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信じられないでしょうけど、スライムの成長は異常です!


《それでね。いっぱい考えてね。罠ごと食べちゃうことにしたの》

「成る程……」

《凄い? 凄い? ねー凄い?》

「お腹壊すでしょうが! 今すぐぺっしなさい! ぺ!」

《うわぁあぁあぁあ》


アオを掴んでひっくり返しぶんぶんとふる。

みょいんみょいんと弾力に富んだ動きをするアオ。


《ぶぅ! ますたーのために頑張ったのにぃ!》


こりゃ無理だと離したところで、アオがブーたれる。


「それは嬉しいけど。さすがに地面を食すと言うのは………………悪かったよ……」

《あー、頑張ったなー、頭を撫でたくならないますたー?》

「なんだ。撫でて欲しいならそう言や良いのに。話せるんだから。いつでも撫でてやるぞ?」

《〜〜〜〜〜っ! そ、そうゆうのは私からじゃ言えないの! もう! ますたーのわからん人!》

「す、すみません」


とりあえず撫でておく。

アオが言ったことをまとめると、罠だらけで動けなかったから、罠が発動するスイッチである『地面』を食って通ってた。と言うことらしい。

おかしいな……地面を剥がして通れるかとかの実験はされていたはずだし、それは失敗したはずだけど。


「衝撃を与えただけで発動するから、剥がそうとしても結局罠は発動するし。腹の中に入れたとしても、結局腹のどこかに触ったら同じだぞ?」

《ふみゅぅ……お腹壊すかと思って、念のため食べたらすぐに『消化』してたんだけど》

「それだな」


すぐに消されちまえば、流石にスイッチも起動できないか。


「アオ! 凄い!」

《でしょ!》


アーオーー……

まーすーたーー……


ひしっ!


演技めいた動きで抱き合う。


「さて、茶番はこれぐらいにして宝箱を開けるとするか。アオ。本当に問題ないんだよな?」

《うん。全然大丈夫だよ》

「念のため検索っと…………レベル上がってるねぇ。1068になってる……」


レベルの高い罠を食いまくったからかな。

こりゃすげぇ。『雑魚ノ反逆』アビリティのおかげでステータス上昇値もバカみたいに貯まってやがる。

これでまたアオの安全性が上がるな。


そして完全に俺が抜かれるな……レベルは桁が違うってのに……


まぁいいけどさ。しょうがないことだし。なにより良いことだし。

喜ぶとしよう。


「本当にすごいよ。いや、これはマジな方で。自分で頑張って道を切り開いて。言葉で言うみたいに簡単にできることじゃない。お前の成長度合いがありありとわかる。ありがとう」

《な、なんでお礼するの?》

「え? だって俺のために頑張ってくれたんだろ? だからそのお礼」

《……う、うん……どういたしまして…………そ、それより、宝箱開けよ》


あ、話逸らした。

焦ってる。可愛いなぁもう。

まったくうちのスライムちゃんは。どうしてこう可愛いのかね。


「そうだな。別に罠とかないし、普通に開けちゃって良いぞ?」

《アオが開けるの?》

「今回一番頑張って、一番成長したで賞の賞品ってことで」

《アオ……じゃなかった、私にくれるの?》

「あぁ。お前にあったものだったらな」


鎧とかだとアオには縁が無いから。

そういう時は代わりに何か用意してやろう。


《わーい。ごかいちょー》


宝箱が光を放出しながら開き……光が弱まって中身が見え……


バッ!


「これはアオにはあげない!」


即中身を取り上げ背中に隠した。


--- --- --- ---


《えぇ〜。なんでぇ〜》

「よりによってこいつが出るとは…………いや、エネミーであるアオが開けたからか? だとすると、一応説明がつく。だからといってなぁー……」

《ねぇーますたー。くれないのはいいから、どんなのか説明してよぉ〜》

「こ、これ……」


アオの前に、紫色にぼんやりと光り、内側に行くたびに深い色になっている手乗りサイズの水晶玉を持って行く。


《なにこれ?》

「アイテム名『引き継ぎ玉』」

《触らなくてよかった》

「まだ説明してないけど?」

《なんとなくわかったから……。それって》

「うん。ラスボスが倒されたから、多くのボーナスをもらう代わりにこのダンジョンのラスボスを引き継がなきゃいけなくなるアイテムな」


なんでこんな使えないのがドロップするかねぇー。

旅したいつってんじゃん! 察しろよ! ダンジョンのラスボスプレイなんてやってられるか! (ゲームあるある。運ゲーシステム(乱数)にブチギレる)


「引き継ぎはもう少しめんどくさい工程を踏まないと完了しないから、触っても大丈夫だけど。なんとなくアオには触ってほしく無い」


何かの間違いでダンジョンのラスボスに設定されると、解除がほぼ不可能になるからな。


「これを使わなくても。時間が経てばダンジョンが新しい『猿鬼』を再ポップさせるだろ。意味ないのが出ちまったなぁ」


とは言え、曲がりなりにもダンジョン打破の証となるアイテムだ。

ゲーム時代ではかなりの高額で売れたんだけど。こっちじゃどうだろうか。


「あ、道が復活してない……崩れるのを食い止めるので精一杯か……すまんなダンジョン。少しやりすぎたよ。むしゃくしゃしてやった、反省はしていない。後悔もしていない」


するわけなかろう。

俺はそういう人間だ。


--- --- --- ---


「これいるか?」

《帰ってきて早々ネタ振られても突っ込めませんよ……》

「ネタじゃねぇわ! お前俺のことなんだと思ってんだ!」


またまた帰ってきましたよ、ダンジョンの1LDK。

今度は来た道をまっすぐ戻るだけだったのでものの数分で着いた。


俺の優しさで『引き継ぎ玉』あげようかと思ったのに、これ結構高いんだぞ! わかってんのか!


