地下の貴族
北海道弁入ってたらすいません。
第6話
あの後少しだけコーヒーを飲み、宿に戻った。少し疲れたので、師匠が帰ってくるまで仮眠をすることにした。
慣れてしまったが、目を閉じると毎回同じ夢を見る。黒い天使が左右合わせ6枚の翼を広げて見下し、暗闇に落ちていく夢を。そして拷問を。嫌だと叫んでも届かず切られる腕を痛みを感じ、その瞬間ベットから飛び起きた。
「また夢か。」
悪夢は一生離れない。心に深く刻まれてしまった。手も震えていた。フォークを向けられようが集団で殺しに来ようが、全く恐怖死んなんて感じなかった。
「俺が人になりたいのは、アレから逃げたいからなのかな。」
なんだろう。すごく振り回されているような気がする。でも自分で決めた道だ。最後までやらないといけない。最後があるかは、分からないが。
「よく寝れたかの?」
「師匠、帰ってたんですか。」
「飯にするぞ。入学祝いしてやる。」
きっと見ていたのだろう。俺は師匠の気持ちに乗ることにした。
宿屋を出て街中の居酒屋に入ることにした。
俺まだ酒は飲めず、美味しさもよくわかっていない。師匠はがぶがぶ飲めるが見た目が幼女のため、注文するのはいつも俺だ。
「飲みすぎないでくださいよ。また部屋まで運ぶの大変なんですから。」
「ビールは喉で味わうのじゃ。」
これは聞いてないな。
すでに顔が真っ赤でお代わりをねだる。
「師匠、今日は校長と話したんですよね。どんな人でしたか?」
「あぁ話してなかったの。相変わらずムカつくやつだったの。」
酔っ払って内容が全く無い。これ以上の詮索は無駄か。
疑っているわけじゃない。ただ師匠と同等の強さがある人物。ぜひとも会ってみたいが、明日の入学式で挨拶がある。急ぐ必要は無いか。
「それじゃあ先に会計済ませておきますね。」
店の外は小雨が降り、今にも本降りが来そうな雰囲気だ。早めに宿に戻ろう。師匠は子供じゃないから1人でも大丈夫かな。
足早に走ると辺りは暗くなり、住宅街に入っていった。いつも2人だからかもしれないが、一人で帰ると余計不気味で怖い。
ふと濡れた地面を見ると、土に足跡が残っていた。すぐ横の建物の間の細道に向かっており、新しい足跡に見える。こんな所に通るのだろうか?しかも途中から足を引きずっているようだ。何より周りには血が垂れている。
「怪我しているのか。」
これは様子を見に行った方がいいと思い、足を向けたがそこで喫茶店で話したことを思い出した。
『正義っ面か。』
俺は善人になりたいのか。どこまでやっても偽善者のはずなのに。
でも目の前の事を見ないのは責任逃れだ。俺は前を向いて歩いた。
細道の突き当りには、地下へと続く階段があった。血は地下に向かっていた。近づくほどに血の量も増えているような気がする。
「血の匂い。」
地下から風吹き血の匂いを乗せてきた。どこか懐かしく感じてしまう俺が嫌になった。
真っ暗だが目も慣れてきて壁を伝い降りてみた。先の方が明るくなり、広い部屋に出た。部屋と言うより大聖堂の様な地下空間だ。天井が高く、正面には4人の女神が描かれた壁画を大量のロウソクで照らしている。
「こんな地下に教会?」
目が慣れてきたのか薄暗かった部屋が鮮明に見えてきた。絵画の前には巨大な十字架のオブジェクトがたっていたことに気づき、よく見ると何かが吊るされていた。
「まさか。」
最悪の事態を想像したが、まさにその通りになってしまった。
吊るされていたのは、宿屋のメイドだった。手足が根元から切り落とされ、体と首だけの姿に成り果てていた。血が止まらず流れ続けている。
もう既に手遅れだったのだ。
「な、なんでこんなことに。もっと早く来ていれば……」
こんな事するのは奴しかいない。悪魔だ。
だけど外にいる野良の悪魔は基本野性で動く食事の行為。手足だけ切り落とし、吊るす知性がある。これは悪魔の上位貴族。
「女を狙い、いたぶり殺すやり方。上位貴族のイフリートか。」
「正解です。流石神殺し殿、博識ですね。」
突然後ろから現れたのはシルクハットに蝶ネクタイにスーツの紳士だった。いかにも怪しげな登場の仕方だ。
「申し遅れました。私、魔界第17位貴族イフリートと申します。よく分かりましたね。」
「このやり方は前にも見た。それにこの切口、少しやけ焦げている。」
「流石でございます!」
白手袋で手を叩く。何を考えているんだ?
「当てた褒美とまでは立場上できかねますので、ここらで引かせていただきます。」
「逃がすと思っているのか?悪魔。」
「やれやれ元気がいいですね。分かりました。少し手合わせして差し上げましょう。」




