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やりません。やれませんのよ。  作者: 朝山 みどり


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09 上級冒険者

トチュウ村の道に、立派な馬車が止まった。


黒塗りの車体に、飾り金具がキラキラしている。

きれいにブラシのかかった馬が、穏やかな目で辺りを見ている。


村の子どもたちが、遠巻きに見ている。


祖母が小さく言った。


「上級だね」


扉が開き、長身の男性が二人、きりっとした女性が二人降りてきた。



わたしは戸口で頭を下げる。


「いらっしゃいませ」


男は店内を一通り見回した。


干した薬草。小さな棚。質素なテーブルと椅子。


「昔は薬瓶が並んでいた。駆け出しのころ、世話になった。懐かしい」


優しく低く落ち着いた声。



彼は席に着き、仲間も続いた。


仲間は期待に満ちた目でわたしを見る。


「お菓子はなに……なんですか?」


「ショウガの焼き菓子と黒砂糖の焼き菓子です」


「いいですね。両方食べたい」


「お茶はあれ、ほら、疲れを取るっていう」


「はい、みなさん同じお茶でいいですか?」



わたしは湯をわかす。


きれいになれ。


いつものように、水に触れて心で願う。


お菓子を先に出すと、彼らはすぐに食べ始めた。


「美味しいね」


「うん、美味しい」


そこにお茶を持って行った。


「これも美味しい」


「お菓子によく合う。薬草って草の味だと思ってた」


「一緒。でもこれ美味しい。なんとなく疲れがとれたような」


「明日の朝が楽しみだ」


「お菓子、お代わりを」


「はい、すぐに」


追加のお菓子もあっと言う間になくなった。


「いい店を教えてもらった」


代金を払いながら、そう言われた。


冒険者の一人、赤い髪のジャッキーが


「薬はまだ作れないの? 講習会はこれからなの?」


と言った。


少し迷ってから、わたしは奥の部屋の壁から破られた免許証を持って来た。


「わたしの免許証です」


男の眉がわずかに動く。


「取り消されたのか」


「はい」


喉が、少しだけ詰まる。


「見習いが後少しで終わるという時に泥棒だと言われました」



男は紙片をじっと見つめた。


「……ポイード薬局の印だな」


胸が、どくんと鳴る。


「ご存じですか」


「ああ。王都でも名の通った店だ。おれも薬を買ったことがある」


わたしはうなずく。


「そこで見習いをしていました」


男は腕を組む。


「なにを盗んだと言われた?」



「ブローチです。死んだおばあ様の形見だと。それがわたしのカバンから出てきました」


「なるほど」


「はい。でも、わたしは知りません」


言い訳に聞こえるかもしれない。


でも、嘘はいってない。




男は破れた免許証をもう一度見た。


「調べてみよう」


息が止まる。


「なぜ……」


「君は泥棒するように見えないし、そちらの前のご店主にはとてもお世話になった。恩返しもしたい」


「ありがとうございます」


祖母が静かに言う。



彼らは元気に言った。


「どっちにしてもこれから、お世話になる」


「お菓子ご馳走様」


「お茶も美味しい」


扉の前で振り返る。


「潔白なら、証明されるべきだ。いい薬師が近くにいるのは我々にも利益になる」


馬車の音が遠ざかる。


店の中に、一気に静かになった。


調べると言っても、証拠はない。だけど信じてくれる人がいる。



だから、顔を上げて毎日を過ごそう。



きれいになれ。


水だけじゃない。疑われたことも。口惜しい気持ちも


そしていつか、真実も。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



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