第30話 晴れの春
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…猪笹王様と美雪さんとお別れしてから約三ヶ月が経ち、すっかり雪も溶けて桜が満開になった頃、私はと言うと居間で緊張した面持ちでとある白い箱の蓋を開けた。
「…うわぁぁ〜あ!ランドセルだぁ!!」
白い箱の中に入っていたのは柔らかな黄色のランドセルで、ウキウキな気持ちを抑え丁寧に持ち上げて背負ってみた。
「わぁ〜あ!ランドセル!わたしの!どうですか?お兄さま!」
ピョンピョンと跳ね回ってから座っていたお兄様に近付くと、箱の蓋を元に戻したお兄様がニコッと笑った。
「うん、とっても似合ってるよ。まるで天使みたいだ、可愛いね。」
「わぁーい!天使の小学生だぁ〜!」
浮かれ過ぎてお兄様の褒めすぎ言葉を鵜呑みにしてまたピョンピョンと跳ね回ってしまった。すると、その騒ぎを聞き付けたのか少し渋い表情を浮かべたお父様が廊下に現れてコホンと咳払いをした。それに大きく身体を跳ねさせた私はすぐさまお兄様の影に隠れた。
「…ご自慢のランドセルが見えているぞ、美子。大人しく出てきなさい。」
「……は、はい、お父さま…。」
さっきまで宝物のように思えたランドセルを恨みながら下ろして前に抱えると、おずおずとお兄様の影から出て隣に正座した。すると、お父様が敷居を跨いで居間に入ってきて私とお兄様の前で同じように正座をした。
「…美子。ランドセルが届いて嬉しい気持ちも解るが、いちいちそう騒ぎ回るのはやめなさい。明日からは小学校へ通うことになるのだから、他人の目がある以上は節度と礼儀を弁えるように。」
「…はい、ごめんなさい…。」
「お父様、御指摘は御尤もですが、ランドセルに喜ぶことが何の恥となりましょうか?ましてや美子は明日から小学生となる身。そんな幼い子が常に他人の目を気にして生きねばなりませんか?」
私が謝った直後にそう言い放ったのは隣にいたお兄様で、見上げると笑顔だけど少し怒っているような表情だった。
「そう甘やかして何のためになる?これからは他人のいる社会へ出るのだ。己も相手も子供とは言え最低限の節度と礼儀は必要であり、それが巡り巡って美子のためにもなるだろうと言っているのだ。」
「“美子のため”?では何故そうお思いになるのに美子に「あめつち」の名を名乗らせないおつもりなのですか?」
「…えっ?」
そろそろ止めないとと思っていた時に聞こえてきた言葉に思わず言葉を失ってしまった。そして、驚いた表情のままお父様を見上げるとお父様は一つゆっくり瞬きをしてから口を開いた。
「…それは美子が「【応龍】の巫女」であると周知されないようにするためだ。【応龍】の本家である天地家には息子と娘が一人ずついることは既に知られている。だが美子の顔まで知る者は関係者以外にはいない。それは稀有な力である「治癒の力」を持つ「【応龍】の巫女」の身に危険が及ばぬようにするための措置なのだ。なのに「あめつち」の名を美子に名乗らせればその努力も無駄となり、危険な目に遭うやも知れぬ。故に美子には明日から「あめつち」ではなく「天地」を名乗ってもらう、と昨日あれ程説明しただろう。」
「それが美子のためと?そのように仲間外れのような扱いをすることがー…」
「お、お兄さま!!」
お父様の言葉に更に食い下がろうとするお兄様の腕を掴んで名前を呼ぶと、怒りを深めた表情のお兄様が私を見下ろした。それに少し背筋がぞわりとしたけど、グッと堪えて笑顔を作った。
「わ、わたしなら大丈夫です!ちょっとびっくりしたけど、でもお父さまはわたしのことを思ってそう判断なさったんだってちゃんと分かったので大丈夫です!」
「だけど美子、それじゃあー…」
「本当に大丈夫です!だから…もう怒らないで下さい、お兄さま。」
