信じられないでしょうけど、オークションです!
「準備と言って…………何もすることがないと気がついた今日この頃……」
《オークションで必要なものってないの?》
「必要なものなぁ〜……大量のゴールド。それは常にプレイヤーバンクで持ち歩いてるだろ。それ以外…………根性、とか?」
どっかの愛しいスライムのようなことを言ってみる。
《それいがい!》
「ない!」
あ、予約とか。ゲーム時代はそんなの必要なかったけど、こっちじゃそうじゃないかもしれん。
席がいっぱいで入れないとか、流石にアホらしい。
でも予約の仕方とかわからんし。
情報屋に聞いておくべきだったかな。迂闊! 俺!
「まぁいいや。風呂入ろ風呂。そんで寝て難しいことは忘れよう」
《軽いよ! イモータル・ルイン・ドラゴンさんのなにかがかかってるかもしれないんだよぉ。ますたーの大事な人だったんでしょ》
「いや、まぁそうでもなかったんだけど……ここまでついてきてくれたのかもってことに感激したというか、なんというか。それに、今考えたところでどうしようもないだろう。だから考えない」
大事な人だったと言われて、アオに本当のことを話すのは少し躊躇われた。
俺という人間の底が知れるから。
ゲーム時代の時の俺は、あいつの事をただレアリティの高いアイテムのようにしか思っていなかった。
そう考えると、俺はマジギレするけど、本質的にはスライムのことを卑下する奴らと同類なのかもしれない。
はっ。なにが家族だ。
テイムしておきながら、名前すらつけずに、挙げ句の果てにはその扱い。
今更になってそのことに気づく愚かさ。
ゲームだから、ここほどにリアルを考えなくて良い世界だったから。
そんなことは言い訳に過ぎない。
もしあいつなら、何故自分の命を捨てて道具になってまで、こんな俺についてきたのか。
それを聞きたい。。知らなくてはならない。どうしても。
今更になって、《Mirukuru》さんが怒っていた理由が理解できた気がする。
「だがもし、その今更が、まだ間に合うのなら。もしあいつがあの時のあいつで、もしあの時の記憶があって、そして、お互いの気持ちを語れたのなら…………」
俺は、なにを思うのだろう。
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「…………入れるか?」
「申し訳ございません。当店では未成年者は……」
「これでも成人している」
心は大人だよ。精神、だけにな。
「はぁ……それではなにか身分証になるものを」
「すまないが持っていない。だがこれでどうだろう」
テイマーギルドで発行して貰えると聞いたが、あいにくすっかり忘れていた。
その代わりと言ってはアレだが、カジノ街道同様プレイヤーバンクの数字を突きつける。
「良い『客』と『店』の関係が築けると、思うんだが?」
フードの中から睨むように笑う。
ゴクリと唾を飲んだ男は、少し悩むそぶりを見せた後
「どうぞ」
中へ通してくれる。
中に入るとロビーのような場所が広がっており、かなりの人がいた。
《すごい人だ……ですね〜》
昨日背中を流すのが上手いと褒めてから、本格的に敬語を使うようにし始めた。
無理すんなと言っても聞かないし、自が出てるぞと笑ったときには割と本気で怒られた。
ま、すぐには上達しないだろうし。地道に頑張ってくれたまえ。
俺はどんなアオでも愛してみせるぞ!
「ま、ここは休憩所というか、品定めの場というか。ま、本番はここだよ」
ロビーの奥に足を進めると、五つほどドアが横並びになっている。
その一つに手をかけて、中へと足を進めた。
「言っておくけど。ここは戦場だぜアオ。気引き締めといたほうがいいぞ?」
《アオ、私もそうゆうことできるように頑張る、ります!》
「おう。期待してる」
どうやら、カジノとかで何もできずにただ見守っているだけだったのがすごく嫌だったようだ。
得意不得意というものがあるし。これは経験がものをいってるから。
別に今んとこは俺に任せっぱなしでも良いと思うんだよね。
アオは俺にテイムされてるエネミーなわけだし、もうちょいますたーを頼っても良いと思うんだ。
でもそれが嫌だ、手伝いたいっていうんだから、本当に難しいもんだよな。
「おっと、もう始まってたか」
俺がきたときにはもうオークションは始まっていた。
始まったばかりという感じなので、待ち時間もないしちょうどいい感じと言ったところかな?
(あ。アオだから大丈夫だとは思うけど取り敢えず、私語は出来るだけNGな。念話俺以外に送っちゃダメだぞ? 俺も通信繋げて喋るからさ)
《らじゃー》
(よし。えーっと、空いている席で、出来るだけ舞台が見やすいとこで、両隣がナイスバディのお姉さんで囲まれたとこはアイタタタタタタタ! 冗談! ジョーダンだから!)
頭に噛みつくんじゃありません!
どっかの動く教会羽織ったシスターかお前は。
(おぉぉぉぉ……ここは不幸だっていうべきなんだろうか。ちょっと気持ちがわかったかもしれない)
《ますたー。あそこなんてどうかな? 空いてるし。少し後ろだけど段差があるから舞台は見やすいし。周りに誰もいないから。広々としていいよね。ね、ますたー。ね》
(あ、あぁ。ウン。ソダネー。イイネー。アリガトーアオ)
あえてここで核心に触れておこう!
キレた女の子に近寄るなかれ。触らぬ神に祟りなし。人間万事塞翁が馬!
