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信じられないでしょうけど、ラストゲームです!


「情報を売ってほしい」

「はぇ? 子供さんでございやすか? わざわざこんなとこまで来なくても、表にはいくらでも情報屋くらいございやすが。なんでまたアッシなんかのところに……」


宿で一晩を明かしてから、まだ日も登らない朝早いうちにカジノ街道の裏道の奥へと足を踏み入れていた。


「レベル58のアンタに頼むのは道理だと思うんだけど。そこんとこどうよ」


レベルという最高機密級の個人情報をあっさり見抜き暴露した俺に、とぼけたような顔をした情報屋は目を見開いた。

そしてその猿顔を破顔させ、目元を覆い笑い始める。


「……いやぁ。こいつぁ、まいった。てぇしたもんだ。一本取られちまいやしたよダンナぁ。なんの情報をお求めで? この役立たずの知っていることでよければ、喜んでお教え致しやすぜ」

「助かる。報酬もそれなりに出すから安心してくれ」


探知に引っかかったときには驚いたよ。

他の人より圧倒的に点の大きさが違うんだもん。


「じゃあまず、《Immortal ruin Dragon》というアイテムの出品されるオークション会場を教えてくれ」

「こりゃまた。なんとも。それなりに大きなところですから、少し危険がありやすが?」

「別に大丈夫だろう」

「そうでやんすか。オークション会場にはこれといった名前がないんでやんすが、場所なら」


カジノ街道の最深部。

カジノ街道の行き止まりには、ひときわ大きな建物がある。

そこが、今回数多く存在するオークション会場の中で、選ばれたのだという。


何回かいったことがあるな。

余談だが、この前言った《Legend Angel of plumage》が出品された所と同じだったりする。


「成る程。次だ。そのアイテムが出品される日時」

「明後日の予定のようでやんすね。オークション開始日は明日ですが」

「それは知っている。明後日、か……」


あくまで予定は未定だ。

どうしてもそのアイテムは獲得しておきたい。

さて、どうしたもんか。


「そもそも《Immortal ruin Dragon》ってどんなアイテムなんだ? どんなルートで流れてきた? 誰がオークションに出したんだ?」

「あくまで噂ですが、『腕輪』のようでやんすよ? 効果まではわかりませんね。ルートは不明とされておりやすが、十中八九この国の偉いさんたちの差し金でしょう。もともとそのアイテムはこの街の近隣で見つけたものらしく、それを手に入れた貴族が平民から金を搾り取ろうとオークションに出したんだと言われてやす」