本当はお兄様が言うように仲間外れみたいで嫌だったけど、これ以上お父様と喧嘩して欲しくなくてお願いと目で訴えた。すると、お兄様は暫く私を見つめた後にゆっくり目を瞑って溜息を吐いた。
「…分かったよ、美子。ごめんね、怖い思いをさせたね。」
優しく微笑んだお兄様はそう謝りながら私の頭を愛おしそうに何度も撫でてくれた。その手の温もりと笑顔が嬉しくて、さっきまでチクチク痛かった胸が穏やかな熱を帯びて私はいつの間にか笑顔を浮かべていた。
「…それと美子。明日は光の中学校の入学式もあるため私はそちらにのみ参加する。故に明日は一人で入学式に参加してくるように。」
「…えっ、ひ、一人でですか?先生…分家の奥方さまもダメなんですか?」
「あの方は天地家の者であると顔も名も知られている。それに分家とは言え天地家と血の繋がりのある者が同行することは怪しまれるためお前一人で参加するのが良いと判断した。」
「そ、そうですか…一人で……」
「…お父様、それは余りにも」
落ち込む私にまたお兄様が怒りに燃える気配がして慌てて腕を掴んだ。そして大丈夫だと言わんばかりに首を横に振って笑顔を浮かべると、お兄様は少し眉を顰めて苦しそうな表情になった。すると、それを見つめていたお父様が静かに立ち上がった。
「…話はもう良いな。では美子、明日の朝までに必要な書類を用意しておく。明日はそれを持って登校するように。また今日は明日に備えて早めに就寝するようにしなさい。」
「は、はい。お父さま。」
私がそう返事をするとお父様はお休みと言い残すこともなく敷居を跨いで廊下を歩いて行ってしまった。残された私とお兄様はと言うと、どちらかが何かを言うこともない微妙な沈黙の中に取り残されてしまったのだった。
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…そして、一夜が明けていつも通り応龍に挨拶を済ませると居間に戻って用意されていた朝食を食べ始めた。
(…私の分だけのご飯が置いてあるってことは今日はお兄様もお父様も一緒じゃないんだ…一人でご飯食べるのなんて久しぶりだなぁ…)
いつも必ずお兄様と一緒に食べていたから寂しさに落ち込みそうになったけど、頭をブンブン振ってその気持ちを吹き飛ばした。すると、ポーンポーンという音が鳴り響いて顔を上げると時計の針は7時を指し示していた。
(えっと…確か9時から入学式だけど8時30分には教室にいなきゃいけないから…急いで食べないと!)
遅刻は絶対ダメと言い聞かせると急いでお箸を動かした。そして最後に取っておいた私好みの砂糖で甘くした卵焼きを味わって完食すると「ごちそうさまでした!」と元気よく挨拶をした。それから立ち上がって食器を持ち、台所へ入ると先生どころかお手伝いさんすらいなかった。
(…あ、あれ?どこ行っちゃったんだろう?…あ、そっか。今日はお兄さまの入学式もあるからお兄さまのお手伝いをしてるのかも。)
そう一人で納得すると台に登って蛇口をひねり、スポンジと洗剤で食器を洗った。そして、洗い終えると台から飛び降りて今度は洗面所へ行って歯磨きと顔を洗った。
「…よし!歯もお顔もちゃんと綺麗!」
いー!と歯を鏡で確認し終えると、また台から飛び降りて廊下を走った。いつもなら廊下を走ってはダメだと怒られてしまうけど、今は誰もいないから遠慮なく走らせてもらった。
「よしっ!到着!準備するぞー!」
走った勢いそのままに自分の部屋へ飛び込むと、机の上に置いてあった封筒と白い箱の所まで歩いて行った。そして白い箱を床の上に置くと蓋を開けた。
「…わぁ〜〜あ!可愛いワンピース!それに可愛い靴まで入ってる!」
