<THE CITY LEGENDS>アルニカ -AlNika- 〜アルフィン・フォータスと二階堂春樹〜
本作には若干の性表現と若干の暴力表現が含まれます
夢も希望も存在しない汚れた世界の端っこで、彼らは駆け抜けた――
◇
一度堕ちてしまえば二度と戻ることは出来ない。
だが俺たちは堕ちることを選んだ。
いつか俺たちから大切なものを奪っていった奴らに罰を与えるため、暗く汚れた世界の中で生きることを選んだ。
失う物なんて……もうとっくの昔に失ってるからな。
◇
〔中央島|中央区|二丁目|トーカイビル五階〕
どこかの国のどこかの街、通称【THE CITY】と呼ばれるそこはいわゆる犯罪都市である。その街の一角で、【アルフィン・フォータス】という女は何でも屋を開いていた。
「うみゅ……ニカイドーのプリン……」
だが現在は自室のベッドの上で同業者にして同居人の男が作るプリンを夢の中で味わっている真っ最中だった。そのとき、ドアをノックする音がアルフィンの部屋に響き渡る。
「おーい、アル。もうとっくの昔に昼だ。いい加減起きろー。プリンを冷蔵庫に入れておいたぞー」
ノックの主はアルフィンの同業者にして同居人の男、名は【二階堂春樹】。
「プリンっ!」
プリンの単語にアルフィンはガバリと文字通り飛び起きた。そしてドアを乱暴に開けてキッチンの冷蔵庫へ一目散にかける。
「えっへへ、プリン」
ガチャリと冷蔵庫を開ける。が、そこにプリンは無かった。
「プリンを入れたと言ったな……あれはウソだ」
鼻をさすりながら二階堂はアルフィンに睨みつける。
「ひ……ひ……ひどいわ!」
「ひどいのはテメーだアル! あれほどドアを乱暴に開けるなって散々言ってるだろーが! あと毎回毎回全裸で居やがって、オメーは痴女かっ!」
「別にいーじゃない! それで勃ちもしないニカイドーこそ不能じゃないの?」
「んだと?」
酷く低レベルで不毛な言い争いが始まる、それが二人の日常の始まりだ。
◇
THE CITYは、元々は某国が過密化していく人口問題を解決させる為、海上に建造させた5つの人工島からなる巨大人工浮島式社会実験都市だった。だが、都市の運営費は莫大で国庫を圧迫する問題が発覚し閉鎖される……はずだった。しかし各国の犯罪組織が流入し、治安の悪化は目に見えるほどにまで低下していった。この事態に対し否が応でも管理せざるを得なくなった某国は唯一治安が維持されていた【中央区】に【市警】を設立し、これに対抗したが未だ解決の目処は立っていなかった。
◇
「で、誰が勃ちもしない不能者だって?」.
「ご……ごめんなひゃい……」
ベッドの上では二階堂の余裕の勝利だった、33対4と圧倒的大差で。決まり手は中へのゴム無し放出でアルフィンアへ顔ダブルピースだった。
〔○二階堂春樹 33-4 アルフィン・フォータス●〕
〔決まり手:クリームパイ〕
◇
<アルフィン・フォータス -Alphin Fortus->
元:市警捜査官
現:何でも屋
<二階堂春樹 -ニカイドウハルキ->
元:中央区区役所職員
現:何でも屋
◇
閑話休題、服装を整えた二階堂は、テーブルの上に愛用のハンドガン【G18】を置くと、手早く分解して整備を始める。
「……ニカイドーはまだハルナを探してるの?」
私服に着替えたアルフィンはテーブルの上に並べられたG18のパーツを見て二階堂に問う。
「そりゃ当然」
二階堂は淡々と答える。
「もう、あれから5年も経つのよ」
「まだ5年しか経っていないだけだ。それにG18は姉貴のだからな」
二階堂はひどく悲しい目をしながらG18を見つめる、その銃は彼の姉にして市警一の捜査官だった女、二階堂春菜の愛銃だった。
◇
