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AC  作者: M.K
AC2
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AC2.1

 ふいに目が覚めた。灰色の天井が目に入った。上半身を起こし寝ぼけまなこで辺りを見渡した。見知らぬ部屋だった。


「ここは……?」


 そう呟いて目をこすりもう一度部屋を見回した。上下前後左右すべてをコンクリートで囲まれ、いま自分の寝ていたベッドと椅子と小さな丸天板の机だけがある……いや、もう一つ色が似ていて紛れていたけど扉もある、まるで牢屋のような部屋があった。


 なぜ自分はこんな場所にいるのか?


 当然の疑問が浮かんできたけどまだ寝起きだからか頭がうまく働かない。それでもなんとか寝る前のことを思い出そうとした時、ふと着ている服に目がいった。制服だった。まぎれもなく自分が通っている学校の制服だった。ますますわけがわからなくなって、むりやりにでも記憶を掘り起こしにかかった。


 ほどなくして思い出せたには思い出せたけれど、出てきた記憶では自分は自室で寝間着を着て眠りについていた、横になる前にしたことや目を閉じたあと考えたちょっとしたことなど細かいところまで思い出せたから間違いはないはず。


 なら、なぜこんなところに?


 思い出したことでよけいに混乱してしまった。いったいなにがなんだかサッパリな状況の中、とりあえず体を回転させベッドに腰かけてあたりをまた見渡した。がさっき見たものをまた目にしただけ。それからなにか入っているかもと思い出し制服をまさぐってみたものの何もなく、連絡を取ろうにもその手段も奪われてしまっていた。そうなるとあとはこの部屋を調べるぐらいしか思いつかず、しかたがないので腰を上げた。


 ベッドから立ち上がったあと、思いっきりのびをした。多少もやもやとしていた気分が晴れた。しかし異常事態にもかかわらず自分でも不思議なほど落ち着いているなと思う。恐怖を感じている余裕もないからといえばそうだけど、慌てふためていているよりかはマシなのでとりあえずはそれでいいとして、まずはベッドから調べてみることにした。


 シーツを剥がしたり下を覗いたりしてみたものの特に手がかりになりそうなものは見つからなかった。つぎに机、それから椅子と壁や床もくまなく調べてみてまわった。結果は同じだった。残るはこの部屋唯一の外とのつながりである扉だけ。はたしてどうなのだろうか、そう考えながらもどうせとつぶやく心の声を聞きつつ歩いていった。


 扉は鉄製ののっぺらぼうで、なんだかただの塊を適当にはめこんだだけといったぐあいだった。そのためほかにはこれといった特徴もないのでさっそく開けてみようとノブに手を伸ばした……が、もし開いたらという考えが頭をかすめて手が止まった。


 どうせとやる前から諦観してはいてもやっぱり片隅では開くことを期待していて、だけど実際に開いたら家に帰るためにもなにも状況がわかっていないまま進まなければいけない。それはそれでいやではある。期待と不安が胸中にうずまき、どうしようかと少しのあいだ迷って、やっぱりとりあえずは試してみるべきだと判断し、自分はふたたびノブに手を伸ばし力をこめた。


 が、ビクともしなかった。もう何度か押したり引いたりしてみてもダメで、それならと全体重をかけ全力で開けにかかっても動じず、もしかして横かとしまいには左右も試したけど驚くほど無反応だった。そのあまりの手ごたえのなさに「置物なんじゃ?」と疑念が浮かんできて途端に馬鹿らしくなってしまった。


 それで若干息を切らしながらノブから手を離し、この扉が本物にしろ偽物にしろ開かないならできることはもうやりつくしたと安堵のか失望のかはたまた呆れてのか、あるいはそのすべてともいえるため息をついて自分はベッドへもどっていった。そしてふたたび腰かけてパタリと倒れた。


 コンクリートの寂れた灰色が視界いっぱいに映りこむ。思いつく限りのことはやった、あとやれることといったらこうして横になって向こうから接触してくるのを待つぐらいだ。自室で寝たはずの自分がここにいるということは誰かが連れてきたわけで、それには何かしらの目的があるはずだから。…………

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