大きな白い箱の中には淡い黄色のワンピースに白いレースの上着、そしてピカピカな黒い靴とレースのついた白い靴下が入っていた。それにウキウキしながら肌着姿になろうとした時だった。廊下の方が騒がしくなったと思ったら襖が勢いよく開いて白いシャツと黒いズボンを身に纏ったお兄様が現れた。
「お、お兄さま!?ど、どうしたんですか?!その格好…い、いや、それより入学式の準備があるんじゃ…?」
困惑しながらもそう尋ねるとふふっといたずらっ子みたいに笑ったお兄様が部屋の中へ入ってきた。
「まだ詰襟を着ていないけど、これが僕の制服だよ。僕の準備はもうほとんど終わってるし、中学校の入学式の方が一時間遅いから美子の準備の手伝いをしようと思ってね、抜けてきたんだ。」
抜けてきたと言う言葉に引っ掛かりを覚えた時だった。廊下の方がまた騒がしくなってお兄様越しに見るとお手伝いさんや巫女のお姉さん達が困ったような表情でこちらを見ていた。
「ひ、光様。勝手に抜けられては困ります。まだ支度も終わっておりませんし、それにー…」
巫女のお姉さんがそう言うとお兄様はゆっくり振り返ってその人を真っ直ぐに見つめた。
「僕の準備はもうほとんど終わっているだろう?それにちょうど良かったよ。美子の支度を手伝ってあげてくれないかな?一人で着替えたり重要な書類を準備するのは大変だろうからさ。」
お兄様がそう言うと、お手伝いさんと巫女のお姉さん達は戸惑ったような表情で顔を見合わせた。
「…し、しかし、応龍様からの御命令には光様の支度を手伝うようにと…」
「うん。でも僕の準備はあと詰襟を着るだけで終わるよね?ならその後はどうしたって良い訳だし、僕に命じられたと言えば君達がお父様に怒られることはないだろう?…それともまだ、美子を手伝わない理由があるのかな?」
最後に声を少し低くしてそう言ったお兄様に思わず背筋が凍った。そして、それは私だけではなかったようで、廊下にいたお手伝いさん達も引き攣ったような顔で目を泳がせていた。
「…わ、分かりました。美子様の準備をお手伝い致します。」
納得したと言うよりかは恐怖に負けたと言った表情でそう口にしたのはお手伝いさんでそれに続くように後ろの巫女のお姉さん達も静かに頷いた。
「ありがとう。それじゃあよろしくね。」
お兄様が笑顔でそう言うとお手伝いさん達は私の着替えを手伝ってくれたり、書類を確認してからランドセルに筆箱や連絡帳と一緒に入れてくれたりした。
「光様、髪型は如何なさいますか?」
「美子、どんな髪型にしたい?」
「えっ、えっと…お、おまかせします…。」
髪型なんて一つか二つに束ねるくらいしか知らなくて、入学式にどんな髪型で行くのが良いのかなんて分かる訳もなかったからそう答えた。すると、お兄様は暫く考えるとお手伝いさんに指示を出した。髪を何かやってるなぁと思ったけど鏡が近くにないからどうなっているの分からなかった。
「美子様、リボンか何かお持ちではありませんか?」
「リボン…あ、それなら机の引き出しにおばあちゃんから貰った髪紐があったような…」
朧げな記憶のままそう言うと、ランドセルの支度をしていた巫女のお姉さんが引き出しから私の言った髪紐を取り出した。そして、それをお手伝いさんに渡した。
「美子様、前をお向き下さい。」
「…あっ!す、すみません!」
机の横にある鏡で早く姿を見たくてそっちの方を向いていると髪を結ってくれているお手伝いさんにそう言われた。それに慌てて正面を向くと、また何やらスルスルギュッギュッっと髪を結う感覚に身を委ねた。そして、暫くするとそれがピタリと止まった。終わったのかなと振り返ると巫女のお姉さんが机の近くに置いてあった姿見をこちらに向けてくれた。それに手を差し伸べてくれたお兄様と一緒に鏡の前まで行った。そして鏡の中の自分を見た瞬間、思わず言葉を失ってしまった。
「…うん。やっぱり来て正解だったかな。とっても綺麗だよ、美子。」