二階堂春菜。市警捜査官の中でも随一の検挙率、市警特殊部隊【SWEEP】の隊員と同等の高度な戦闘技術、卓越した捜査能力に秀でており、市警特別捜査部隊【S.I.F.】に抜擢された。そしてとある抗争の鎮圧の最中、彼女は行方不明となった。
その抗争とは、【血の行列】。5年前に発生したTHE CITYでの一大抗争事件の通称である。概要は至極単純明快で、THE CITYの四大組織……すなわち【北地区】のロシアンマフィア【赤熊】、【東区】の日系ヤクザ一家【大門一家】、【西地区】の麻薬カルテル【死者達】、【南区】のチャイニーズマフィア【三合會】が一斉に殺し合った。きっかけは単純な縄張り争いが大きくなりすぎただけだった。だが、日を追う毎に民間人への被害も深刻化、中央区にも被害は広がり、市警もSWEEPとS.I.F.を投入し抗争の鎮圧に乗り出した。その中には二階堂春菜もいた。
◇
コンコンとドアをノックする音が響く。
「ん? こんな早くから誰なのかしら?」
「まぁ、ここに来るのは数少ない。となると厄介事を持ち込む奴となるから……メイベルの奴だろ?」
二階堂の言葉に合わせるかのようにノックの主は入室した。
「やっほー、アル-。ニカイドー。あとでベッドの上ね」
入るやいなや身も蓋もない事を言い放つのはTHE CITYで数多く居る情報屋にしてウィザード級ハッカーの腕前を持つ女、名は【メイベル・リン】。
「えー、俺のムスコは遊び疲れたのでまた今度」
二階堂は面倒くさいと言わんばかりに断る。
「もうニカイドーにヤられたから無理」
アルフィンは二階堂をジト目で睨みながら断る。
「そんなニカイドーにはメイベル特製ビンビンドリンクをプレゼント! アルフィンには後で特製マッサージでも!」
メイベルはお構いなしに盛っていた。
◇
<メイベル・リン -Mabel Ling->
元:某国陸軍情報部諜報課工作員
現:情報屋兼ハッカー
◇
「あーはいはい。んで、用件はなんだ? まさか性欲解消目的だけじゃないだろ?」
二階堂は床にさりげなく置かれた大きめの茶封筒を手にしてメイベルに問う。
「あー、やっぱ気になっちゃったか」
メイベルは先ほどまでのなりを潜め、目をギラつかせる。
「ひょっとして例の日本人娼婦を狙った連続強姦殺人事件? 東区の大門一家がいきり立ってるって話の」
アルフィンがひょっこりと二階堂の肩越しに茶封筒を見やる。
「その通り!」
メイベルはおもむろに手をたたくと同時にもう一通の封筒を二階堂に渡す。二階堂は渡された封筒を開ける。
「……犯人どもは1銭の価値すらないな」
封筒の中には米国の1セント硬貨が5枚入っていた。
「依頼料は全て人数分、やってくれるよね【1セントの暗殺者】さん?」
メイベルの言葉に二階堂はため息をつきながら、しかし目には怒りを滲ませる。
「ああ、殺る」
二階堂は受諾した。
「そうこなくっちゃ!」
メイベルはスッと手を差し出す。
「情報料はいつもの値段か?」
二階堂は呆れた表情でメイベルを見やる。
「もちろん」
メイベルは悪びれることなく要求を続ける。
「まったく……市警捜査官の私の前で堂々と殺人予告の宣言しないでよ」
そんな二人のやりとりを見ていたアルフィンは、弾倉を抜いた愛銃のハンドガン【USP9】をフリフリと揺らしながら文句を言う。
「元、だろ?」
二階堂は、淡々と言う。
「まあね」
アルフィンは否定しない。
◇
<二階堂春樹 -ニカイドウハルキ->
元:中央区区役所職員
現:何でも屋 兼 殺し屋
通り名:1セントの暗殺者
◇
〔中央島|中央区|二丁目|カレルビル九階〕
「はぁ……はぁ……あっ」
アルフィンと二階堂の事務所からほど近い建築途中で放置されたビルの一室、ベッド上でスナイパーライフル【WA20K】のスナイパースコープを自らの股間に擦りつけながら喘ぐ左目を黒の眼帯で覆った女が一人、名は【メリッサ・バートン】。