ふむ。まぁそんなとこか。

予想と似たようなもんだったな。

それにしても腕輪が。やっぱ重要なのはスペックよりデザインだよな。


そして、ゴールドを払わずして、《Immortal ruin Dragon》というアイテムが出品されるという裏も取れた。

がめついとか言わないでほしい。EGOプレイヤーは誰よりもお金に几帳面なのだ。

時々その緊張がブチギレてぱーっとする時もあるけど。


「ありがとう。いくらだ?」

「ちょっとちょっとダンナ嫌ですぜ全く。どこで誰が聞いてるかわかっもんじゃねぇんでやんすから。そんな声で出すなんて…………こんなんで如何です? へへっ」


俺と距離を詰め、指の数で額を指定してくる。


「いや、流石にそれはぼったくりすぎるだろう。せめて……これだろ」

「まいりやしたねダンナ……うぅーむ。ならば、……これで」

「うーん。まぁそんなとこだろ。支払いはここですませていいよな?」

「あまり目立たないようにしたいもんでやんすね」


わかっているとも。

なんというかこの緊張感、映画みたいでちょっと楽しい。

昔からこうゆうのに人一倍惹かれてたからな。


プレイヤーバンクからさりげなくゴールドを取り出し、情報屋さんのバンクへと流し、特に挨拶をするでもなくその場を離れた。


--- --- --- ---


「ふぅ。よし、アオもう出てきても大丈夫だぞ」

《うぅーん。ぷはっ。終わったぁ?》

「終わった終わった。別に怖くないのに」


裏道から抜け出してカジノ街道へと戻ってくる。

パーカーの中から首をのぞかせたアオがブンブンと首を振った。


そんなに嫌かね。


《だって、ますたーがいつもと違うし……》

「そりゃあ子供だからって舐められないようにだな…………それでもこの体のせいでどうにもならんけども」


ということらしい。

俺の変貌が嫌なようだ。


「ま、その時だけだからさ。アオもすぐ慣れるんじゃないかと思うぞ?」


それにしても、オークションの開始日は明日であってたな。

《Immortal ruin Dragon》が出品される予定なのは2日目だから明後日。

だが、さっきも言ったとおり予定は未定。

何があるかわからないから、明日から行っておくとしよう。


「そうと決まれば、今日は最後の晩餐。ダメ押しに死ぬほど稼いでやろうじゃんか」


こういう時だけ子供の体は便利だ。

舐めてかかってきてくれるのは非常に嬉しい。こちらが非常〜にやりやすいから。


明日からはオークションに徹するとしよう。

そう考えると、カジノで遊ぶのも今日が最後かな?

宿で色々と明日の準備したいし、一店だけにしとこう。


昨日行った店には行けないから、まだ行ったことのないとこにしないとな。


適当に扉に手をかけ、ギギィィ……木製のなんとも言えない音が聞こえてくる。


「いらっしゃいませお客様…………ヒィッ!」


俺を見た途端作り笑いが溶け去り叫び声をあげた男性。

どうでもいいが、人の顔を見て悲鳴をあげるとは、少し失礼なんじゃないだろうか。


っと思ったのもつかの間、周りからの視線を受けて俺もようやく悟った。


あ。俺の噂、もう広まってるっぽい。


やべぇ! このままじゃ誰も勝負に応じてくれないかも!


と思ったのだが、なんとなんと、逆にゲームに誘われたのだった。


「よう、坊主。昨日は俺がいないのをいいことに随分でかい顔してたみたいじゃねえか」


検索。


「あんたがいなかったかそうじゃないとか、そんなことどうでもいいんだけど?」

「おいおい。ゲーム前からそんなびびんなよ。ま、俺様と会っちまったのが運の尽き。俺と勝負しろ坊主。スカンピンに干して今日の酒のつまみにしてやる」

「出来るもんならやってみろと、ユベルはユベルはあえて挑発してみる」


検索して見てわかったこと。

この、ゴンタという男。カジノ街道の現最強だ。


--- --- --- ---


「ルールは一対一のポーカー。先にどちらかの所持金がなくなった方の負け。それでいいな?」


ポーカー。


「あぁ。構わない」


さて。まずは少しおさらいと行こうか。

まず、ゴンタさんはかなり強い。いや、強いというか『イカサマ』と『看破』のアビリティを持っている。


『イカサマ』アビリティとは読んで字のごとく、ゲームでイカサマをするためのアビリティ。

使用するとイカサマの手法が頭に浮かび、その通りに実行することでイカサマが100%成功する。しかも魔法に近いアビリティ能力を使っているので、やりすぎなければほぼバレることはない。


しかしそんな便利の反面。『看破』アビリティで見破られると、イカサマが解けてアビリティ効果自体がキャンセルされてしまうという弱点もある。


そしてこの男はその両方をもっている。

この条件なら、連戦連勝も夢じゃない。無敗だって余裕で可能だろう。


俺とゴンタの前に5枚のカードが配られる。


「ふむ……」

「俺様からだな。三枚だ」

「そうだな……二枚」


手札交換はこれにて終了。

賭け金釣り上げタイム。


「手始めに、600万追加と行こうか」

「なんだ。意外と謙虚なんだな。1億追加」

「ハッハッハッ! この俺にそんなハッタリが通用すると思うなよ? いいだろう、のってやる」


手札オープン。


「スリーカードだ!」

「ストレート」

「なにぃ!」


手始めに俺の勝ちっと。

お前、看破使わないどころか、イカサマも適当に発動しただろ?

なんだよスリーカードって。ガキだからって舐めてっからこうゆうことになんだよ。

あ、目つきが変わった。


「てめぇ……イカサマ持ちか……」


小声で訴えられたが華麗にスルー。

敵にわざわざ塩を送る奴がいますか? バカなんですか死ぬんですか?


「クソが……調子付いてんじゃねぇぞクソガキ……」


お、目が据わった。

今度は看破を使ってくるかな?