え? ますたーの威厳?
うむ。どっかに売っぱらった覚えがあるな。はて、いくらで売れたっけ。
(よっこいしょっと)
「3000ゴールド!」
「お、競りが始まったか。アオ。この時だけは小声なら話しても大丈夫だぞ」
《ますたーとしか話さないから平気、です》
うわ〜……なんか距離を感じるわ〜……
思いのほか心にくるな……心痛え〜、すっげえショック
どんなアオでも愛してみせる! あぁ愛してみせるとも! だけどやっぱり距離は感じるんだよ!
《ま、ますたー。ごめんね。その、そんなつもりじゃなくて!》
(嗚呼! やっぱりその喋り方の方がいい! アオが俺のテイムエネミーとして恥ずかしくないようにって頑張って礼儀作法を覚えてくれているのはわかる! すっげえ嬉しいし、だから無理やりやめさせようとは思わない! でもだったら、他人と話す時はそれでも構わない。誰と話すことになっても敬語で構わない。でも、俺との時は、会話の時だけは、敬語なしで頼む! なんか、距離を感じちまって嫌なんだ……頼む)
《わ、わかった! ますたーと二人っきりで話す時は素の私でいるね》
(ありがとう。んでアオ。今アオは自然に自分のこと、私って言ったの気づいてる?)
そうゆうことだ。
無理に変えようとしても、変に拗れるだけ。
少しづつ、すこしづつ。急ごしらえはどれもグラグラで不安定なものだから。
しっかりと土台から作っていこう。
《うん》
(てかさっきも思ったんだけど。俺の考えてることってアオに聞こえてんの?)
《聞こえてるよ》
(おかしいな。俺に念話アビリティはないんだが……)
いや、通信をつなげて喋るような容量で言葉を送っているわけだから、念話に近いのか。
アオは声帯がないから念話で会話というイメージがあったから、俺のやってることが念話に近いとは思いもしなかった。
え? あれ? ということは、通信をつなげている間、俺の本音は全てダダ漏れというわけで。
それはつまり、本音では女の子に囲まれたいと思っていることがバレ―――
《うん。そうだね。全部聞こえてるよ?》
アオの声は黒かった。
しまった! 逃げ場! 逃げ場はどこだ!
《ま、ま、いっつもいっつも、ますたーはぁ……》
逃げ場! 逃げ場!
ふう、もう遅い。全ては手遅れだ。
《ちょっとは反省しなさーーい! ばかあーーーーー!》
うぎゃああああああぁぁぁぁいぃ――――……
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「な、なぁーアオぉ。機嫌なおしてくれよぉ」
《ふーんだ。今度こそ私は怒ったからね》
宿に戻って、ベットの上で激おこぷんぷんスライムと化しているアオに謝り倒していた。
「アオのために、こんなものを買ってみたぞ?」
《え? 私のために?》
「そうそう。アオのために競り落としたんだ」
『戦の道 〜守〜 』『防御とは最大の攻撃なり』『魔法に負けるな。努力は才能を凌駕する!』『流せ。いなせ。力の利用で世界が取れる』
素晴らしきかな世界に誇るオークション。どれも超のつくレアアイテムだ。
アオは読書が好きなようだし、なりよりこれを読めば、適応すればだけどアビリティが取得できる。
適応度はアビリティ適性が高ければ高いほど多くなる。
それは人族プレイのいいところなのだが、アオも『雑魚ノ反逆』の効果でめちゃくちゃアビリティ適性高くなっている。それこそ人間並みに。
エンジンのダンジョンで手に入れた本も使ってみないとな。
「アオ、読書好きだろ? だからそっち方面で考えて、なら楽しみながらアビリティ取得して強くなれるっていうのがいいかなって」
どうだ。
《そ、そんなことで機嫌とろうとしたって、知らないもん》
おぉ。だいぶ揺れてる。
よし、ゴリ押すか。
「まぁまぁ。これで機嫌なおしてくれよ」
アオを持ち上げすっぽり膝に収め、なでなでを繰り返す。
《ぶぅー。ますたーは撫でれば解決すると思ってませんか?》
「そんなことないよ。ただ、アオは優しいから、許してくれるだろうなって思ってるだけ」
《……ずるい…………もう》
そっぽを向きながら、控えめにスリスリと俺の手にすり寄ってくる。
あーーーーーー可愛いなぁもーーーーー!
愛らしすぎるだろ何この生物天使なの天使だよねめっちゃ幸せです!
アオは青いから、赤くなっているのがすぐわかった。
「にしても、やっぱりというか《Immortal ruin Dragon》のアイテムは今日は出なかったな」
やはり予定通り、明日出品される予定なのだろう。
今日の本代でそれなりに消費したが、俺の財産で考えれば安いもんだ。
明日もこれぐらい順調に、何事もなく行ければいいんだけど。
「油断は禁物。確実に獲得しないといけないからな」
《いざとなったら、アオが戦うよますたー。その時は頼ってね》
うむ。最悪、エネミーバトルを持ちかけて腕輪を賭けさせるのも手だ。
「おう。その時は頼むよ」
《任せて〜》
さて、風呂入って寝るか。
3日連続で入ると言うと、カリナさんも目を向いていた。
そこまで驚くことかね。
ここのお風呂いいもんだぞ?
もっと自分の働いているところに自信を持ちなさいと、なぜか心の中でカリナさんを励ましているのだった。