「はぁ……はぁ……んんっ……二階堂様……」
メリッサの眼前には二階堂を盗撮した写真が一枚。
「メリ姉ぇ、起きた-?」
メリッサが一人遊びに耽っている最中、一人の女が部屋に入る。名は【エリー・バートン】、メリッサの妹だ。
「え、エリー?」
「まーたニカイドーの盗撮写真をオカズに……そんなに欲求不満ならさっさと押し倒しに行きなさいよ」
エリーは呆れた表情で自らの姉に夜這いを教唆する。
「う、うん……」
メリッサはモソモソとベッドから這い出るや下半身を露出したまま外へ出ようとした。
「す、ストーッピュッ! ちょっとメリ姉、いくら何でもそれは無いよそれは!」
突然の奇行に対し、エリーは全力で姉を止めた。
◇
<メリッサ・バートン -Melissa Burton->
元:市警特殊部隊SWEEP狙撃手
現:フリーランスの狙撃手
<エリー・バートン -Ellie Burton->
元:市警特殊部隊SWEEP隊長
現:自警団白烏団長
◇
――数時間後――
〔中央区|三丁目|BARラプソディムーン〕
中央区の一角にある酒場、BARラプソディムーン。その扉につけられたベルがカランカランと音を立てる。
「あーら、いらっしゃい。二階堂ちゃん、それにアルフィンちゃんもー。最近来ないから心配しちゃったわぁー」
カウンターの内側には筋骨隆々なドラァグクイーン、本名は誰も知らないが通称【ゴッドシスター】。THE CITYの表社会と裏社会における重鎮にしてTHE CITY内で絶対中立の立場を貫く運び屋組織、【輸送者互助組合】を束ねる代表だ。
「しばらくぶりです」と二階堂。
「おひさ-、最近チョコチョコと忙しくって」とアルフィン。
「元気そうでなによりだわぁー」
カウンターの上にテネシーウイスキーの瓶を一つ置きながら、ゴッドシスターは鋭い眼光で二人を睨む。
「話はすでにメイベルちゃんから聞いてるわ」
「ええ、今回はそれについてですが」
二階堂が話を切り出そうとしたがゴッドシスターは二枚の紙をカウンターの上に置く。紙にはそれぞれ一枚ずつ別々の男の情報がビッシリと書き込まれていた。
「ミサキちゃーん、ちょっとこっちに来なさーい!」
店の奥から一人の小柄な女が現れた。女の名は【黛美咲】、通称お姉様の妹分。
「ゴッドシスター、どうしまし……ってフォータス捜査官と春樹さんじゃないですか」
「ああ、ちょっと仕事でな」と二階堂。
「やっほー、ミサキ。でも私は既に捜査官じゃないよ」とアルフィン。
「ごめんねミサキちゃん、だけどこの組合員二人ね……掟破りをやらかしちゃったのよー」
ゴッドシスターはトントンと人差し指で紙を叩きながら美咲に筆先を赤色のインクに浸した万年筆を差し出す。
「……C処理ですね。値する情報は?」
美咲は鋭い目つきで万年筆を受け取る。
「メイベルからの情報だ、ゴッドシスターも確認している」と二階堂。
「残念だけどC処理は妥当と私は判断したわ」
ゴッドシスターは溜息をつきながら言葉を続ける。
「例の日本人娼婦連続殺人事件の犯人グループ、その主犯として輸送者組合の立場を悪用する悪い子になっちゃって」
ゴッドシスターの目には怒りの感情を露わにする。
「かしこまりましたゴッドシスター。書類のC処理はお任せ下さい。本人へのC処理は?」
美咲は書類の上に万年筆を走らせる。赤色のインクの軌跡は「Clean」と大きく書かれた。
「俺がやるさ。それにあっちの仕事の目的だからな」
◇
<お姉様 -The GodSister->
元:不明
現:相談役 兼 BARラプソディムーン店主 兼 輸送者互助組合代表
特記事項:THE CITYの重鎮
<黛美咲 -まゆずみみさき->
元:市警情報分析官
現:相談役補佐
◇