「では、第2ゲームを始めます」


ディーラーの合図と共に、再びカードが配られる。


「二枚」

「四枚だ!」


あらら。怒りに我を忘れてだいぶでかいイカサマ使いやがったなこいつ。

あまりデカイやつにしすぎるとさすがにバレるからやめた方がいいのに。


そしてさっき。

わざと気がつかないふりをしたが、俺がカードをチェンジしようとしたときにこちらを思いっきり睨んでいた。

おそらく看破を使ったのだろう。


「賭け金レイズ。3億ゴールド」

「フハハハッ! いいだろう! のったぁ!」


手札オープン。


「俺様はストレートフラッシュだぁぁぁ!」

「ロイヤルストレートフラッシュ」

「はぁぁぁぁぁぁ!」


俺の手札を凝視しながら叫び声をあげるゴンタ。


「ば、バカな……だって、俺は確かに、看破を……」


愕然とした表情で俺の方を向いたゴンタへ。

思いっきり満面の笑みを返してやった。


全てを悟ったかのように顔面蒼白化するゴンタ。


まさか俺が、勝率の薄い戦いに挑むとでも思っていたのか?

確実に勝てるから、勝負を受けたに決まってんだろ?


『イカサマ』のレベルが『看破』のレベルを上回っていればレジストできるというものがある。

だが、俺のイカサマアビリティは、昨日散々ハンドテクニックでイカサマしまくって手に入れたもので、とてもレベルは高いとは言えない。

ゴンタの『看破』レベル5はレジストできないだろう。しかし思い出して欲しい。


俺がこの国に入る前に、『交換』アビリティを使用したのを。


「…………まさか、こんなことに使うとは思わなかったよ」


交換したのだ。


『弱化』アビリティと、『妨害』アビリティを。


交換の効果は。代償を支払うことで、今現在獲得しているアビリティを捨てることで、交換対象に指定されているアビリティの中から捨てたぶんだけ獲得できるというもの。


そしてこの効果の一番いいところは、レベルを引き継げることだ。

つまり俺は今、レベル22の『妨害』アビリティを持っていることになる。


本来は、誰かに検索とかされてステータスを見られたら困るから自分のアビリティを隠すため。という理由で交換したのだが。

思わぬところで有効活用できたようで何よりだ。

あの時はムカついたが、妨害アビリティを俺に見せた猿鬼は褒めてやろう。


「あ、いや。褒めるのは無し。それのせいでアオと会話できなくて、俺もアオもすげえ不安にさせられたし」


話を戻そう。

レベル22の『妨害』を、レベル5の『看破』が抜けられるはずがない。

逆に俺の『看破』のレベルは39。対して相手の『イカサマ』のレベルは6。


「自分はイカサマを封じられ、相手はイカサマし放題。サイドバック状態だなおい。今まで他人にしてきたことを、自分がやられる気分はどうだ?」


誰かに聞かれたらまずいので、耳元でぼそりと呟く程度にしておく。

まぁそれでも効果覿面だったのか、ゲームの間中ゴンタはずっと「……嘘だ……嘘だ」と呟きながら手札を眺めていた。


--- --- --- ---


「あ、ありえねぇ……」

「あのガキ……何者だ……」

「ば、化け物……」


いつもの常識と照らし合わせるのなら、その空間は非常識の一言に尽きた。


外から聞こえてくる賑やかな音が嘲笑っているかのように、言葉一つ一つが鮮明に響いてしまうほどの静寂。


「あの、無敗のゴンタが……」

「連戦、連敗。全ゴールドを吐き出されちまった……」


皆目の前に広がる光景を到底信じることはできなかった。

自分たちが幾度となくゴールドをむしり取られ、何度か勝とうと試みても勝てなかったゲームの化け物。


その男が、バラバラとカードを地面に落とし、(こうべ)を垂れていた。

その姿に、今までの迫力は微塵も感じられない。


ガチャ


扉が開く音に、停止していたものたちの首が一斉に向けられる。


いつの間に移動したのだろう。

化け物をいともたやすく食い散らかした、化け物。


その子供は、その場から出ていく際、ニヤリと笑みを作った。


そして皆が悟った。


あれは化け物なんかじゃない。正真正銘の



悪魔だ。と。




最後のユベル君の悪魔の笑み。


あれは、たくさんゴールドが入って機嫌がいい、ただのホクホク顔です。


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