……これは、期待してもいいのか?」


浮かび上がってくる文字がいやに崩れおり、まるで殴り書きした暗号のようだ。

しばらくグチャグチャしていた文字が少しずつ形になっていく。


《Immortal ruin Dragon》

《Immortal ruin Dragon》が永遠の忠誠を誓った最後の姿。


アビリティ

『保護色』『圧縮』『アイテム化』『最後の忠誠』

固有(ユニーク)アビリティ

『装備者DEF超アップ』『精霊掌握・大地』『地殻変動』『地力開花』『(ゴールド)アビリティ発動時間短縮』


俺が期待した結果がそこにはあった。


ステータスが表示されなかった時点でインテリジェンス・アイテムではないのだが。

明らかに元々エネミーでしたと言っているようなアビリティを持っている。

(ゴールド)アビリティ発動時間短縮』アビリティとか、普通にアイテムに必要ないからね?


「それにしても。もしあいつなんだとしたら、すげえ弱体化してるもんだ」


その実力に見合ったアイテムになるはずなのに、とてもレベル1600越えのエネミー同等とは思えない。

こちらにくる時の体の変化で弱体化したのか、それともまったく別のやつなのか。


残念ながらインテリジェンス・アイテムではなかったが。

こっちの世界なら、インテリジェンス・アイテムに強制的にできるんじゃないかとも思う。


『意思疎通』『言語理解』『念話』あたりを獲得させれば話ができるようになりそうだし。

『アイテム化』『最後の忠誠』といった後天的に得たアビリティがあるなら、それ相応の行動をとらせれば他のアビリティも獲得できるだろう。


「とは言え、『最後の姿』という記述もあるし。もしかしたらエネミーには戻れない可能性もなきにしもあらず、だが」


うーむ。考えることが多いなぁ。

まぁ今考えても本当のことなんてわからない。意思疎通ができるようになれば直ぐにわかることだ。


手始めに、『エネミー化』とかいうアビリティでも探してみるか。


《どうだった?》

「こいつが元々エネミーだったっていう確証は取れたよ。俺のエネミーだったかどうかは、まだ分からないけどな」

《そうなんだ……》

「そう落ち込むなって。大丈夫大丈夫。それも今後の頑張り次第でどうとでもなるから。全く、俺のために落ち込んでくれるなんて優しい子だよアオは」

《そ、そんなことないもん………………普通だもん……》


よしよし。


撫でているとどこか忠犬を思わせる影が。

ぶんぶんと振られる尻尾と、ぴこぴこと動き俺の腕にすり寄ってくる犬耳が幻視できた。


「お手」


ポム。


俺の手のひらに体こと乗っかるアオ。

さすがにアオのサイズは手のひらレベルではないので、端っこの方は手のひらに乗らず垂れている。


「〜〜〜〜! なんか思ってたのと違うけど! 可愛いから全然オーケー!」


ふぅ。満足。

アオは俺の癒しだよ。

これで、あとは過剰な愛情表現さえ無くなってくれれば天使なんだが。

ふむ……Mにはならないように注意しないと。


「さて、次はこっちの子だな。ユニーク個体だって言ってたから検索してみたら、『万能薬』という合成アビリティの上位互換みたいなのを持ってた」


まだ俺の手の中で眠っているので、軽く揺さぶって起こしてやる。

ぷるぷると軽く身震いしたあと、起きたのだろう、辺りをキョロキョロ見渡して、最後に抱っこしている俺を見上げて

黄緑色の体が一気に青くなった。


「ん?」


黄緑色のスライムちゃんはジタバタと俺の腕の中でもがくので、優しく地面におろしてやる。

ぽよんぽよん、ずりずりと焦ったように移動し始めたと思えば壁の隅っこで丸くなり、ぷるぷる震えながら俺を見ている。


あぁ、なんだろう。

うん。警戒されてる。

こんな可愛い反応されたら、優しく『食べちゃうぞ〜ウフフフ〜』ってやりたくなっちゃうじゃないか。


俺は入ってはいけないスイッチが入りかけるのを根性でねじ伏せ、ごほんとわざとらしく咳をする。


まずは警戒を解いてもらおう。

黄緑色スライムちゃんに手を差し出し、慎重に言葉を選ぶ。


「心配しなくても、俺は君を傷つけたりなんかしないよ。攻撃なんてしない。酷いことなんて絶対にしない。約束するよ。なんだったら契約にそう明記してもいい」


まぁもう契約は済んじゃってるんだけどね。


「俺は君が欲しくて君を買った。裕福な暮らしは、俺の性格からしてあまりできないかもしれないけど、毎日の食事や、生きるために必要なことならなんだって教える。えっと、あとはぁ……ほら、ここに君と同じスライムの優しいお姉さんがいる。アットホームな感じだよ? 俺は君と、仲良くなりたい。俺の、エネミーになってくれないか?」