〔中央島|東区|チェックポイント東|ハウスサンプトン倉庫七番〕
中央島と東島を結ぶ鉄橋、通称【チェックポイント東】の周辺は一種の倉庫街となっている。そこにある倉庫のひとつで五人の若い男たちが集っていた。
「なぁ、先日ヤッた女、やたら締まりが良かったな」
「ああ、俺のムスコもあまりの具合の良さにすぐイッちまったぜ」
ゲラゲラと下品な嗤いが倉庫中を駈ける。
◇/◇
「標的視認。テーブルを3人囲っている、2人は扉の前に陣取っている。輸送者互助組合のはねっ返りはテーブルに両者を確認」
倉庫の真向かいにある廃ビルの一室にて、メリッサはうつ伏せの状態でWA20Kのスナイパースコープから倉庫内の男達を捉えている。
「メリ姉、現在風速2メートル南西。増援の気配なし。自警団の包囲も完了。あとはニカイドーの合図待ちね」
エリーは片膝をついて、双眼鏡で倉庫内の男達を見る。
二人の役割は忠実に狙撃手と観測手のコンビだ。
◇/◇
――バートン姉妹は狙撃の準備が整った、アルもバックアップの用意は出来てる。全ては俺の合図次第か。
二階堂は手にしているPDAの画面を見やる。
PDAはメイベルとエリーが組織してる自警団『白烏』の団員により予め設置された無線LANのアクセスポイントと繋がっている。
「ふぅ……」
二階堂は息を整える。
「あとは、アルの出方次第か」
瞳を閉じ、意識を集中させる。
「悪をもって悪を制す」
G18のスライドにあるセレクターを単発からフルオートに切り替える。同時にどこからともなくバイクのエンジン音が戦慄く。
「……来たか」
バイクの主はアルフィンだ。アルフィンの体躯よりも大きな漆黒のバイク【MASTERHORSE500-AF CUSTOM】は、サイドカーを取り付けながらもそのパフォーマンスの衰えを見せない。
二階堂はタイミングを見計らい、走行中のサイドカーに飛び乗る。
「アル、ダイナミックエントリーだ」
「分かった」
僅かなやりとりで短い最終確認程度の作戦会議を終える。
◇/◇
「メリ姉、狙撃開始」
エリーは、バイクで駈けてきたアルフィンと二階堂を双眼鏡越しに視認し、メリッサへ合図を出す。
「……うん」
メリッサはドア付近に立つ男の一人をスコープで狙い、風向き、風速、距離、高低差を加味した微修正を行い、引き金を引いた。
◇/◇
倉庫内で思い思いにゲラゲラと下品な笑い声が響き渡る中、突如としてエンジンの音が飛び込む。
「あん? 珍しいな、なんか来たのか?」
「女か?」
「肉壺か?」
「生オナホキター!」
「うほっ! いい女……」
男たちは下半身に集中した欲望を口々に出すが、その答えはメリッサが放ったライフル弾の着弾によって明かされた。
「……はあっ?」
男の内の一人が頭部に穴が開いた。その光景を見て残された男たちのいずれかが間の抜けた声を漏らす。
「悪い子はいねーかー?」
二階堂の声と共に扉が乱暴に開かれる。そこへバイクに跨がるアルフィンとサイドカーに乗車している二階堂が倉庫内に乱入し、古いSFアニメ映画よろしく車体を横に滑らせて停車。その際に二人の男が轢かれた。
「ぐわっ!」
「うごっ!」
それを見て二階堂はサイドカーから飛び降り、前転の要領で転がりながらG18の銃口を轢かれた男たちに向け、引き金を躊躇無く引いた。
「ぎゃー!」
「あがっ!」
連続して放たれる9ミリパラベラム弾の弾頭は無慈悲に男たちの身体を貫く。
「アル!」
金属音を立てて舞い落ちる空薬莢の雨の中、二階堂は叫ぶ。
「ハイハイ、分かってるわよニカイドー」
アルフィンはしぶしぶとした態度でまだ息のある男二人に結束バンドで両手両足を縛り上げようとした。生き残っていた男たちは輸送者互助組合の輸送者だった。その時、男達はベルトに差して隠し持っていた六連装のリボルバー拳銃【LIBRA6-U】を取り出し二階堂に狙いを定める。だが、それを察すると同時にアルフィンはUSP9をホルスターから素早く引き抜き、男たちの手を撃ち抜く。
