第2話 正体と招待
雪降って来ましたね。
第2話
宿の窓から鳥の鳴き声と朝日に目が覚めた。出たくない。久々のベッドだからか、いつもより暖か……
「ん?あぁ、おはようリク。」
「なんで俺のベットにいるんだよ!」
腕にベッタリと抱きつかれていた。どう見たって勘違いされるよな。早く離れないと。
ガチャっとドアが開いた。
「おはよぉございます!」
昨日、カウンターにいたメイドさんが入ってきた。
そう言えば、朝早めに出たいので起こしに来てもらえますかって頼んでた。でもタイミングが悪すぎだ。
「あ、えっと、おはようございます。」
師匠が俺の腕に巻き付き体を寄せていたのを見られてしまった。
「あら、やっぱりお楽しみでしたか?」
「違うわ!」
朝から疲れる。これから大事な入学試験があるのに。
「食事の用意ができています。準備して来てくださいね。」
「分かりました。師匠、起きてください。」
二日酔いか。師匠は頭を抑えて二度寝をしようとしている。引きずり出し食事も済ませ、第一軍魔法学院に向かった。
「頭痛い。眠い。」
「流石に飲み過ぎ。もう少し気を使ったらどうだい。」
「久々の休みだったのじゃ。それくらい許せ。」
「もう歳なんだし。」
「儂はピチピチの12歳じゃぞ。」
ピースで可愛いポーズをするが、見た目だけなんだよなぁ。しかも二日酔いした12歳とか。
「なんだその哀れみの目は!」
「今どきの"女子"は儂なんて言いませんよ。」
なんて無駄話をしていたらあっとゆう間に学院前まで来た。
「でっかい門だな。」
学院前には街の外にもあった鉄の壁がそびえ立っていた。門は開いたままで、ここが唯一の出入口らしい。
「さあ、行くか!」
リクは門をくぐった。ここが魔法学校か。所々で魔法が飛び交う。1人は火を吹き、1人は水を操る。魔法以外にも、絵を書く者やゆっくりベンチで読書を楽しむ。その中には木刀を振る者もいた。想像通りの魔法学校だ。
「すごい。こんなに人が魔法を使えるなんて。」
「君が使えないだけだと思うぞ。リク。」
「分かってますよ!ほら早く、新入生試験に向かいますよ。」
すぐ横には長い行列ができ、同じ試験を受けに来た者が並んでいた。その先には仮設テントがあり受付を行っていた。
「次の方どうぞ。お名前を教えてください。」
「リクです。」
「ファミリーネームも教えてください。」
ファミリーネームとは皆が持っている苗字みたいなもので、宗教や団体で呼ぶこともある。元神の俺にはそんなファミリーネームなんてない。そもそも上界に存在しなかった。
どうしよう。適当な事言ってもバレるし。
あ、そうだ。
「師匠。」
師匠のファミリーネームがあるじゃないか。俺もそれを借りれば。
「ウリエラ=テルじゃ。でこっちがウリエラ=リク。」
「ウリエラ!?あのウリエラですか!?」
え?なんでこんなに驚いてるの?
「師匠、ウリエラってなんですか?。」
「儂の昔のファミリーネームじゃ。有難く思え。」
それだけで大騒ぎになるって、昔どんだけ有名人だったんだよ。
すんなり通してくれた。思ってたより拍子抜けだ。案内されたのは大きな透明なガラス。薄い膜のようにも見え、揺らいでいる。
「ここを通ってください。」
ここを?通るだけなら別にいいけど。なんか不思議な感覚だ。まるで水の膜を通るみたいだ。疑いも無く無心で通ってしまった。
「リク!ダメじゃ!」
師匠が叫ぶ時にはもう遅い。くぐった後なんだもん。
「え?」
俺の体が液みたいに流れ始めた。
実は悪魔の体を見せる訳にもいかず、この街に入る前に師匠に魔法をかけてもらっていた。悪魔の肌の表面を人間にする。光を操るもので難しい魔法でもない。光を変化させてリクの肌に貼り付けているだけだ。常に持続させるなど師匠にとっては苦にもならない。
しかしその簡単な魔法が仇となった。さっき通ったのは偽りを、魔法を見抜くガラスだったのだ。
黒い手と顔がバレた。こんなに早く。
「えーと、これは。」
ビービーと警報が学校中に鳴り響いた。侵入者だと叫ぶ生徒や警備員が走り回り、俺の周りを囲んだ。皆剣や杖を持ち俺を睨む。
「ちょっと待ってください。話を……」
話すことも許されず、一斉に抑えに来た。
師匠は助けに来ない。ただニヤついて見ていた。これくらい対処してみろって顔をして見ている。なるほど、危害を加えずにやってみろと。
俺は目をつぶった。視覚はいらない。避けるなら気配を感じるだけで十分。
まず、右から剣が来て左後ろから……
「止めないんですか?」
「ん?何じゃ小娘、止めて欲しいのか。儂が入るまでもないじゃろ。自分から引っかかったのじゃし。」
「いや、あの数じゃ死にますよ。ここの生徒は後に軍人になる素質のある魔導士。実践経験が違います。」
「経験か。リクも戦闘に関しては儂より強い。」
「あなたの強さは存じませんので分かりませんが。あれ?攻撃が当たっていない。」
「リクの強さは身体能力。全てを見切る凄まじい5感は第6感とも言える強さを引き出しているのじゃ。」
「って事はあれって音と空気の感覚だけで。」
風の音、足の音、服の音、魔法の詠唱。これだけの情報があれば避けられる。そもそもコイツらには殺気が感じられない。一体何がしたいんだ。
「そこまで!」
突然の事で皆が凍りついた。
「会長。よろしいのですか。」
「お前らにこいつは止められない。それに戦う気は無さそうだ。」
明らかに他の生徒らと格が違う。てか、怖い。あれは女王としての気迫。無礼な態度はやめよう。
「君は悪魔かい?」
ストレートに聞くのか。でも話を聞いてくれそうだ。
「いいえ。悪魔の体ですが人間です。」
「証明は?」
「出来ません。」
なるほどと言い少し考え、チラッとテルの方を向いた。師匠と会長と呼ばれている女王様がアイコンタクトした。お互いに何かを感じ取った気がする。
「君。ついて来なさい。」
「よろしいのですか。蜾蠃生徒会長。」
生徒会長!?この人が、学院NO.1魔導士。
「構わない。少なくとも彼女の友人なら信用できる。」
俺は師匠に駆け寄った。
「なんで助けに来てくれないんですか。」
「いや、リクが袋叩きにされるのが面白くて。」
「されてませんよ。」
「今回は服も無傷じゃな。」
「誤魔化さないでください。」




