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13・そうなると工房が必要になるよな

 大量依頼で家の中が部品だらけになっている。


「よっくん、工房建てた方が良いよ。私もオリーブ石鹼家で作るの限界だからタティヴェナに工房作ってそっちに依頼しようと思う」


 コンパウンドボウとオリーブオイル入りのツボが溢れかえる我が家で楓がそう言って来た。


「そうだな。流石に無理があるよな」


 俺も作業を止めてまずはサーモンの所に工房を作れる土地が無いか聞きに行くことにした。


「ヨシキ殿、つかぬことを聞くが、その手に持って居るのはなんだ?」


 土地の話をしに来たというのにいきなり他の事を聞いて来た。


 手に持っているもの。説明がてら今作っている物を見せようとコンパウンドボウを持ってきた。


「これは今作っている弓だ」


 そう言って見せると、サーモンはそれを受け取り、しげしげと見ている。


「この滑車の部分だが、鉄ではないしオリハルコンでもない様だが?」


 そう言って来たので、タチベナの洞窟で見つけた銀を精錬したら魔銀になった上に、そこに魔銅を少量添加することで非常に硬度の高い金属が出来た事を説明した。


「今度はミスリル、だと・・・・・・」


 そう言って弓を穴が開くかと思うほど睨んでいた。


「で、土地についてなんだが・・・・・・」


 俺がそう口にするや否や、周辺にいた側近を呼んで指示を出す。


「オリハルコンの地金だけでも相当なモノなのにさらにミスリルまで錬金した挙句にこんな見た事も無い弓を作るとなると、話が違ってくる。そうそう、フウ殿も石鹸を量産できるとか」


 そう言って楓にも話を振って来たので楓はタチベナに石鹼工房を作りたいという話を切り出した。


「分かった、必要な物はこちらで用意する。タティヴェナにも私が話を通しておく」


 何だか俺たちの想像を超えてサーモンの食いつきが半端ない。


「うだつの上がらねぇ官吏神官に巡って来た好機だ。これを逃す手はない。二人とも、クッサラベの未来を担う逸材だ。ぜひとも思うままにやって欲しい」


 何だか血走った目でそんな事を言われてしまった。


 オリハルコンやミスリルが希少価値があるのは理解できる。石鹸がどう関係しているのかよく分からん。


「日本だと石鹸は何処にでもありふれたモノだし、工場で作られるものだけど、オリーブ石鹸は昔から特産であったり高価であったりしたんだよ。男には興味のない世界なのかもしれないけど」


 と、どこか投げ槍な返答が帰って来た。


「あのオリーブ石鹸ね、ここの女性陣に大人気で、どうも船で運んでくる高級石鹸より品質が良いみたい。干し肉や毛皮、後は麻糸くらいしか交易品が無かったクッサラベにそれらの何倍も価値のありそうな石鹸が出来たんだもの。目を血走らせるのも分かるよ」


 なるほどな。魔法金属と並ぶほどに価値があるのか、オリーブ石鹸。


「しかも、これまで見向きもしなかった低木の林がオリーブが群生してる場所って言うのも盲点だったみたい。あの『キャスター』が量産できるまでは潤滑油に出来るかもね」


 と付け加えて来た。なるほど、ソイツは良い事を聞いた。


「そうそう、それでね、ミシン作ってくれない?」


 上機嫌なので即答で承諾したのだが、冷静に考えてみるとミシンの構造なんか知らんぞ。


「構造なら私がだいたい分かるから」


 というのでまあ良しとしよう。


 こうして俺の工房は港近くの広い場所に作られることになり、魔銅地金や魔銀倉庫も一緒に作るという話でまとまった。すぐにも工事を始めるとサーモンが息まいているのでそう時間はかからないんだろう。


 そして、翌日にはタチベナへと向かう事になった。


 タチベナではオリーブの保管に納屋を借りていたが、ちょうどその近くの土地に石鹸工房を立てることになり、タチベナの女性たちが工房で働くという。


 ここでもあの石鹸は大好評らしく、自分たちがソレを作るというので大はしゃぎだ。


「搾油の機械も大きいのが必要になるからお願い」


 と、楓が言って来たので鉄を精錬して搾油機を作る事にした。


 なんやかんやでクサラベに来たら来たで仕事があり、嬉しそうに寄って来るムサイおっさんが居たので何かと思ったら、どうやら骸炭が完成したらしい。


「ドワーフ!例の炭が出来たぞ!!」


 どっちかって言うとオッサンの方がよりドワーフっぽいがな。


 そんな事を思いながらオッサンに見せられて黒いモノを見る。鑑定の結果、間違いなくコークスで間違いない。


「コイツを鍛冶に使えばより一層温度が上がってやり易いぞ。そうだ、いっそ製鉄もやって貰おうか。窯を一つ一つ壊さなきゃならん方法ではあるが、炭焼きに近いだろう」


 そう、たたら製鉄を彼らにやってもらうのもありかもしれない。


「何だ?コレとあの崖の石を焼いたら鉄が出来るとか面白そうじゃねぇか、人手を見繕ってやってみらぁ」


 そのドワーフにしか見えないオッサンはひたすらにドワーフっぽい態度を崩さなかった。


 オッサンと話していると楓が呼びに来たので、搾油機の製作を頼まれていたのを思い出し、尻を叩かれながら製作した。


「一般の製鉄をタティヴェナの人たちに任せられるなら、よっくんも少し楽になるね」


 楓もオリーブ石鹸をこっちの工房に任せることで他に手が付けられるようになるらしい。


 何をやりたいのか聞いてみたが、微笑むだけで教えてくれなかった。


 

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