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やりません。やれませんのよ。  作者: 朝山 みどり


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16 薬師管理組合での話し合い

薬師管理組合の職員が、ポイード薬局にやって来たのは、昼を少し過ぎたころだった。


新しい看板の下で、薬草の匂いがほのかに漂っている。

店の奥では、薬瓶が光を受けて静かに並んでいた。


扉が開くと、店番をしていた老婦人が顔を上げた。

白い髪をきちんとまとめた女性だ。


「いらっしゃい」


落ち着いた声だった。


職員の一人が言う。


「マリアさんと話がしたい」


老婦人は眉をひそめた。


「マリア? どういう話だい」


「本人と直接話したい」


その言葉に、老婦人の表情が変わる。


「マリア一人に話をさせるわけにはいかないよ」


老婦人――グレースは腕を組んだ。


「どういう話なんだい。うちの孫に、何の用だ」


声が大きくなる。


職員は少し困った顔をした。


「それは……」


「言いなさいよ」


グレースはカウンターを叩いた。


店の奥から、足音が近づいてくる。

若い女性と、中年の女性が姿を見せた。


マリアの姉と、母だった。


「どうしたの?」


姉が言う。


しかしグレースが先に口を開いた。


「この人たち、マリアと話がしたいんだってさ」


「何の話?」


姉が聞く。


職員は仕方なく言った。


「……ダイアナの泥棒疑惑の件です」


その瞬間、グレースの声が一段高くなった。


「泥棒?」


「迷惑な話だね!」


「そんなことを言いに来たのかい!」


店の中に響く大声だった。


姉が口を挟もうとするが、グレースの勢いに押されて言葉が出ない。


母も戸惑った顔で立っている。


職員が説明しようとするが、声がかき消される。


「うちの孫を疑うのかい!」


「証拠はあるのかい!」


「こんな店にまで来て!」


話はまったく進まなかった。


やがてグレースが言った。


「話すなら、その泥棒ダイアナも呼びな」


職員は首を振った。


「いや、泥棒と決まったわけではありません」


「じゃあ呼びな!」


「本人がいないと話にならないだろう!」


グレースは一歩も引かない。


職員たちは顔を見合わせた。


埒があかない。


結局、こういうことになった。


ダイアナも呼び、薬師管理組合で話をする。


その方が早い。


職員が言った。


「では、組合で話をしましょう」


するとグレースがすぐに言った。


「ポイード薬局の人も呼んでちょうだい」


職員が眉をひそめる。


「なぜです?」


グレースは鼻を鳴らした。


「泥棒をよく知ってる人でしょ」


その言葉に、店の空気がわずかに冷えた。


こうして、話し合いの場は薬師管理組合に決まった。


数日後。


ダイアナは王都へ向かっていた。


「こんな忙しいときに……」


小さくつぶやく。


隣には冒険者パーティー、ホースシューのリーダーがいた。


「呼ばれたんだ。行くしかない」


「そうだけど」


ダイアナはため息をつく。


王都に着くと、いつもの宿に泊まった。


ホースシューがよく使う宿だ。


部屋は広く、寝台も柔らかい。


だが、妙なことに気づいた。


廊下から咳の声が聞こえる。


「ごほっ、ごほっ」


別の部屋からも聞こえる。


「ごほ……」


「咳してる人、多いね」


ダイアナが言う。


リーダーがうなずいた。


「王都で流行ってるらしい」


ダイアナは少し考えた。


それから宿の厨房を借りた。


薬草茶を多めに作る。


焼き菓子も焼いた。


宿の主人に渡す。


「咳してる人に、どうぞ」


主人は驚いた顔をした。


「ありがたい」


ダイアナは少し照れたように笑った。


「お茶だから」


それだけ言った。


翌日。


薬師管理組合の建物に人が集まった。


大きな石造りの建物だ。


重い扉の前で、ダイアナは一度深呼吸をした。


中に入る。


広い部屋だった。


すでに人が集まっている。


ダイアナとホースシュー。


マリア。


マリアの姉。


祖母が二人。


そして――


ジェフ・ポイード。


部屋の空気は、静かだった。


だが、その静けさの下に、緊張が張りつめていた。


薬師管理組合の職員が言った。


「それでは、話を始めます」


ようやく。


長く止まっていた話が、動き始めようとしていた。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。


新作です。「春の避暑地」 読んでみてください。



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