表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1話:影精霊との出会い

「光が英雄を照らすなら――影はその背を守る。」

“支える力”で仲間を導く参謀の物語、ここに開幕。

アークレイン王国の東にそびえる《アルセリア王立魔法学園》。

白い尖塔が朝霧の中に浮かぶその学び舎は、王国中の魔導士志望が憧れる名門校だった。


だが、その訓練場の片隅で――ひとりの生徒が項垂れていた。


「……また、失敗か。」


ライゼ=クロード。二年次の魔導士科に所属するが、入学以来ずっと“落ちこぼれ”と呼ばれている。

ライゼは黒髪を短く整え、灰色の瞳に薄い疲れを宿していた。細身の体に学園制服を質素に着こなし、右手の指抜き手袋には練習の擦り傷が新しく残る。

魔力量は平均以下、攻撃魔法の適性はゼロ。今日の実技試験も、彼の放った魔弾は目標に届く前に霧散してしまった。


「分析は完璧なのに、出力が伴わない……やっぱり俺には無理なのか。」


背後で同級生たちの笑い声が響く。

「またかよ、クロード!」「戦場じゃ足手まといだな!」

――その言葉を、彼は黙って受け流した。悔しくないはずがない。けれど、彼の頭には常に冷静な思考があった。


(戦いは力だけじゃない。勝つための“手”は、きっと他にもある……)


* * *


その夜。学園の地下に封印された「古代魔法研究棟」に忍び込んだライゼは、ひとつの魔法陣を見つける。

埃をかぶった床に刻まれた、黒い輪と複雑な紋章。淡い紫の光が、彼の足元から脈打つように広がった。


「……反応してる? いや、まさか。」


指先を伸ばすと、影が蠢く。


―――《我を呼んだのは、お前か、人の子。》


耳の奥に響く低い声。冷たい風とともに、黒い影が立ち上がる。

霧のような黒が人の輪郭を象り、二つの紅い瞳だけが夜の残光のように瞬いた。声は低く、古い石のように乾いている。


「……誰だ、お前は。」


《我は〈影精霊〉、名をノクト。長き封印を破りし契約者よ……お前の名は?》


「……ライゼ。ライゼ・クロード。」


《ならば告げよう、ライゼ・クロード。

 我と契約を交わすなら――お前の影は、すべての仲間の影と繋がるだろう。》


瞬間、魔法陣が眩い光を放ち、ライゼの影が地面から浮き上がる。心の奥に、確かな“何か”が刻まれた。


――スキル【影精霊契約シャドウリンク】を獲得しました――


「……これが、俺の“スキル”……?」


それは、自らを支えるための力――いや、仲間を支えるための覚醒だった。


* * *


契約の光が消え、空気が冷え、影が深く伸びる。中央に、黒い精霊――ノクトが静かに浮かぶ。


《契約は完了した。以後、我はお前の影に宿る。》


「……お前の力、俺に扱えるのか?」


《使えるかどうかは“意志”次第だ。お前が誰を守り、何を信じるか――それが契約の鍵となる。》


不思議と恐怖はない。むしろ、心のどこかが熱を帯びていた。


(誰を守るか、か……俺にはもう、守りたい仲間がいる。)


その夜、ライゼはひとり誓う。

“この力は、誰かを支えるために使う”と。


* * *


翌日。訓練場はざわめいていた。模擬戦の対抗試験――上位生と下位生がチーム戦で競い合う。

ライゼの所属チームは全員が下位組。相手は光属性の天才《エルフィナ=リュミエール》を中心とした最強チームだった。


「ライゼ、作戦どうするの?」

緊張した仲間の声に、彼は静かに頷く。


「俺に任せてくれ。全員、少しだけ距離を詰めて――影を重ねるんだ。」


影と影が触れ合い、一本の線で繋がる。


――スキル【影精霊契約シャドウリンク】発動。


仲間たちの体に黒い紋が走り、動きが一瞬で鋭くなる。視界の共有、反応速度の向上、魔力の流動化。

まるで一つの意志で動くように、彼らの攻撃が連携した。


対戦相手のエルフィナが目を見張る。

ライゼは一歩前に出て、静かに笑った。

「これが俺の戦い方だ。――支援こそ、最強の戦術だ。」


眩い閃光ののち、審判の声が響く。

「勝者――ライゼ=クロード班!」


歓声と驚きの中、エルフィナは敗北を認めながらも微笑み、ライゼを見つめた。

「あなた……ただの“落ちこぼれ”じゃなかったのね。」


彼の背で、ノクトの声が静かに囁く。

《ようやく、お前らしくなったな、契約者。》


影は光と共に在る。

そして彼の物語は、いま始まったばかりだった。

読んでくださってありがとうございます!

「支える力」をテーマに、影の精霊と歩む参謀主人公の物語を書いています。

面白かったらブクマ・★評価・感想をいただけると励みになります!

次回は【第2話:光の天才、影の契約者】を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