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コドモ怪盗!心の宝石盗みます!

作者: 四阿彰人(アズマヤ アキト)


コドモ怪盗、彼はそうよばれている。


なんでもコドモの心を盗む怪盗らしい。見た目はおさなく、小学校4年生ほどの身長しかない。


というウワサだ。どうしてウワサかと言えば、なんせ、大人には見えず、だれもその姿を見たものはいない。


そんなウワサの怪盗には理念があるらしい。


彼の理念はこうだ、


心の宝石を集め、世直しをする。


心に起こる揺らめき。すなわち、喜び、怒り、哀しみ、楽しみなどの感情。


それらの喜怒哀楽の証である心の宝石を集め、それらを、材料に「心の王冠」を作ることが目的だ。


コドモ怪盗は町を見下ろせる塔から足をブラ〜ンとさせながら町を見下ろしていた。しばらく目下の広場を見ていると、

「いた!あの子がいい!」


と、どうやらコドモ怪盗は次のターゲットを見つけたらしい。


ターゲットは小さな男の子だ。


こう!


と決めるとはやいコドモ怪盗は


目にも止まらぬ速さで塔から飛び降りると、軽やかに着地し、男の子のポケットに予告状を忍ばせる。


そしてすぐに、町の人混みの中に消えていく。


一瞬すぎて男の子は気がついていなかったが、家に着いて初めて自分のポケットの中に予告状が入っていることに気づく。


男の子は赤い封筒に入った予告状を開いてみる。


よこくじょう


きみの心は見させてもらった。

こんや0じ、キミのほうせきをいただく!

たのしみにしていたまえ!

コドモかいとうより


ついしん いちおう言っておくと、こんやの0じ、ってとけいのいちばん長いはりと短いはりがいちばん上でいっしょになってるじかんで、そとがくらいほうのじかんだからね!

あとコドモかいとうを楽しみにしすぎてよふかししないようにね!


と書いてあった。なんでしょうか、本文より追伸が長い予告状って‥まあこんな感じの予告状を送る怪盗だ、なんとなくどんな怪盗かわかるでしょ。


まっ、そんなこんなで、男の子はあれだけよふかししないようにと言われていたのにもかかわらず、予告状が気になって気になって仕方がなかった。


(なんかダメって言われるとしたくなっちゃうんだよなぁ、よふかし。わかる。わかる。)なので男の子は、ベッドに入って寝たフリをして、息をひそめることにした。ここならバレないと、クローゼットに入って怪盗が現れるのを待っていた。



ボーン、ボーン。


振り子時計が12回鳴る。


「やっと0時だ。くるかな?コドモ怪盗。ふぁ〜ぁ。やっぱり眠いな。もう寝ようかな。」


そう思った矢先のことだった。


部屋の窓が突然開き、外から誰かが入ってきた!


「ブファ!」


とマントを広げ、怪盗のマスクをした小さなコドモ怪盗だった。


驚いた男の子は思わず声を上げそうになる。


「しーっ!」


一番どデカイ音を出しておいて、クローゼットの男の子の方に静かにするようにうながす。男の子は出そうになった声を手で押し戻す。


「こら!ダメだよ。こんなおそくまで起きてちゃ。ほら。この通り心配しなくてもちゃんと来ただろ。」


月夜に照らされた、マント姿のコドモ怪盗は見た目はやっぱりというか、子供だった。男の子はクローゼットから出る。


「あの‥コドモ怪盗?」


と当たり前の質問を投げかけるとコドモ怪盗は


「エッヘン!そう!ぼくがコドモ怪盗!キミの心の宝石をいただきにきた!」


なんとも突然の登場に男の子は状況が飲み込めずにいるようだ。


すると怪盗は


「ではでは、さっそくだけどキミの心の宝石をいただくよ!ちょっとまぶしいけどごめんね!」


と古びた金色の懐中時計を取り出し開く。


するとピカーっと辺りをまばゆい光がひろがり男の子は思わず手で光をさえぎる。


するとどうだろう?


