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21・個々のパーツは完成してるんだがな

 なかなかサーモンが再起動しない。


「どうしたんだ?確かに凄い音はしたが、そこまで驚くほどだったか?」


 俺はそう語りかけてみた。


「こ、こ、こ・・・・・・」


 鶏か?


 サーモンがコケコケいったかと思うと再起動して詰め寄って来た。


「これは水中火どころでは無いぞ!火元なしにあのような大きな音が鳴るとはどんな魔術だ!」


 そう叫んでいるが、なるほど。確かに黒い油は火をつけたんだったか。


「結晶の爆発が布にしみこませた火薬へと引火したんだ。こうやれば火を用意することなく爆発が起こせる」


 そう言って鉄砲の原理を説明してみたが、よく考えてみるとここには銃器が必要な狩猟対象がほとんど居ない。トドに使う事は出来るだろうが、発砲音で逃がしては元も子もないしな。


 軍事用としても、少なくともここには脅威が迫っているようには見えないし、仮に脅威が迫っているなら手持ちの麻の実油では明らかに不足するだろう。


「弦を引かずに弓やバリスタのように使えるシロモノか。なんだかよく分からんが、たしかに、そんな道具が出来れば凄いのは確かだな」


 弓やバリスタの話を出したので一応、飛び道具になる事は理解できたようだ。


「ここで使うとすれば、銛や弓では仕留めきれない大魚を獲る道具になるだろうな。見ての通り筒だ。この先にデッカイ銛を嵌め込んで爆発させれば大魚へ刺さる。例のバリスタのようにかさばる事もない」 


 そう説明すると、では作ってみてくれと言う話になった。


 作ってみてくれと言われたが、どのくらいの厚さがあれば良いのかよく分からないのでとりあえず、鉄で作って撃ってみたが、破裂してしまった。


 なので、火薬量を減らしてみたが、それでは銛があまり飛ばない事が分かった。


 銃身の肉厚を出すと重くなる。しかし、あまり重いと取り扱いに困る。


「よっくん、鉄砲作ってるんだ。みんな大きな音がするから何やってるのか見てるよ」


 合間を見て楓がそんな事を言ってきた。


 確かにそうだな。大きな音がするもんな。


「ああ、これで鯨を仕留める鉄砲でも作れないかと思ってな。バリスタは据え付けじゃなきゃ使えないが、この鉄砲なら可搬式に出来るだろ?」


 そう胸を張って自慢するとなぜかため息をつかれる。


「よっくんさ、相手は鯨だよ?捕鯨って船の舳先に付けた大砲使うじゃん」


 と、おっしゃった。


「和歌山で作られた捕鯨銃も据え付け式だったでしょ」


 などと叱られてしまう。


 確かに和歌山で見た捕鯨の道具は船に据え付けていた。一丁ならともかく、三丁くらい付けてたな。


 それ以外はデッカイ捕鯨砲って奴だった。確かに。


 そう思いなおしてバリスタ同様に据え付け式として新たに肉厚のある砲身を作る。


「それってタティヴェナの鍛冶師の人たちで作れたりしない?」


 そう聞かれて考えてみると、高炉やるつぼ炉があるから鉄を溶かす事が出来るはずで、鋳鉄もるつぼ炉で出来そうな気がする。


 なるほど、これから船を作ってコレを据え付けるなら、俺が作るよりもタチベナの産業にしてしまった方が良いか。


 そうと決まればタチベナへと向かい、鋳物製造についてドワーフおじさんと話し合い、とりあえず試作をしてみようという事になった。


「溶けた鉄を型に流し込むのか。叩いて成形するよりたくさん作れそうだな」


 そう喜んでいたが、作るものがモノなのでその品質には気を付ける必要がある事を伝える。


「そうか、ただ溶かした鉄では無理か。使える鉄を作る出すところからになりそうだな」


 喜々としてそう言うおじさんは早速何か始めるらしい。


 どうせ船が出来るまではまだ時間があるから任せてしまっても良いだろう。


 そして、まずやらなきゃいけないのは、火薬のモトを安全に管理する方法だ。扱うのは俺ではなく漁師たちなのだから。


 試験では銛に火薬を仕込んで撃ち出していたが、それでは銛に仕込む手間と危険がある。


 当然の様に雷管を別に用意するいわゆるパーカッション式だ。


 ただ、乱暴に扱えば雷管が爆発する危険もあっていくら雷管自体を安全第一で作っても意味が無い。


 やはり薬莢が必要か。


 しかし、薬莢製造もそこそこ高度な技術が必要になる。そもそもの元込め銃は紙薬莢からスタートした程で、それは金属製薬莢の深絞り技術が無かったからだ。


 薬莢は金属板から丸板に打ち抜きお皿状にプレスしたのち陶芸の粘土のように引き延していく事で完成させる。


 いや、散弾銃の薬莢ならば底のみ金属で厚紙の筒でも良かったっけ?


 作る大きさがそこそこあるし、その割に火薬量は必要ない。


 まずは魔銅で作ってみたが、何とかなる出来だった。


 その薬莢の底にヘコミを設けて小さな穴を空け、雷管を取り付ける。


 まるで缶詰缶みたいな形だが、銛を発射するだけならこの程度で十分な筈だ。


 実際に試してみると、問題なく銛を飛ばす事が出来た。


「おう、スゲェ音がするな。だが、海の中にいる大魚相手なら関係ねぇか。それに、これだけ飛ぶなら十分仕留められるぜ」


 実際に使えるものかどうか見てもらうために呼んでいたイケメン漁師勢からもそういった賛同の声が聞こえてくる。


「でよ、船が出来るのは何時だ?お前があの塩小屋の機械を作って載せるんだろ?」


 そう、船大工は未だに結論が出せていない。


「大工次第だ。といっても、コレを載せる必要があるから舳先の造りを考え直さなきゃならんだろうな。出来るだけ高い所から打ち込む方が狙いやすいだろう?」


 漁師たちにそう聞いてみると頷く。


 こりゃあ、船の完成はさらに遅れそうだな。

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