露店にて
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ベリズリー邸の門を出て少し歩くとそこには活気のある村があった。
ベリズリー領内の唯一の村であるハンカ村だ。
もはや村というより小さな町ほどの大きさである。
ベリズリー領は多額の負債こそあるがその領地は恵まれていた。
豊かな壌土に山から流れ込む恵の水。おまけに税金の低さもあり農民からすれば絶好の場所であった。
しかしながら他の領地からハンカ村へたどり着くには、今は道ができているとは言え、かつて『迷いの森』と呼ばれた森を抜けなければならず簡単にはこれない。
それに加えてガラティア王国では領地を捨て逃げ出した農民を逃亡奴隷と同等とし、見つけ次第奴隷に落とし、発見者が好きにできることになっている。
奴隷商人に売ってもよし、働かせてもよし、なんなら(世間ではあまりよい反応はないが)殺したってよいのである。
またかつてのベリズリー家が起こした反逆自体も原因となり、領地面積に比べて村人の数は少ないのである。
それでもこれだけ活気がいいのはやはり現当主シリウスの手柄が大きい。
村に王都で新開発された(20年前)圧力ポンプ式井戸を設置し、土地を新たに耕せば、その耕した者の物になり、そしてなによりもシリウス指導のもと、村の付近の山から金が産出されるようになったからだ。
金が産出されてからというものベリズリー領内の負債はみるみる減っていき、手持ちの金ではなんと元の負債の半分程度までなっている。
これらを全て取り扱っているのはメランコリー商会のため、外部にあまり情報が出回らずにいられるのはシリウスからしても嬉しいことだった。
そんなこんなで路上商店街とかしたハンカ村北部に足を運んだリグルとメサニカ。
そこには自家製の野菜や果物、川で取れたであろう魚、朝まで放牧されてたであろう豚や牛がそのまま売られていた。メサニカが露店を物珍しそうに見ているとリグル達に声がかかる。
「よっ!リグル!今日もンゴを買いに来たのかー?」
そこには緑髪で肌が焼けた10歳ぐらいの少年が果物屋の店番をしていた。
「リ・グ・ルさんだろ〜!?まぁいい、ビィ、ンゴ10個くれ」
そういうとビィと呼ばれた少年は、拳よりもひと回り大きい赤い木のみを手渡していく。
「まいどあり!それはそうと...」
ちょいちょいと手招きするビィに顔を近づけるリグル。そして小さな声で、
「そこの美人さんだれよ?よかったら紹介してよ!」
というとビィはメサニカに目線を移す。
「やめとけやめとけ、お前じゃ釣り合わないし、なにより訳ありだ」
「ふーんそんなもんかねぇ...」
若干納得の行ってない様子だが大人しく引き下がるビィ。
「この方はお知り合いですか?」
メサニカは村に入ってから初めて口を開く。
「あぁ、こいつはビィって言ってな。俺の弟分みたいなもんだ」
「よろしく!美人な姉ちゃん!俺はビィ!リグルの兄貴分です!」
「ビィ様、リグル様の兄貴分ですね。記憶いたしました」
「おいおいおいおい!?俺の方が兄貴分だからね!?騙されちゃダメだよ!?」
「私はメサニカ・ベールスです。メイドとしてシリウス・ファン・ベリズリー様に本日より順ずることになりました。以後よろしくお願い申し上げます」
「あれ、無視?無視なの、メサニカちゃん、ねぇ?無視なのかい?」
そんなこんなしていると緑髪の巨漢が現れた。
「おお!リグ坊じゃねぇか!元気にしてっか?んで後ろの嬢ちゃんは?」
「ベルさん!お久しぶりぶりです。この子はメサニカといって今日からうちで働くことになったんです」
「なるほどな。俺はベルって言うんだ。このチンチクリンの親だ。よろしくな!メサニカの嬢ちゃん」
「ベル様。記録しました。よろしくお願いします」
ペコリと無表情でお辞儀をするメサニカ。それとは対照的に笑顔と言うには怖い顔で対応するベル。
「おぅビィ。店番ありがとな。あとは俺に任せてこいつらと一緒に回ってこい。リグ坊、どうせこのあとメサニカの嬢ちゃんのために冒険者ギルドに行くんだろ?」
そういうと変わらず笑顔とも言えない絶妙な表情をするベルであった。
予約投稿をしようか迷う今日この頃