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35/54

35・なんかもう、みんなアレだよ。

 勇者一行は俺が考案した武具に大はしゃぎである。


 タチベナに居るドワーフにその品を見せてみたが、作り方自体は神殿のドワーフでも同じだとの事だが、直剣の類や青龍刀のような形の曲剣はあっても、あんな刀身の細い、それでいて反りのある剣と云うのは見た事が無いらしい。


 この世界では基本的に突くか叩く事を主体とした剣が使われており、そこに魔銀を適用することで斬撃のようなモノを行うのだという。


 斬撃ならば確かに斬れるのだが、スパッと斬るというよりは、「叩き割る」と表現する方が近い斬撃になるのだという。


 しかし、そこは魔法であり、勇者一行のイメージするソレと、実際にドワーフが作った剣のソレには微妙に違うモノになっているのだろうとの事だった。


 実際、俺の魔銀製日本刀では、俺が思う斬撃が出ている。


 槍についても、どうやら俺のイメージするアニメやファンタジー気味の槍と実際の槍には差異があるという。


 槍と云うのは振り回して矢や敵の剣を弾いたり、突いたり斬ったりだと思っていたのだが、基本は「叩く」事にあるのだという。


 お茶ら気ギャグアニメの劇場版が有名監督の大スケール時代劇や公共放送の時代ドラマよりも合戦考証が優れていたものがあった。


 と云うのを聞いたことがある。


 全体にいつものお茶ら気キャラが暴れ回りながらも、タイムスリップした先の武士や雑兵の行動はしっかり考証されていたという。


 考えてみれば、主役を活躍させなきゃならない時代劇において、後方の指揮だとか、集団戦だとか言ったモノをやってもまるで画にならない。


 お茶ら気キャラだからこそ、戦国時代に行っても浮き出ているが、戦国時代の合戦を舞台にアイドルや俳優が演じる映画やドラマを作ったならば、無理にでも講談のような一騎打ちや刀による接近戦を多用しなきゃならなくなる。


 求められたものが違う事でしっかり時代考証されたギャグアニメと、考証より演出を優先しなければならない映画やドラマという、もの悲しい壁が出来てしまったのだろうか。


 と、そんなしっかりした時代考証の中での槍とは、叩く事、槍衾のように突き出す事を主としている。


 映画やドラマのように短い槍を振り回すこともおこなわれてはいたのだろうが、主たる使い方ではなかった。らしい。


 当然、それはこの世界でも同じだ。


 振り回す事を前提にした近接武器と言えば、ハルバートに代表される戦斧の類、あるいは長刀(なぎなた)になるだろ。


 つまり、戦士が求めたイメージには合致しない。


 俺は当然の様に戦国や三国志などのアニメや演劇に出てくる短い槍を振り回すイメージで作っている。


 戦士の彼にもそれがマッチした訳だ。


 モヒカンやあのドワーフ、結構抜け目ないんだな。と、楓が言っていた。


 弓使いの弓だが、それ自体はこの世界の弓でも本人は問題なかったらしい。


 なんでも、弓道もアーチェリーもやったことがあるそうで、全く問題なかった。


 ただ、使い勝手を言えば、射程も出て初速もあって、尚且つ狙いやすいのがコンパウンドボウであったのだとか。


 その様に分かっている使い手ならば、コンパウンドボウもメンテナンスに問題はないという事だろう。


 現状、ここで漁師たちが扱う三角ボウは俺がメンテナンスをすることで問題なく使えているしな。


「頼光さん、コンパウンドボウは細かなメンテが必要ですが、それはグラファイト製が一般化する前の弓でも同じだったんですよ。この世界の弓も基本は木と獣皮なんかを張り合わせているので、プロが使う竹弓同様に繊細なモノです。弓使いという人たち自体が職人ですから、そう気にしなくても良いですよ」


 何だかんだとドワーフに言われたことを気にかけていたら、本人からそう労われてしまった。


 そう言う事らしいので、勇者一行には俺が作った武具で思いっきりケンタウロスを撃退してきてほしい。


「あの、武器だけじゃなくて、アーマーっつか、鎧?も欲しいんだ」


 と、戦士から声を掛けられた。


 アーマー?鎧?


 防具なんてプレートアーマーとかナントカメイルがあるんじゃないのかと思ったが、魔銅製のそれらは何か違うらしい。


 何が違うのかよく分からんが、日本の甲冑もゴテゴテし過ぎで違うという。


 ロボットでも着込めば?などと思ったが、本当にそう言う事かよ。


 だが、残念な事にパワードスーツ的なモノは存在していない。俺は作り方も知らんと言うのに。


 その話を聞いて落胆していたが、外見だけは分かるんだからと、ロボット的な防具を作る事になった。


 中二病か!


 そう言いたくなったが、まあ、俺も嫌いではない。


 いや、むしろ魔法があるんだからとノリで彼らの要望を聞きながら作った。


 勇者のソレはモロにどっかのアニメからパクったようなデザインだった。


 戦士のそれは、形だけは確実にパワードスーツ。


 賢者と聖女のそれは楓が大半を担当したなんかアニメに出て来そうな服装。


 弓使い。彼女は一体何を求めたのだろう。後衛職なのにモロにアーマーなんだが。ピンクメッキやブルーメッキを装飾がわりにちりばめた機能的なアーマー。その上から楓特製のマントっぽいモノ。


 みんな明らかに中二だよ。


「魔法が使えるんだから、アニメ世界みたいにかっこよくやろうよ」


 一番はしゃいでいたのは何故か楓だった。

これを書いていて発作的に書いてしまった「中二病患者の中年は躊躇しない」もよろしく

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