『テイム』アビリティを発動させながら必死で自己PR。

俺の説得が効いたのか、それともアビリティ効果が効いたのか。

じりじりとにじり寄ってくるスライムちゃんをじっと待つ。

不安を感じさせないように俺も体や笑顔が硬くならないように注意。

手が届く範囲まで来て、何度も抱き上げたくなったがぐっと堪える。


そんな生殺しとも言える時間がどれだけ経ったことだろう。


黄緑色のスライムちゃんが俺の差し出す手に、ポンポンと叩くように触れた。


自然と顔が破顔する。側から見たら、パァァァと音が聞こえるほど満面の笑みをしていることだろう。


スライムちゃんの上に手を置いて、静かに撫でる。


「俺はユベル。これからよろしく」


俺にこの世界で二体目の、エネミーができた。


--- --- --- ---


アオも歓迎しているようで何よりだ。


今俺の目の前では、なにやら黄緑スライムちゃんにアオが訴えているところだった。

まだよく伝わっていないが、じきにわかるようになるだろう。

知らない言語で話しかけられる。それが『言語理解』アビリティ獲得のトリガーだ。


そこに『雑魚ノ反逆』アビリティ効果でアビリティ適性が跳ね上がり、獲得しやすくなる。


《いいですか。私よりあなたの方が一歳年上ですけど、私の方がお姉さんなんですからね。あ、呼び方はアオでいいですよ。ますたーの二人目のお嫁さんですね》


おいコラ。今なんて言った?

聞き間違いだよな?


通信を起動して割り込むと、そんな不穏な言葉が聞こえて来た。


あんまり注目してなかったけど、この子二歳なのか。

ユニーク個体と言うわけで、しばらく育てられてたってわけか。

最初は警戒こそすれ、直ぐに打ち解けられたし人間が嫌いになっていたわけじゃないだろう。

おそらく知らない人だったから警戒しただけだ。酷い待遇を受けていなくてよかったよ。


「アオ。もう『言語理解』アビリティ獲得したから大丈夫だぞ」

《わかったー》


うっおギャップ半端ねえ!

さっきのお姉さんっぽい雰囲気がただの茶番のように思える。


「変に敬語にすんのやめたら? 普通に接した方が楽だろ?」

《だってそっちの方がお姉さんぽいし》

「俺はアオらしいアオをこの子に知って欲しいんだが」

《そお?》

「うん」


二人っきりの時以外はとか言いながら、それ以外でもやっぱやめて欲しいと言いはじめる優柔不断マスター。

我ながら情けないとは思うが、とりあえず思ったことは我慢しないで言った方がいいと思う。

勿論我慢するべき時もあるけど。


直ぐに色よい返事が返ってくる。

素直ないい子だ。


「随分早く『言語理解』獲得したな。有望株だ……」


この子はどんな性格の子なのだろう。

ゲーム時代では考えもしなかったことを考えるのが楽しくて、夢が膨らむ。


なによりも、相手を知り自分を知るには自己紹介!

アオの時に学んだことだ。

アオの時のようにINT上げてないからよくわからないかもしれないが、また今度繰り返し自己紹介すればいい。


「あ、そうだ。自己紹介の前に名前をつけないとな。うん。そうだな」


悩むそぶりを見せるものの、実はもう決まっていたりする。

ネーミングセンスがある方ではないが、ちゃんと考えて決めた。


「お前の名前は『ミドリ』。今日から『ミドリ』だ。よろしくな」

《よろしくね。みどりちゃん》


言ってから、ミドリの様子を伺う。

しばらく無反応だったものの、しばらく経つとぴょんぴょん飛び跳ねて俺のすり寄って来たので、どうやら気に入ってくれたらしい。


レベルも上げてあげないと、あとは、アオにも読ませた某日曜朝七時放送のヒーロー物語を読んで『念話』も覚えて欲しいな。


早く話がして見たい。

ミドリはどんな声なのだろう。どんな喋り方なのだろう。

どんな子なのだろう。

期待に胸が膨らみ、気分は最高潮だ。


「よっし。少し休憩したらレベリングに行きますか!」

《えー》


元気良く言ってみたが、アオは嫌そうな声をあげて後ろに下がり、ミドリは意味がわからないのか首を傾げていた。


「んじゃ休憩時間に失礼して、えっと、俺は……―――」


そう切り出して、自己紹介を始めた。


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