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本日4話目です!
簡素な執務用の白い長机とこれまた白く、それこそ色合いを除けば一般の市でそれなりの値段で売られていそうな椅子が四つほどしか置かれていない物寂しい部屋。
部屋の床や壁も家具と同様に白く染められており、こちらもよく見れば元からあった壁にペンキを塗りつけただけの見掛け倒しのようなものだということがわかるだろう。
そんな白以外の存在を知らない無知な部屋にただ一人。黒を具現化したような男が椅子の一つに腰掛けていた。
年齢は四十台ぐらいであろうか、髪は頭髪の全てを後方で撫で付け、左手は黒色の革の手套をはめ、右手は手套はつけず、代わりにいくつかの指輪がはめられていた。
体のほとんどをは全てを吸い込んでしまいそうな黒色の布のようなもので出来た外套で包み込み、唯一胸元の部分は下に着ているであろう壁と同じような白色の服が多少露出していた。
もし連合国に住む人々や異界から迷い込んだ異物達がその黒色の装いを目にしていたら、それがスーツと呼ばれるものだと気がついただろう。
そして同時に通常のスーツというものは防御性に乏しく、近代では祭事の時ぐらいにしか着ないことから、この男がただこの衣装をまとっているだけではないことも看破しただろう。
男は足を組み、いくつもの指輪をじゃらじゃらとつけた右手を顎と頬のあたりで交互に行き来させながら、真っ白な壁を睨みつけていた。
しばらく男が壁を睨みつけていると、誰かが壁を叩くような音が鳴った。
すると突然男が睨みつけていた壁の一部がぎぃ、と音を立て直線状の亀裂が入る。
片開きとなった壁は扉としての役割を果たし、部屋の外から来た来客を招き入れさせる。
「ラインハルト様。儀式が終了いたしました」
全身に白や金の装束を纏わせた二十歳ぐらいの女性がラインハルトと呼ばれた男の前に跪く。
「ふむ。して、巫女殿の結果はいかように?」
「儀式は概ね成功いたしました。まずは魔族の軍勢に関する報告からいたします」
そう言いながら女性はどこからともなく数枚の紙を取り出し、それをラインハルトに手渡す。
「これは......やはり、か」
「はい、真なる魔王が誕生いたします。託宣ではあと一年もないうちに復活するかと」
「一年もない、か。まぁいい。こちらは既にわかりきっていたことだ。だが、5体目とは厄介だな。こちらに害を為さなければ事が進めやすいのだが.......」
「どういうことですか?魔王というのは人類の敵。即座に討伐されたとしても人類に対し幾分かの影響があるのでは?」
ふむ、と
「して、もう一つ件はどうなった?奴らは王国以外にもいたのか?」
「はい。異常児はいたのですが、その......」
女は俯くと少ししてからこれまたどこからともなく紙を取り出し、今度は少し渋る様子を見せながらラインハルトに手渡す。
「なんだ歯切れが悪いじゃないか」
「いえ、実は完全に観測しきれませんでた...」
女の震えた声が部屋に反射する。しかしながらラインハルトはこの事態をあらかじめ知っていたかのような態度で淡々と会話を続ける。
「ふむ、何人まで観測出来た?」
「おそらくは王国含め十人...。それ以降を探る前に相手の監視迎撃術式が発動いたしまして。おそらく異常児の寵愛の一つかと」
「術式の系統は?.....待て言わなくていい、どうせ爆発だろう?速攻で打ち込め、殺傷能力が高い。異常児に対して神が行うご寵愛の一つだ。これをじかに受けたであろう巫女殿は無事か?」
「結界は張ってありましたので大事には至りませんでした。また強制的な監視の切断でしたので逆探知の恐れもないと思われます」
「ふむ......。巫女殿にはまだ死なれては困る。これからが本当の戦いだ。我々の世界を取り戻さなくてはならない。」
そう言い終わるとラインハルトは立ち上がり、女が入ってきた壁扉へと足を進める。
「お、お待ちください!どちらへ行かれるのですか?」
「少しばかり修行に行ってくる。なに、一週間もしないうちに戻る。その間の業務は通常通り皇帝に任せておけ。」
そう言い終わり、ラインハルトは再び足を進める。
が、部屋を出たところで思い出したかのように立ち止まり、振り返った。
「あと十傑集を招集しといてくれ。あぁ、三席は呼ばなくていい。彼女には別のことを任せてある。代わりに帝国騎士団のアルベール将軍を呼んでおいてくれ」
そう言い終わると彼は再び歩を進め始めた。
ブクマ、評価よろしくお願いします!
本日は疲れたのでこれまでかも...?