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17・新たな産業が増えて行ってるな

 楓が作った青い液体は魔砂を他の物体に貼り付ける。被膜形成現象を起こすモノらしい。


 しかも、使った魔砂も魔銅のモノではなく、ミスリル精錬時に出るものを利用したという。魔銅の魔砂を使っても確かに色は変わるそうだが、サーモンのと同様にただ粘度が増すだけだという。きっとそれも潤滑油としては高性能ではあろうが、楓にとっては何の役にも立たないモノらしい。


「これを見てみろ!」


 それから数日、サーモンも楓の話を聞いて同じことをやってみたらしい。ああ、たしかに板がピンクになってるな。

 ただ、メッキした事で鉄板としての固さが無い。金属としての固さはあるが、銅程度だろうか。しかも、魔力を受け付けなくなったようだ。それはちょっと失敗じゃないのか?


 と、思ったが、そうハッキリも言えない。


「サロモン殿も新たなメッキを作ったのか。銅並の柔らかさ・・・・・・、そうだな、軸受けに使えるかもしれん。蒸気機関のメタル軸受けに良いかもな」


 あのピンクオイルが改質や平滑化してくれるから特段必要とは思ってないが、社交辞令だ。


「そうか!あの奇妙な道具に使えるか!ならば、この技術を授けよう!」


 いや、ピンクオイルあれば特段必要はないが、貰っておくか。


 貰った手前、使えるかどうか実際に試してみることにした。


 現状、魔法鍛冶で作れば寸法は均一に出来る。公差云々なんて話をせずに済むからピンクのメタルがなくとも問題は無いんだが。


「あ、そうだ、コイツで複動シリンダーのシールを作ってみるか」


 そう思い立って複動式シリンダーを作ってみた。


 モノ自体はザックリいえば油圧シリンダーみたいなもんだ、特段特殊なもんじゃない。ただし、ピストンの上下ともに圧力を受けるので、ロッドに適切なシールをしなければ複動としてしっかり密閉出来ない。


 この世界にゴムは無いのでシールも金属か革を使うしかないが、蒸気の熱が常に当たる場所に革を使っても耐久性が無い。かと言って同硬度の金属同士では具合が悪い、改質、平滑化されると言ってもだ。


 そこで、ロッドには青メッキを、シリンダー側のシール部にはピンクリングを使用してみると、嘘のようにシールが成功した。


「お、これ、効率化出来るぞ。V型にせずに直3の三段膨張機関作れんじゃねぇ?」


 楓とサーモンのおかげで蒸気機関もマトモなものが製作可能になったじゃないか。


 早速、新型機関が製造可能だとイケメン漁師に言づけてもらって、船大工に会う事になった。


「こんなものを積むのか?火を使うんだろう?聞かされていたよりさらに大がかりだな」


 小さな入り江を利用して作られた造船所なので、あまり大きな船が作れる訳でもないらしい。


 船大工が考えている蒸気船は俺の度肝を抜くモノだった。


 搭載する蒸気機関がV型4気筒から直列3気筒になり、機関自体が大型化しているので悩んでいる様だ。


 ただ、どうにもよく分からないのが、その連結して櫂を漕ごうとする機構はなんだ?


「大工、こんな複雑なモノは必要ない。この機械を船底に据えて、そこから伸ばした軸の先を海中まで伸ばして、この花びらみたいな奴を回すんだ。シンプルだろぅ」


 そういってスクリューを装備した船のスケッチを見せると目を丸くしていた。


「そんなもので船が進むのか?」


 そう驚いているので実際にスクリューのミニチュアを作って見せ、どういう構造かを説明した。


「世の中にはそんなもんがあるとは驚きだな!」


 ただ、問題が無いわけでもない。シールはどうすんねん?と聞かれた。なにせ船底に穴を掛けるんだから、軸を通す水密構造は必須だ。


 シールゴム類はないので、シリンダーのシールを流用して作ればなんとかなると説明した。なんなら、軸の部分だけ隔壁作れば多少海水が漏れても大丈夫だろ。


 結局、大工も革を用いたシールで更に念を入れて作りたいというのでそこは任せることにした。俺が担当するのは金属部分だけだしな。


 船大工は初めてプロペラ推進式の船を作るというのでまずは模型による水槽実験から船形の試験を始める念の入れようなので、俺の出番はまだ先になるだろう。

 下手したら船は冬のうちに完成しないかもしれん。


「最近寒くなったがそろそろ冬用の服をどうにかしないとな」


 自宅へ帰った俺が楓にそう言うと、オリーブ石鹸のお代として漁師たちから貰った毛皮の山を使ってコートや靴を作っていたのだという。


「よっくん、この世界の動物は凄いね。保温性が地球のモノとは比べ物にならないよ。ほら、これ見て」


 そう言って服と靴を見せられた。


「どっかの高級品みたいな代物だな、楓の自作か?これも商品化出来んじゃね?」


 ちょっと呆れ気味にそう言うと、まんざらでもないらしい。


「そんなわけで、ミシンもあと何台は欲しいからよろしく」


 どうやら言い方が悪かったらしい。被服工房を建てて冬の間漁に出られない人等の仕事を確保したいらしい。


 ここにはナーヤマの麻布、クサラベの毛皮や革があるので被服産業を立ち上げることも可能なのだという。これまでは手縫いで量産できるものではなかった、ミシンがあればオーダーメイドで色々作れるようになるらしい。


 どうやら楓は俺以上に様々な事をやっている様だ。

 

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