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信じられないでしょうけど、何故かイベントが不可避です!


「う」

《う》

「《うまーい!》」


んだこりゃうーまーいーぞー!

シェフを呼んでくれ。


「そ、そこまで喜んでいただけると、きょ、恐縮です」

「え! これカリナさんが! ちょっとちょっと! そこら辺のレストランなんか目じゃないすよ! グレートっすよ。こいつぁ」


《熊除け蜂蜜亭》の食堂。

《虎の子休憩所》と同じ失敗は繰り返さないと意気込んだ俺がぎゃーすか喚く理由を作ったのが、何を隠そう、カリナさんこと、さっきカウンターで受付してくれた人だった。

おいおいおいおい。愛想が良くて、人当たりが良くて、おっとり美人で、全然若くて、性格も良くて、容姿も色々出るとこ出てて、おっとり美人で、しかも料理上手!


「すげえハイスペック……」

「そりゃあそうだろうともさ! カリナちゃんはどんな仕事もこなせるからなぁ! ヒック。まだまだ若いし。この宿のアイドルみたいなもんなのさ」


酒を搔っ食らうおっさんグループ。

グッジョブだ。情報提供感謝する。


心の中でグッとサインを送り、サッと片手をカリナさんの目の前に差し出す。


「よし結婚―――」

《ばかーーーーーーーーーーーーーーーーーー!》


―――しようーーーーーーー!

キーーーン!


ぎゃぁぁぁぁぁ! 耳が! 耳がぁ!

ぐ、お…………頭が、割れる……


そして自分が続けようとした言葉に気づき正気に戻る。


「―――する時には、ウェデイングケーキを作っていただきたいな。是非」

「えぇ。そんな高級なお菓子はさすがに作れませんよぉ」

「そ……そうですか……。それは、残念」


頭を抱えたくなるのをこらえ、テーブルを向き直りながら文句を


「な、何すんだよ急……に…………」


言おうとして、ピシリと凍りついた。

アオから巻き起こるスライムオーラ。

あまりの迫力に数歩後ずさり、伝ってきた汗を拭う。

それまさしく、鬼神の如し。


ごくっ


「あー、その、アオさん?」


やべえ。頭の痛みなんて吹っ飛んだ。

な、なんだろう。この、空腹のライオンを目の前にしたウサギみたいな心境は……

ごごごごごごごごごごご


「怖い! 怖いよ! 漏れてる! 負のオーラが漏れてるから! 落ち着いて!」

「あ、あの、お客様? どうかなさいましたか?」

「あぁいや。すいませんカリナさん。心配かけちゃって」


俺がカリナさんの方を向き会話を交わした瞬間、爆発したかのように強くなる黒いオーラ(殺気)の渦。


うお……周りの反応から見て、俺単体にぶつけてるよな。

結構凄い技術だぞこれ。全ては怒りのなせる技か……


あまりの緊張に、一粒の汗が地面に落ちた音すらはっきりとわかる。


そんな精神の攻防が何戦繰り広げただろう。

殺気を当てられながらも背を向け続けカリナさんと会話しようとする俺に、ついにアオさんが吠えた。


《もう! ほんとにもう! すぐマスターはそーやってぇ!》

「そ、そんなに怒ることかなぁ……」


小さく呟いてから改めてアオと目を合わせる。

まぁアオはスライムだから、目とかないけど。

実際はあるらしいが、スライムの体の構造上、外見からは見分けがつかない。


《もう! そんなんだから! 反省して!》


テイムエネミーに反省させられるマスター。

これいかに。


「確かに悪い癖だとは自覚してるよ? でも男なんて皆んなそんなもんだろ?」

《そんなの知らない! もんどうむよう! 他の男の人がそうでもますたーはダメなの!》

「そんな!」


だってさ。考えてみろよ。

そこに、可愛い二次元の美女がいるんだぜ?

可愛い女の子がいたらそりゃ口説くだろう。男なら。本能で。


口説いたっていいじゃない! だって可愛いんだものっ!


え? 口説く、よね?


カリナさんは首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークを大量に生み出していた。

どうやら、俺が独り言を叫んでいると勘違いしているようだ。

しまった! そうだ側から見たら俺痛い人だった!

やっべ忘れてた!


