AC4.3
二十分が経ち、半分ほどを解き終えた。
今のところつまずくような問題はなく時間もある程度余裕があったのでパラパラと最後まで目を通してみてみると、最後のほうは多少むずかしくなってはいるものの、彼女の言う通り授業で触れるようなものばかりだった。とはいえ、万が一が起こらないとも限らないので油断はせず一つ一つの問題に丁寧に取り組んでいく。
やがて残り時間が二十分を切ったころ、全ての問題を解き終えた。後はこの残り時間を使って見直しをするだけ、最後にもう一度気合いを入れて時間の許す限り一文字一文字にかつてないほど注意を払い何度も問題をめくった。
そしてタイマーの数字が全てゼロになった。
「はい。そこまでです」それと同時に彼女が終了をつげた。
そのまますぐさま問題と答案は回収され
「これで一つ目が終わりましたが、一旦休憩にしますか? それとも次のを始めますか?」と続けて彼女が尋ねてきた。
「……休憩でお願いします」自分は少しだけ考えてそう答えた。
「わかりました。では、今から十分間の休憩に入ります」
その声が消えたと同時にほっと肩の力を抜いた。
このまま次に行きたくはある、でもその気持ちとは裏腹にたった一つのテストを終えただけなのに、数回分のテストを終えた時と同じぐらい疲れている。いつもとは状況が違うからしかたがないこととはいえ、この疲労感だと最後まで集中力が持つのか心配になってくる。
背もたれに体をあずけ伸びをして、頭を左右に一回ずつ回した。これだけでも気分はだいぶ違う。気分が変わったところで周りを見渡して、それにしても……と心のなかでつぶやいた。
ここの教室は静かだ。いつもならテストが終わるごとに「つかれた」とか「どうだった?」とか色んな言葉が一度に飛び交って騒がしくなるのに、ここの教室は恐ろしく静かだ。耳を澄ませても自分の呼吸と鼓動しか聞こえてこない、それも自分しかいないから当たり前のことだけど、日常の風景がこうして変わった形で現れると自分がとんでもない事態に巻き込まれていることを実感する。
そんなふうなことを考えてぼうっと過ごしていると
「十分経ちましたのでテストを再開します。準備はいいですか?」と彼女が声をかけてきた。もう十分たったのか、と残念に思いながら返事をした。
「では、問題を配ります」
理科と書かれた問題が手元に来て、
「始めてください」
すぐに次のテストが始まった。