「お前ここに住んでるんだろうが。猿鬼とか来たらやばくねぇ? ラスボスになっとけば、怯えることもないぞ?」

《大丈夫です。僕殴られても痛くありませんから》


あ、そういやアンデット系はもう死んでる扱いだから、HPがないんだ。

そりゃダメージを食らわないし痛くもないだろう。


その代わり陽の光と浄化の力は痛てぇーぞお。


「ラスボスにはなる気なしっと。んじゃこれは換金するとして、ドラゴンよ。お前に大事な話がある」

《はい。あ。お茶出しますね》

「大事な話って言ったよな俺。まぁ入れてくれるならありがたく飲むけど」


カチャ、カチャ……ズスゥゥゥ…………ふぅ……


三人で和んでから、話を始める。


「目的も済んだし。俺たちはこれから地上に戻ろうと思う」

《あ……そうなんですね》


寂しそうだ。

久しぶりに人と話したと言っていたし、それも当然だろう。


「また今度、手土産でも持ってお邪魔するさ」

《約束ですよ!》

「あぁ。その時には、お前のマスターと一緒にな。探しとくから、特徴教えろ」


アオの胃袋から吐瀉物……ではなく、紙とGペンを取り出し、聞き取りモードに移る。

気分はじっちゃんの名をむやみにかける高校生探偵。


《えっと、背が高くて、かっこよくて、あと、かっこよくて、えー……あ、かっこいいんですよ。あとはぁ……そうそうかっこよくて》


ボケてんのかこいつ?


これでわかったらそいつはI.Q以前に人間やめてるな。じっちゃん名前かけ少年どころか、ホームズも真っ青だ。

いや、黄泉返りの記憶障害か。

かっこいいしか思い出せないんだな。あとは背が高いのか。


今もなお、悩むたびに、かっこいいがかっこよくて、かっこいいのためのかっこいいがかっこいい。と連呼しているドラゴンに耳を傾ける。


--- --- --- ---


「んじゃな」

《また来てくださいね〜》

「今度はもうちょっとマシな飯もってくるから」


食材も買ってあったけど、ガスもなければ料理技術もない俺ではどうしようもない。

パンとか干し肉とか、それぐらいしか食べさせてやれなかった。

それでも喜んでくれたが。


《マスターのこともよろしくお願いします!》

「……善処する」


そう言ってアオを肩に乗せ

後ろを振り向かず手を振って、上の階に行く穴を目指して歩き始めた。


--- --- --- ---


《なんとかできそう?》

「めっちゃかっこいい男ってことはわかった」

《それ、何もわかってないってことじゃない?》


よくわかったな。

なんもわかってねぇんだよ。


「取り敢えず、エンジン国のダンジョンで、ドラゴンのエネミーと別れた人。みたいな触れ込みで探してみるさ」


テイムエネミーは、テイマーにとって大切な存在であることが主だ。

そうでもない奴らもいるが、基本、自分のテイムしたエネミーは、一緒にいる時間が長ければ長いだけ思い入れが強くなる。


「あいつのことを本気で大切に思っているマスターなら、今もきっと引きずっている。そんな簡単に、人間は割り切ることはできない。それができるのなら、人間から少しズレているだろう。ま、俺はちょっと、逆の意味で異常だとは思うけど」


ただし、あいつの元マスターが、あいつをただの道具くらいにしか見てなかったのだとしたら。

そうゆう奴もいるからな。そうでないことを祈るばかりだ。


「さて! 暗い話は終わりだ! あと数時間で外に出られる。外に出たら、とりあえず酒場行っていい?」

《うん》

「驚くだろうなぁ。ふっふっふっ。今から楽しみだぜ」

《ますたー、性格悪いですよ〜》

「お! 敬語ちょっと上手くなった?」

《えっへへ。本読んで勉強してるの》


アオは本を読むのが好きなのか。

俺と同じだな。

こりゃ将来は面白い職業に就けそうだ。


「ステータス上昇値、もうちょいINTに流してやるよ」

《本当!》

「そうすればますます頭の回転とか早くなるからな。でもまぁ生きるための最低限の知識はもうあるし、一歳なんだし、知識を与えすぎるのもどうかと思うけど」

《ふみゅ?》

「ま、アオが喜んでくれるならいいや。エンジンに戻ったら、また本を買い込んどこう」

《わーい》


この辺りは子供っぽいんだけど。

あまり肉体と精神年齢に噛み合わないくらいの差ができてしまうと、周りからは少し浮くよな。


…………俺も、人のこと言えないか。


「なんだかんだで、このダンジョンでは得るものが多かったな」


アオの成長が一番大きかったし。

面白いドラゴンとも知り合えたし。


なにより、俺も欲しかった力を、得ることができたのだから。


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