…お兄様にそう言われて漸く鏡に写っているのが自分であると分かった。そして、それと同時に頬が真っ赤に染まった。
「き、き、綺麗だなんて!!そんなことないです!!そ、そんなこと思ってないですから!!」
「ふふ、そんなにムキになるってことは美子も自分に見惚れちゃったのかな?」
「!!な、な、なってないです!!み、見惚れてなんてないです!!」
的確に言い当てられたのが恥ずかしくてお兄様をポカポカ叩くと、お兄様は更に笑って私の結われた頭を優しく撫でた。
「ふふ、意地悪を言ってごめんね。そうだ美子、少し手を出してくれる?」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしつつも少し冷静になって言われた通りに手を差し出すと、お兄様はポケットから黄色と桃色のお守りを取り出して私の手に乗せた。
「交通安全と学業成就のお守りだよ。一個に二つの力が宿ってるのはお父様には内緒だよ?欲張りだって怒られちゃうからね。」
コソッと耳元でそう言ったお兄様はいたずらっ子みたいな笑顔を浮かべていた。その妖艶な笑みに思わず見惚れてしまうと、お兄様はまたクスッと笑って私のランドセルの名札入れのところにそのお守りを入れた。
「さてと、もう少しその姿を見ていたいけど遅刻したら大変だからね。そろそろ行こうか、美子。」
「え、行くってー…」
「光様、美子様とご一緒に登校されるのは応龍様が…」
「分かってるよ。だけどせめて裏口のところまで送ってあげたいんだ。それなら良いだろう?」
私の言葉を遮ったのは巫女のお姉さんで、その巫女のお姉さんの言葉を遮ったのはお兄様だった。そして、何も言えなくなったお手伝いさんや巫女のお姉さん達を見渡すとランドセルを肩に、左手に箱から取り出した靴を持って、右手で私の手を繋ぐと廊下を歩いて行った。
「美子、靴はキツくない?ランドセルは?重くない?」
「はい!大丈夫です!」
ピカピカの靴と大きいランドセルを背負うと一気に緊張感が込み上げてきた。それに思わず俯いてしまうと、お兄様が膝を付いて両手を握ってくれた。
「大丈夫だよ、美子。美子ほど優しくて賢い子ならきっとたくさんお友達ができるはずだし、それに小学校と中学校は併設されているから、美子にもし何かあっても僕がすぐに駆け付けるから。だから、怖がらないで楽しんでおいで。ね?」
「へい、せつ…?お兄さまと一緒ってこと?」
私がそう聞くとお兄様は優しい笑顔で「うん」と頷いてくれた。その笑顔が頼もしく見えて思わずお兄様に抱き付くとお兄様はランドセルの間に腕を回して頭をポンポンと撫でてくれた。
「…さあ、美子。行っておいで。入学式、楽しんできてね。」
「…はい!行ってきます!お兄さま!」
笑顔でそう返すと、お兄様に手を振ってから裏口の戸を開けた。そして裏門に駆け寄るといつも通り人がいないかを確認してから門を出て鳥居に向かって走っていた。
「行ってきます!応龍!」
鳥居のところで元気にそう挨拶をすると拝殿の方から強い風が吹いてきた。それに勇気付けられてルンルンで鳥居の階段を下ると、すぐ近くの交差点を渡って角を曲がった。その時だった。
「うわっ!?」
ドンっと音と共に何か温かくて柔らかい壁にぶつかって転びそうになったけど大きな手が私を掴んで支えてくれた。
「す、すみません!お怪我はー…」
ちょっと痛い鼻をさすりながら見上げると、見覚えのある柳色の着物に松葉色の羽織が目に映った。
「…えっ!?さ、佐藤のおじいちゃん!?」
「おはようございます。美子さん。」
ぶつかった私を受け止めながらにこやかにそう挨拶したのは「はなのえん」の大将である佐藤のおじいちゃんだった。だけど、再会を喜ぶよりもある疑問が浮かび上がってきて慌てて口を開いた。
「ど、どうしてここにいるの!?お店は?!朝の仕込みは?!」
