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プロローグ

千佳シエダです。

初めて真面目に小説を書きました。知識も語彙力も無いのでご指摘ありましたらよろしくお願いします。

プロローグなので内容は展開早めにしています。

Twitter@xiuwooon

プロローグ


 神の戦い。それは世界の壊滅、消滅、終結を意味する。神同士が殺し合いをしても、世界の崩壊で終わる。それは、全ての神が知っていることで、意味など無かった。しかしそれは現実となったのだ。一人の神の裏切りによって。


 神の世界。上界。

 こんなにも荒れた上界は初めて見る。戦場には傷が残り、空に海に大地に亀裂が入っている。周囲は死体で覆い尽くされ、血の海となっていた。

 そんな中で俺は、戦い続けた。光る剣を持ち、返り血を浴び染まった赤髪に獣の様な鋭い目。常に一人で戦い続けたことから「紅血のオオカミ」と呼ばれた。


 呼び名などどうでもいい。いつまで続くんだ?この戦争は、あと何人殺せばいい?


 感情もなく突進してくる黒い天使を、真っ二つに切り返り血を浴びる。争いは醜いものだ。隊長の俺は、容赦無く剣を振り続ける。


「よし、前線は下がれたはずだ。そろそろ……。」


 気を抜いてしまった。戦闘中の気の緩みは生死を分ける。この一瞬を狙われ、振り向いた時にはもう遅かった。


「!?」


 漆黒の槍が雲を振り払い、腹を突き破る。衝撃により血と煙が舞う。その場に倒れ、天を見上げた。


「お久しぶりですね。リク。いや、今は第四天使隊長と呼びましょうか。」


「ハハ……まさか貴方がくるとは。」


 俺の身体には、腹部に突き刺さった黒炎の槍が刺さっていた。熱くはなくむしろ寒い。これが死かと初めて体感、実感した。

 ぼやける視界に、黒い翼を広げた天使が黒い羽根を落としながら、空中に浮遊していらる。その姿は敵ながら美しく見えてしまった。


「神でも……死神か……」


 まだまだ未熟だったと後悔はしたが、もう覚悟は出来ていた。俺はここで死ぬ。

 天使は空から落ちて右眼に黒槍を突き刺し、苦しみ叫ぶ寸前に耳元で囁き残した。


『お前は……』


ーーえ?

 黒槍を刺した地面が割れて、落ちていった。深い闇の中へ。




「……はっ!?」


 ベットの上で目を覚ました。高い天井に大きな窓から光が差し込む。早朝のようだ。ベットが並び白いカーテンで仕切られている。薬の匂いと白い部屋ですぐに連想したが少し違う。装飾や壁を見てもまるでお城だ。

 汗が止まらない。息も荒いし、きっと魘されていたのだろう。自分の手を見ると包帯が巻かれている。怪我をしていたのか。起き上がる気力がない。上半身だけでもと重い体を起こしてみた。


「いっ……!」


 何かがおかしい。体を見るが変なところは……


「何だこれ?」


 よく見ると血だらけの包帯が巻かれていたその先、右手右足、顔、身体の右側が無くなっている。


「僕の体が、一体何があったんだ。何だよこれ。片目が見えない。誰かいないのか?これどうやって……?あれ?僕は何を?」


心が引き裂かれそうになる。その中で気付いた。僕の記憶がないことを。

 奥の扉が開き、叫び声に気づいた白衣を着た女性が現れた。


「大丈夫。私に任せなさい。」


 そう言われて僕の治療が始まった。わけも分からず眠らされずに切ったり縫ったりして新しい体がつけられた。気絶しては起き、痛みでまた気絶するの繰り返し。僕にとっては拷問だった。


「絶対に抜け出してやる。こんなの耐えられない。」


暴れる僕を止めるため、地下牢に入れられた。大量の点滴に鎖で縛られ、身動きが取れない。逃げるのも絶望的だ。

 皆が寝静まった夜。痛みにも慣れ落ち着いたところに、白衣を着た男性が近寄ってきた。


「何しに来た。また僕の身体を。」


「上からの命令で、早く完成させて欲しいと言われてね。」


 ドスッと胸に差し込まれた。何かが流れ込み、身体中を巡った。注射器の中は黒い液体で、だからなのか目から黒い涙が流れ、赤い髪の色も黒く染っていく。息が出来ない。苦しい。痛い。自分の身体ではないようだ。点滴を引きちぎり、壁を殴る。頭が割れそうだ。


「君に原液を入れさせてもらった。死なないでくれよ。」


 そんな話は耳に入ってこなかった。体が勝手に動く。

 恨みでもあるかのように左手一本で、近くに居た警備の頭を掴み、壁に叩きつけた。頭は割れ血飛沫が上がり、即死した。壁は崩れ落ち外が見えた。ここから出られそうだ。


「待って!」


 騒ぎに駆けつけ女医が僕を止めた。目が覚めて一番に声をかけた女性だ。変わり果てた姿だったのか、問われた。


「君は……誰?」


「……先生。僕は俺ですよ。」




 これが俺が覚えている記憶の断片だ。正直あそこにいた事はほとんど覚えていない。いつの間にか外にいたんだ。夜の暗い森の中。全身血だらけになり、走り疲れ小川の近くで倒れ込んだ。赤く染った包帯を外しみると月の光とともに見えてきた。


「黒い……手。」


 僕の手は、鋭くとがった指先に甲には鱗がついていた。まるで悪魔のような手だった。


「これ。見たことがある。」


 顔を見るために小川の水面をのぞき込んだ。顔の半分が、悪魔になっていた。


「僕……俺は、堕ちたのか。」


 記憶が少し戻ってる。俺は神様だ。でももう戻れない。上界にも神にも。とにかく逃げよう。なるべく遠くに、人のいないところに。いつこの体が壊れて暴れだしてもおかしくない。だからまた走ることにした。



「もう……朝か。」


 いつの間にか朝日が昇りだしていた。もう走れない。ここで朽ち果ててもいいか。きっと誰かが上界の継承してくれる。ゆっくり目を閉じた。


「こんな所で何をしておるのじゃ?」


 誰かが話しかけてきた。話し方的に老人の様だが、やけに子供っぽい声だ。顔を上げるとそこには、手に山菜が入ったザルを抱えている、金髪で白ワンピースの幼女が立っていた。


「風邪を引くぞ。」


 この出会いが俺にとって新しい人生の始まりだった。

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