「ぎゃっ!」「ぐわっ!」
「……流石、元市警捜査官一早撃ちガンマン」
二階堂はアルフィンの機転に感心する。
「ニカイドー、その肩書きは恥ずかしいわ。それに春菜さんに比べたら私なんてまだまだよ」
アルフィンは顔を赤らめながらそっぽを向いた。
「な、なんなんだよ……なんなんだよお前らは!」
男の一人が声を荒げて問う。二階堂は特に臆することなく、淡々と5枚の1セント硬貨を男たちの前に落とす。
「1セント硬貨……まさか……」
男たちは目の前の光景と落ちた1セント硬貨を見て青ざめる。二階堂の二つ名である1セントの暗殺者はTHE CITYでは知らぬ者は居ない。たった1セントで
「今ここで処刑してもいいけど、おみゃーら二人にな、どーしても会いたい人がいるみたいだからごあんなーい」
二階堂は結束バンドで縛られた男たちを担ぎあげる。
「バートン姉妹へ、作戦完了。悪いけど自警団のバンでこいつらをゴッドシスターの元に届けてくれ」
PDAの通話アプリでメリッサとエリーに完了と新たな仕事の依頼をして、二階堂はG18の安全装置を入れる。
「はぁ、ニカイドー。今日はこれで上がりだよね」
アルフィンが二階堂に声をかける。
「いや、あとでゴッドシスターのところへ送ってくれ」
◇
――その夜――
〔中央島|中央区|三丁目|BARラプソディムーン〕
「今日はごめんねニカイドーちゃん」
BARラプソディムーンのカウンターでゴッドシスターはグラスを拭きながら二階堂に謝罪の言葉をかける。なおアルフィンは一足先に事務所へと帰っていった。
「別に気にしなくても良いですよ、ゴッドシスター。たまたまメイベルの情報とたまたまそちらのはねっ返りが同一だっただけですから」
二階堂は気にしてないそぶりでコンソメスープをすする。
「相変わらず貴方の料理は美味しいです、ゴッドシスター……いえ、ジェレミー・スパイヤ元中央区区長」
二階堂は酷く冷めた表情でゴッドシスターを見やる。
◇
<ジェレミー・スパイヤ>
元:中央区区長
現:相談役 兼 BARラプソディムーン店主 兼 輸送者互助組合代表
通り名:お姉様
特記事項:THE CITYの重鎮
◇
「もう、昔の話さ」
ジェレミーは素の口調で答える。
「もう5年も経つのか。血の行列は何もかもを変えてしまった」
「しかし未だに謎も残されている」
実際のところ、血の行列の引き金となった抗争自体は未だ謎に包まれていた。
◇
「アル、プリンを冷蔵庫に入れておいたぞ」
ラプソディムーンから帰ってきた二階堂は、先に戻っていたアルフィンに声をかける。
「むー、今朝のことがあるから信用できないわ」
アルフィンは頬を膨らませながら二階堂を睨みつける。
「ほう……そうかい」
そう言いながら二階堂は冷蔵庫の扉を開き、中からプリンを取り出す。
「それじゃあ仕方ない。俺が全部食うか」
「ちょっ!」
プリンを目にしたアルフィンは飛び出すや否や二階堂の手からプリンをひったくる。
「……アルはプリン中毒だな」
そんなアルフィンを見て二階堂は肩をすくめる。
◇
人種のるつぼたる街THE CITY。この街は今日もまた、誰かの血が流れ、誰かの死が訪れ、それでも日常は巡る。
かなり久々になろうでの投稿です。
今回は短編で内容的には「GTAのリバティーシティみたいな犯罪都市での日常コメディ」というコンセプトで書いてみました。
まあ、ハーレムっぽい感じのようでそうでないようで中身があるようでない、すっちゃかめっちゃかです。
THE CITYについては機会があればまた書きたいです。
あ、そういえばGTA5積んでるわorz