一息にそう疑問を投げかけると、おじいちゃんは余裕のある笑みでほっほっほっと笑った。
「お店の方は本日お休みさせていただきました。なにぶん今日は美子さんの晴れ舞台ですから、是非参加させて頂ければなと伺いました。ですので同行の許可を頂戴したく存じます。」
ゆったりとした言葉で紡がれた突然の言葉に思わずポカーンと口を開けて放心してしまった。すると、どこからかカラスの鳴き声が聞こえてきてそれにハッ!と意識を取り戻した。
「ど、同行!?そ、それって入学式に行きたいってこと!?」
大声でそう尋ねると、おじいちゃんは「はい」と笑顔で頷いた。それに嬉しいような嬉しくないような複雑な感情が湧き上がって下を向いてしまった。
「…で、でも、わたしは今日から「あめつちみこ」じゃなくて「てんちみこ」って名乗らなくちゃいけなくて……」
「ほー、そうですか。承知しました。ですが私は美子さんとお名前でお呼びしておりますのでその点は問題ないと思われますし、名字が違うと言われた時は叔父と姪とでも言えば何とかなるかと。」
「そ、そうだけど、その…今日の入学式も一人で行ってきなさいって言われてるから……」
「一人で、と言うのは天地家の方の付き添いは無しで、と言うことかと思われますが、私はもちろんそれに該当致しませんよ。なのでどなたかの命ではなく美子さんの許可を頂戴したいのです。」
「…わたしの…?」
弱々しい声でそう言うと、おじいちゃんはまた笑顔で「はい」と頷いた。その笑顔があまりにも頼もしくて眩しくて、すぐに答えられない自分が嫌になって思わず俯いてしまった。暫くの沈黙の中、突然ふわりと春の暖かな風が頬を撫でたと思ったらおじいちゃんがクスリと笑った。
「…美子さん、困惑させてしまい申し訳ありません。ですが、私がこのような行動に出たのはきっと……師匠ならそうするだろうと思ったからです。」
「師匠」という言葉で思い出されたのは私にお菓子の作り方やお勘定のやり方を教えてくれた「はなのえん」のおばあちゃんだった。それに顔を上げると、おじいちゃんの笑顔がおばあちゃんの優しい笑顔と重なって見えて泣きそうになった。
「…本当におばあちゃんなら、わたしの入学式に来てくれたかな…」
「ええ、きっと。師匠は貴方を本当の孫のように可愛がっておりましたし、何より…貴方を友として何よりも信じておられました。…妖怪である私が人間として今もここにこうしていられるのは、その信頼と友情があってこそなのです。」
最後の方はちょっと分からなかったけど、おばあちゃんが私のことをそう思ってくれてたんだということが堪らなく嬉しくて、更に泣きそうになった。
「…美子さん、もう一度お願い申し上げます。私に入学式へ参加する許可を頂戴できませんでしょうか?」
そう言って頭を下げようとするおじいちゃんに急いで涙を拭くとそのシワシワの手を強く握った。
「…うん!!行こう!!一緒に入学式に!!」
それまで悩んでいたのが嘘だったかのような元気いっぱいの笑顔でそう言うと、おじいちゃんは少しビックリしたような表情になった。だけどすぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて「はい」と答えてくれた。
「やったー!そしたら遅刻しないように急がなくちゃね!」
「ええ、そうですね。私、カメラなる物を持ってきましたので時間がありましたら写真も是非撮りませんか?」
「わーい!カメラもあるんだ!そしたら一緒に撮ろうね!おじいちゃん!」
「はい。」
…昨日から感じていた一人で入学式に行く悲しさはおじいちゃんのおかげですっかりなくなっていた。代わりに湧き上がった喜びにスキップをしながらおじいちゃんと手を繋いで小学校へと歩いて行ったのだった。
続く…




