夏休み―始
三題噺もどき―きゅうひゃくろく。
冷たい風が肌を撫でる。
小さく鳴るモーター音は、眠気を誘う。
視界の隅で揺れるのは、片方だけが開かれたカーテン。
「……」
外は雲一つない青空が広がっている。
―のだろう。
今日は一日中家の中に居るから、外の様子なんて知らない。
きっと室内でも電気のいらない程明るいのだから、いい天気なんだろう。
その程度の認識でしかない。
「……」
賑やかな声が時折聞こえる。
近くに住む小学生がそこら辺で遊んでいるんだろう。
毎日毎日飽きもせずによく出来るものだ。
虫取り網を振り回して、あちこち走り回って。
「……」
雨の日なんてわざわざ合羽を着て、レインブーツを履いて走り回っていた。
まぁ、その雨の日ももう来ないんだろうけど。
梅雨が明けたのかどうか定かではないが、ここ数日は気持ちの悪いほどにいい天気が続いている。
「……」
暑い暑い夏が始まったらしい。
それと同時に、夏休みも始まった。
気付けば、あっという間に一週間が終わって、夏休みが始まって。
「……」
ただまぁ、午前中は普通に学校に行かないといけないので、あまり変わったような感じはしていない。……ような気もする。
昼休みがなくなって、あの子と昼食を一緒に食べられなくなって……。
午後は毎日こうして机に向かってみたり、ベッドに寝転がってみたり。
「……」
今は目の前に白地図が広がっている。
その端の方には47の枠が両サイドに半分ほどずつ並んでいる。
それにプラスして何か所か、有名な川や湖の名前を書けるようにされている。
「……」
日本地図ってなんでこう夏休みの度に覚え直させられるんだろう。まぁ、覚えていないからなんだろうけど。
一応、受験対策も兼ねているんだろうけど。
なんでこう、書きづらい漢字ばっかりなんだろうな。
「……」
夏休みに入ってまだ、5日目か。
なんか今年は早いんだよなぁ始まるのが。
何でかは知らないんだけど。
「……」
先週末には夏祭りがあった。
人が混み出すと億劫なので、その前にほんの少しだけ。
あの子と遊びに行った。
浴衣や甚平は持っていないので、私服でだったが。
「……」
可愛かったなぁ。
暑いからか髪はまとめていた。白いワンピースがよく似合うんだよなぁ。
小さなポシェットみたいな鞄を持って、日差しの中でも変わらず、楽しそうに笑っていた。
カメラを持って行かなかったのが惜しいと思うくらいに、向日葵みたいな笑顔だった。
スマホでほんの少しだけ2人の写真を撮った。
「……、」
壁紙にするのももったいなくて、撮った記録だけが残っている。
写真フォルダを開けば、楽しげに笑うあの子の顔がある。
「……、」
……なんか甘いものでも食べよう。
頭が働かないと言うか、なんというか。
集中しようがない。
「……」
冷蔵庫にチョコレートが入っているはずだし。
糖分を摂ってどうにかなるものでもないと思うが。
まぁ、頭が働いていたことなんてそうそうないんだけど。
「……」
「……」
「……」
はー。
早く夏休み終わらないかな。
お題:チョコレート・白地図・ブーツ