「アオ! いやアオさん! 頼む! ますたーの危機だ! 皆んなにも、いや贅沢は言わない、せめてカリナさんだけでも念話を!」

《ふーんだ》

「うぬぬぬぬ」


可愛らしく顔を背けるアオ。

そして、それを見て可愛らしく口元を抑えるカリナさん。

おぉ。これで、少なくとも意思疎通はできているとわかってくれたようだ。

少し嬉しい俺とは打って変わり、アオさんはすっげー不機嫌だけど。


《ますたー。ますたーのお願いなら聞きたいんだけどね。念話のやり方がわからないの》


嘘くせー。

アビリティ説明にも単体限定とは書かれてなかったし。


《ま、ますたーもアオのゆうこと聞いてくれないもん! だからお返し!》


あ、俺の疑うような眼差しですぐに本音ゲロりよった。

がくっ。

そして膝から崩れ落ちる。

そんな…………俺はこのまま一生、変人の烙印を押され生きていかなければならないのか。


「まぁいっか。俺だけって言うのも、なんか特別扱いっぽくて嬉しいし」

《ますたーは時々ポジティブでアオを、じゃなかった。私を驚かすよね》

「そろそろ無理すんのやめたら? 最近一人称直すの忘れてたろ?」

《ますたーこそ。声出したら変人だよ?》

「アオは俺にしか念話飛ばさないんだろ? なら今後のためにも、変人扱いにも慣れておこうかなって」

《後ろ向きに前向きすぎるよ!》


これは俺専用のアビリティみたいなもんだからな。

全EGO時代のキチガ以下略。


「あのぉ……お客様? そちらのスライムは、言葉を理解できるのですか?」

「それぐらいスライムなら当然でしょ?」


その時その空間で俺の言葉を聞いた全員は同じ事を思った。


『なわけねーだろ』


と。


「うわ……信じてねえな。アオ。右向け〜右」


キュ!


「おお!」

「すごい!」

「嘘だろ!」

「スライムが言葉を操るなど聞いたことがないぞ」

「躾けているに違いない」

「なんでこんなところに薄汚いスライムが」

「全くもって汚らわしい」



はぁ?



バギイィイン!



一瞬で俺の中のスイッチが切りかわり、辺りの空気が冷たいものへと変化する。

さっきまで活気と喧騒に包まれていた食堂が、何の音も生まれない重い空間へと変貌を遂げる。


俺の使っていた机が粉々に砕けるが、そんなことはどうでもいい。後で弁償しなくちゃな。

楽しく飲んでいた人達からも笑顔を消してしまって申し訳ない。

だが文句は、そうさせた大元に言ってくれ。


声が聞こえた方向に視線を向けると、中々羽振りの良さそうな貴族らしい奴らが目に入る。


躾ける? 薄汚い? 汚らわしい……だと? ……言葉に気をつけろよクソ共……


「な、なんだその目は! 僕はこの国の貴族だぞ!」

「だからなんだ?」


普通に聞いたはずなのに、貴族と叫んだ少年は椅子に座りなおしがたがたと震え出した。

なんだ? オイ。俺なんかの威圧でビビんなよ。アビリティ補助だってないんだぞ?


俺のすぐ隣で青い顔をするカリナさんに軽く一礼して、貴族たちが座る席まで移動する。


「な、なんだ」

「撤回してもらおう。それとも死ぬか? あぁ?」


なんかいつも以上にキレてんな俺。

やっぱり、アオが薄汚いとか汚らわしいとか言われるのは、勘弁ならんらしい。

当然か。当然だな。


「ふ、ふざ、ふざけるな! 誇り高き貴族が、貴様のような平民、しかも、薄汚いスライムなんぞに、……」

「ごちゃごちゃうるせぇよ。この世界は金を持ってる奴が偉い。金を持っている奴が強いんだ……」


こいつらが俺以上にゴールド持ってるとは、思えないんだよなぁ〜


「この机みたいになる前に心変わりした方が、身のためだと思うよ?」


そう言って机を握りつぶす。

もちろん全部は無理なので、先っぽの一部だけ、めきょりと。

さりげなく溜めておいた『反射』さんマジ有能。


「は、はわわわ……お前ら! 早くこのガキをどうにかしろ!」

「ははっ! 全員でこの者を取り押さえるぞ! 配置につけ! 子供だから許されると思うなよ? 不敬罪で死刑は免れぬぞ小僧」

「やかましい。それと全員って誰に言ってんだ? みんな寝てるけど」

「は……? そ、そんなバカな! お前たち! 一体何か……貴様! 何をした!」


こいつら護衛だろ? こんなに弱くて大丈夫か?


「俺は何もしてないよ? こいつが、おっと。ははっ。アオお疲れ〜。このアオが全部倒したから」

「何をバカな」

「やれ。ブルーベイビーズ」


俺がそう指示すると、何処からともなくしゃっと音がなり。

直後、護衛さんはばったりと地に伏した。


誰にバレるでもなく暗殺を完遂しきった。

見事。100点だ。


「さぁ。頼みの綱の護衛さんはいなくなったわけなんだけど。どする?」


貴族がとった行動はまぁ言うまでもないだろう。


--- --- --- ---


「全く失礼な奴らだ」

「す、凄いですねお客様。でも、お気をつけてください。あの方々は執念深いで有名でして」


カリナさんが話しかけてきたことに少し驚く。

自分で言うのもなんだが。よくこんな奴に話しかけられるなこの人。

さっきまで青い顔してたのに、クリスちゃんといい、この世界の人達メンタル強いな。

お手伝いさん最強か?


「まぁ軽率な行動だったとは思うけどな。後悔はしていない。ま、別にいーよ」


黙っておくことの方が俺的には辛いし。

にしてもこの国の貴族、ねえ。


めんどくさいことになりそうだなぁ……

俺の精神衛生的にも


できるなら、もう二度と会いたくないもんだが。



はい、フラグ。


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