部屋の中にいたはずが、いつの間にか男の子は広い草原にいた。丘の下には学校も見える。


「ここはどこ?」


そう聞く男の子にコドモ怪盗は


「ここはね、きみの思い出の中だよ。」


そう言われてみれば見たことのある風景が広がり、なんだか落ち着いた気分になる。


「きみの大切な思い出はなんだかすてきだね。ほら!見て、友達もいっぱいだね!」


そうだ、前の学校の友達、先生、近所のおじさん、おばさんまでいる。なんだか心があったかくて、フワってなる。


「きみの心は広場の時に見させてもらったよ。きみはなにか心配しているみたいだね。そうだろ?」


すると、うつむきながら男の子は答える。


「うん、ぼくは来週には新しい学校に転校するんだ。だから春休みが終われば‥」


「また、一からお友達作りだね?」


「そう。ぼく‥ふあんで。新しい学校で友達できるかな?」


不安な表情の男の子にコドモ怪盗は


「大丈夫!キミの心の宝石はこんな素晴らしいんだから。」


「心の宝石?」


「そう。キミの心の宝石。キミの大切な大切な思い出のことさ!」


「ぼくの大切な思い出?これが?」


「そう。キミの思い出がこの宝石を作ってくれたんだ。」


コドモ怪盗は手元の懐中時計を閉じると、急に二人は元の部屋に戻る。


すると、部屋には小さな光を放つ宝石が浮いている。


それをコドモ怪盗は手に取ると、マントの内側からステッキを、取り出すと、宝石をトントンと、二回叩き、引っ張り出す。するとどうだろう?


宝石から、さっきのキラキラした思い出があふれてくる。


「この思い出はキミのものだからね。これはちゃんと返すよ。」


そう言うと、ステッキの先で引っ張られた思い出を男の子の胸に返す。


思い出達は男の子の心の中にスッと入って消える。男の子は心があったかくて、さっきよりとポカポカしてきた。それと同時に頭に疑問が浮かんだ。



「ねえ、コドモ怪盗は心の宝石を盗むじゃないの?」


そう男の子が言うとコドモ怪盗は


「そうさ、ぼくはね、子供達の思い出からできる心の宝石を集めてる。だけどね、心の思い出ってのはさ、誰にもうばえないし、うばっちゃダメなんだ。」


そう言ったコドモ怪盗の持っている宝石はさっきまでの輝きはない。


「でも思い出がないと、宝石は光らないじゃないの?」


「そうかもね。でもね、この宝石にはとっても大事な価値があるんだ。なんだと思う?」


男の子は首をかしげるとコドモ怪盗は


「この思い出の抜けた宝石はね、キミが新しい思い出をつむいだ時また光りかがやくんだ。」


「キミがこれから沢山の思い出をつむいでいくたびにかがやきを増していく。今はかがやく宝石でなくても、君しだいではまた、かがやく宝石になれるんだ。」


「そしたら、ぼくの思い出が宝石を、光らせるの?」


「そうとも!全てはキミしだい!ぼくはキミが素晴らしい思い出をつむいでくれると信じてる。だから、キミを自分を信じてみてくれないかい?」


「自分を信じる?」


「そっ!自分を信じる。キミなら大丈夫!新しい学校に行ってもお友達もたくさんできるよ!」


「ほんとかな?」


「ダメ、ダメ! そんなんじゃ。ほら!自分の胸に手をあてて!」


男の子は言われた通りに胸に手を当てるとどうだろう?また、あのあったかい気持ちがあふれてくる。


「ほらね!キミにはすてきな思い出がある。キミの思い出がきっと助けになると思うよ!自分を信じて。ぼくはキミを信じてるよ!」


そう言ったコドモ怪盗はすでにいなくなっていた。


それでもいつしか心の不安はどこかへ行ってしまった。


そして思い出がくれたあったかい気持ちが男の子の勇気を引き出したみたい。


これなら大丈夫。そう思えた男の子は安心して眠りに就いた。



その後の男の子はどうだったかって?


無事お友達も出来て、また新しい思い出を紡いでいるみたいですよ。


ほら、校舎の上から、あなたみたいに心配性の怪盗が見下ろしてますよ。


「やっぱり大丈夫だったね。」


と煌めく宝石を片手に微笑むコドモ怪盗。


「何を仰ってるんですか!ほんとは心配してたくせに!」


とこれまた、シルクハットを被った小さなネズミの紳士が胸ポケットから顔を出す。


「まさか!そんなわけないだろ。あんなすてきな思い出があるんだ。ぼくは信じてたよ。」


「ほんとですかね?第一にこうやって‥」


「さっ!次の仕事が待ってるよ!」


小さな紳士の言葉を、遮るように立ち上がるとさっそうと消えていく。


今夜もあなたの町にコドモ怪盗は現れる。


そこにコドモ達の思い出がある限り‥

終わり




っていきなり出てきたネズミはなんなんだ?って思ったそこのあなた!私は初めから出ていましたよ。それに私の独り言だってありましたよね?


ほ〜らよ〜くあなたの心の中を見返してくださいね!


それではこれで、ほんとのほんとのさようなら!


いや‥また会うその時まで!

          小さなネズミの紳士より。


               ほんとは続く!




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