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24・そいつの名前が思い出せない!

 楓の思い付きを実現できるかどうか、一度タチベナへと出向いて大型の缶を作ってもらえるかどうかの話をしようという事になった。


 タチベナでは日に日に大型高炉が形を成し、小型炉では缶詰缶用の鉄板の原材料が日々作られている。


 それら鉄はその利用目的に合わせてるつぼ炉で品質調整がなされたりもする。


 当然ながら、るつぼ炉では農具や銛、矢じりの素材も生産されるので、鋼も作られている。


 こうした作業は隕鉄から鉄鉱石中心の鍛冶へと移行している事でより重要性が増した。


 そんな作業や研究をドワーフおじさんはじめタチベナの鍛冶師たちは喜々として行い。俺が1を言うと5以上の成果が出るほどだ。


 本当に、俺必要?いままで細々と隕鉄でやってたアレは何だったのか。


 そして、大型の缶を製造できるかどうか話に行った先で見たのは、マダラや縞模様が入った鉄材だった。


「何だこりゃ!」


 俺がそれを見て声を上げる。


「おお、これはこれは」


 そう言ってドワーフおじさんが現れて説明してくれたが、この不思議な鉄材は特定の地区の鉄鉱石を使うと出来るのだという。


「鉄鉱床はあの崖全体に広がっている。所々別の鉱物が混じって入るみたいだが、あまりに複雑なので全てはサーチでも把握し切れていない。まさか、そうした混在する鉱物の作用だろうか?」


 そう聞くと、やはり、その様だった。


「そうでしょうな。ナーヤマから持ち込まれる鉱石を混ぜる場合でも、採掘地区によって性質の違う鉄に仕上がるなどザラですからな。おかげで様々な鉄をみることになって楽しみではあるが、その都度温度調整が異なるのは苦しい所でもあって・・・・・・」


 と、悲喜こもごもといった具合らしい。もちろん、失敗すればただのクズが出来上がってしまう訳だから。


 その斑な鉄を弄んでみると、なるほど、何やら結晶化した鉱物が含有されている。


「これはまるで・・・、ん?・・・あ、マダガスカル鋼?だったか」


 名前は憶えていないが、インドで作られた鋼にそんなのがあったはずだ。


「マダガスカル?」


 楓も気になるらしい。


「そうだ。と言っても、製鉄が行われたのはインドで、そこから原材料として鋼材が中東に流れて、中東のマダガスカルで刀剣を作っていたらしい」


 そうなのだ、で、それを何かファンタジーで扱っていたはずだ。


「中東なのにマダガスカル?」


 楓は刀剣ではなく、マダガスカルに興味があるらしい。


「どこだったか忘れたが、中東の都市だよ」


「それ、絶対違う。マダガスカルはバオバブの木とかワオキツネザルで有名なオフリカ南東部沖にある島だよ?」


 バオバブ?ワオキツネザル?聞いたことある木がするがそうだったんだろうかマダガスカル。


「そうすると、アラビア商人がインドから南下して島に持ち込んでマダガスカルって街で刀剣作ってたのか?」 


 話がよく分からん。


「そうじゃなくて、マダガスカルは島。たぶん、名前を間違ってるんだよ。中東だと、バクダッドとかテヘランとかアンマンとか」


 と、言い出した。おお、アンマンやバクダッド、テヘランなら分かるぞ。


「知ってるぞ。オマーンの首都はマスカットだろ。ブドウのマスカットの正式名称はマスカット・オブ・アレキサンドリア」


 そう言って胸を張った。


「うん、そうだね。だから、マダガスカルじゃなくて、別の名前だよ、ソレ」


 楓はただ呆れてそう返してくるだけだった。で、マダガスカルじゃなきゃ何処だよ。


「私はソレ、聞いたことないから分からないよ」


 結局、そう言う事らしい。


 後何処があるんだ?リビア?アリラン?グレナダ?わからん。


 ま、それは置いておいて、結構多くの種類が存在している。


「特にこれなんぞ凄いですぞ。すでに作り方はほぼ分かっとりますが、ホレ、この光沢」


 そう言って見せられたそれは光り輝いている。


 うん、ステンレスやん。


「こいつはどうやって作ったんだ?」


 そう聞いてみると、魔銀の魔砂と魔銅鉱石を添加すればできるそうだ。それ、ステンレスじゃない。


「ここで生み出された鉄材だから、タチベナ鋼とでも名付けておくか?」


 俺がそう言うと喜んでいた。


 そして、コイツの特性は剣や銛、矢じりには少々向いていない。だが、耐熱性も高く、耐食性も高い。魔銅を使っているからだろう、熱伝導も良さげだ。あと、当然の様に魔力の通りも良いので魔法錬金向きの素材だ。焼き入れや焼きなましも魔力変性で再現可能という非常に便利な素材なのがさらに良い。

 だれか、魔法鍛冶も覚えてはくれないか?


「いや、魔法鍛冶は本物のドワーフでないと無理がある」


 ドワーフっぽいのにドワーフではないおじさんはそう断言しやがった。


 そして、ブルーメッキと相性の良い素材も開発出来ており、それはやはり魔砂添加であるらしい。


 魔砂って結構使い道があるモンだな。


「この魔砂鉄ならば缶に最適になるだろう。メッキとの相性がよく製缶には最適だ」


 と、ドワーフおじさんが太鼓判を押すのでそれを使って大型缶の製作を依頼することにした。大きくなるので専用の巻締機も必要になる。


 さて、俺もタチベナ鋼の使い道を考えてみるとしようか。

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