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7・それはよくある追放設定じゃないか

 村へとそれなりの魔銅を持ち帰る事が出来た。


「錆びにくい上に強度は少なくとも同等であるなら、カマをコレで作れば扱いやすくなるな。カマに重量は必要ない筈だ」


 そう言ってサウロに確認を取ると賛同が帰って来た。


 そこで、いくつかこの際だからと大鎌を作って渡した。


「カマを持って軽いと感じたものが使うと良いんじゃないか?」


 総魔銅製の大鎌をかわるがわる手にした村人の中から我はという人物が申告してくる。


 さらにいくつかカマを作って彼らに渡す。


「おい、ニルダ、お前持てるのか?」


 そんな声がした方を見ると、女性が片手で軽々と大鎌を持って居た。


「普通のカマと変わらないよ」


 そう言ってブンブン振り回す。いや、危ない


 そんな姿を見ながら、かなり皆が満足している事に安心した。


 岩に打ち付けた剣が刃毀れしない程だから、鎌での草刈りも歯を研がずに長く使える事だろう。


「良いモノを作っていただいた。私から渡せるものはこの程度ですが」


 そう言って差し出されたのは例の味噌みたいなものだった。


「これは何からできてるんですか?」


 楓が受け取りながらサウロに聞く。


「これは豆を蒸して潰したものを塩と混ぜて寝かしたものです。もう食べられたかもしれませんが、調味料として扱えるので使い方は豊富ですよ」


「それは凄いですね。ご領主にふるまっていただきましたが、なかなかにおいしかったです。使い方も色々試してみます」


 知ってる話ではあるが、ちゃんと合わせるところが楓らしい。


 どうやら、ここでは味噌はそれなりに高価な食材らしく、普段から食べられるものではないらしい。といっても、来た当初、俺たちがなめろうを食う姿に驚きを見せていたのは、味噌が一般的ではないからかもしれん。


 もちろん、製造元のこの村ではそんな事など知る由も無いのかもしれないが。


 クワやカマを降ろした馬車に魔銅の残りを積み込んでクサラベへと戻る。


 まず、サーモンにナーヤマに魔銅なるものが存在したことを告げると目を見開いて驚いた上に、現物を見てさらに驚いている。


「お、お、オリハルコンだと!」


 ハァ?


 まあ、何やら金色に近いが僅かに赤くて銅っぽいではないか。オリハルコンがどんな金属か知らないが、銅合金の類だろ、普通に。確かに質量が変化するおかしな金属だったが。


「いや、魔銅のはずだが?」


 俺はいたって冷静に指摘してやった。


「いや、オリハルコンは魔銅を精錬して不純物を限りなく取り除いたものを指すんだ。精錬した際に出た砂は?砂も集めれば価値がある」


 というので、そもそも結晶化させようとしたら小粒の段階で爆発した事を伝えた。


「高結晶化している、だと?」


 そう言ってまじまじと俺を見る。何がどうしたのかよく分からん。


「火や水を扱う魔術師にオリハルコンを精錬出来る錬金師、まさか、勇者に匹敵する魔力を持っておるのか?二人は・・・・・・」


 どうせなので勇者召喚されたが二人とも魔力が少ないと言われた話を伝えた。


「神殿の魔法神官も落ちたものだな。まさか、勇者パーティーを支えるほどの魔術師と錬金師を手放すとは。おかげでこちらは大助かりだが」


 まさかの魔銅鉱が見つかり、その精錬が出来る錬金師まで居る。これほどの状況はそうそう出来上がるものではないらしい。

 どうせ早くても半年後でなければ神殿との連絡も出来ないだろうという事なので、それまではオリハルコンの精錬を頼むと言われた。


 なぜかと思ったが、そろそろ海が荒れ始める時期だとかで、今は最後の毛皮狩りが行われているそうだ。


 毛皮狩りのために船を扱える者たちは総出で周辺の湾や岬へと出向いているので神殿への連絡など出来る状況ではなく、そもそも遠出する事が危険になるという。


「俺は別に良いが、楓、そう言ってるが、どうする?」


 俺は見ず知らずの若者グループに何の存念もないし、何かやろうとも思わない。楓がどうしたいかだけの話だ。


「どうするって、戦えるわけじゃない私が彼らに合流しても仕方がないんじゃない?勇者とか聖女とかって言われてたくらいだから、みんなも水くらい出せるはずだし、殺し殺されるようなところには行きたくないかな」


 まあ、そう関係が深い訳でもなかった様だし、そんなもんだろうか。


「サロモン殿、連絡も特に急ぐこともない様だ。神殿にはオリハルコンや扱える錬金師はいないのか?」


 そう聞いてみると、オリハルコンやあの有名なミスリルなるモノはあるだろうし、扱える錬金師や鍛冶師もいるだろうとのことだった。

 ならば、そもそも連絡も必要ないんではなかろうか?


「それなら、俺たちが帰っても足手まといでしかないだろう。そう判断したから俺たちをここへ寄こしたと考えるのが妥当ではないのか?」


 そう言うと、サーモンは理解はできるが納得はいかないという感じであった。


「そう言うなら、船を出せるようになるまでは助けてもらうとしよう」


 どうせ船が出せないのだからと、納得は出来ないが妥協したらしい。


 そして、魔銅で弓が作れるので、捕鯨用のバリスタ。いわば捕鯨砲の代用品を提案した。


「大魚を仕留めるバリスタ。なるほど、たしかにオリハルコンにはそうした使い方も可能ではあるな」


 今まで考えた事が無かったのだろう、なにやら考えながらそんな事を言っている。



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