表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

第12話 自由都市同盟と王国の大軍進軍

 影の将軍ヴァルドを退けた翌日、自由都市ガルディアの中央広場には異様な熱気が渦巻いていた。

 各商会の代表、冒険者ギルドの幹部、傭兵団の長、亜人族の長老までもが一堂に会していたのだ。


 「王都で反乱が起き、リオネル殿下が実権を握った」

 「第一王女セリシア殿下は反逆者とされ、従者アルトと共に追われている」

 「だが禁忌召喚まで使う王子を、王国の正統と呼べるのか?」


 怒号と嘆きが飛び交い、広場は混乱寸前だった。


 「静粛に!」

 セリシアが壇上に立ち、凛とした声で場を鎮めた。

 「皆に伝えたいことがあります。王国は、兄リオネルによって歪められました。ですが……私は諦めません。必ず王国を取り戻します。そのために、どうか皆の力を貸してほしいのです!」


 広場に沈黙が落ちた。

 俺は彼女の隣に立ちながら、心臓の鼓動を感じていた。

 ――俺の役目は、彼女の言葉を支えることだ。


 「信じろと言われてもな」

 傭兵団の長が腕を組む。

 「口だけなら誰でも言える。俺たちは命を賭けるんだ」


 「では、証明します」

 セリシアが一歩下がり、俺を見た。

 「アルト殿。どうか」


 「……分かった」

 俺は壇上から傭兵長に歩み寄り、その腕に触れた。


 「【万能補助】」


 瞬間、男の筋肉が膨れ上がり、瞳が見開かれる。

 「なっ……身体が軽い……力が溢れる……!」


 どよめきが広がる。

 「これが……噂の……」

 「最弱と呼ばれた従者の力か……!」


 「違う」

 セリシアが強く言った。

 「最弱ではありません。この人こそ――最強の従者です!」


 ◇ ◇ ◇


 その後も、俺は商会の護衛や亜人族の戦士たちに次々と補助を施した。

 触れた瞬間に分かる。彼らの呼吸が整い、動きが鋭くなる。

 周囲の目が変わっていく。疑いから、畏敬へ。


 「……分かった」

 亜人族の長老がゆっくりと頷いた。

 「そなたがいれば、我らも立ち上がれる」


 「我が傭兵団も協力する」

 「商会も資金を出そう」


 次々と賛同の声が上がり、ついに広場を覆っていた混乱は一つの方向へ収束した。


 ――自由都市同盟。

 それが、この日誕生した。


 ◇ ◇ ◇


 夜。宿に戻った俺たちは、ようやく安堵の息をついた。


 「アルト殿、本当にお疲れさまでした」

 セリシアが微笑む。

 「あなたのおかげで、この街は一つになれました」


 「神の御心でしょう」

 エレノアが祈るように言う。

 「アルト様は希望の灯火です」


 「ふん、やっと分かってきただろ」

 ルシアが笑みを浮かべる。

 「お前は最弱でも反逆者でもない。……皆を繋ぐ“核”だ」


 ジークも拳を握りしめて言った。

 「最高だったぜ、アルト! 俺、あんたについてきてよかった!」


 仲間たちの言葉に、胸が熱くなった。

 俺は……もう孤独な従者じゃない。


 ◇ ◇ ◇


 だが――その夜遅く。

 自由都市から北の国境にある砦に、轟音が響いた。


 「敵襲――っ!」


 見張りの兵が絶叫する。

 闇の彼方から現れたのは、旗を掲げた王国軍。数千の兵が鬨の声を上げて迫っていた。


 「リオネル殿下万歳!」

 「反逆者アルトを討て!」


 最前列には禁呪で強化された騎士たち。

 その後ろには影の将軍ヴァルドの姿もあった。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。

 急報を受けた俺たちは、自由都市の城壁の上に立っていた。


 「……あれが、王国の大軍」

 セリシアが蒼ざめた顔で呟く。


 「数千か。いや、それ以上だな」

 ルシアが槍を握りしめる。

 「真正面からでは勝てん」


 「アルト様……」

 エレノアが俺を見つめる。

 「どうか……私たちを導いてください」


 ジークも隣で息を荒げながら言った。

 「アルト、ここが正念場だぞ。俺たちは逃げるのか? それとも――戦うのか?」


 俺は、城壁の下で整列する大軍を見下ろした。

 かつての主リオネルの軍勢。

 最弱と蔑まれ、捨てられた俺を、今度は国を挙げて討とうとしている。


 ――逃げられない。


 「……戦う」

 拳を握り、仲間たちに告げる。

 「俺たちは最強のパーティだ。自由都市同盟と共に、王国軍を迎え撃つ!」


 仲間たちの瞳に、強い光が宿った。


 ――戦争の幕が、今まさに切って落とされようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