80話 『王と騎士の情報共有』
「では早速だが、シルド。私がお前をここに呼んだ理由を話すとしよう」
「はい、お願いします」
シルドがこうして王である人物に呼び出しを受けるというのはこれが初めてというわけでもなく何かがあった時には度々こうして呼び出されている。
「そうだな、まずはどこから話そうか……シルドよ。闇ギルド【魔石】、そしてその【魔石】のリーダーであるマクシスという男のことを覚えているか?」
「! ……はい、もちろんです! あの裏切り者のことを忘れられるはずがありません……!」
「そうか……」
王が口に出した『マクシス』という犯罪者の名をシルドははっきりと覚えている。
当然だ。
なぜならばマクシス……マクス・カーシーという男は元ニグルム騎士団に所属していた団員であり元ニグルム騎士団 副団長ーーシルドが副団長になる前の副団長ーーだった人物だからだ。
シルドもーーシルドが副団長になる前ーーよく城内でマクスを見かけた時があった。
騎士達が集まる城内の食堂でたまたま食事の時間が重なり一緒に食事をとった時もあった。
副団長だったマクスという男はシルドから見てもかなりの強さだった。
だからマクスの戦い方のいくつかをシルドも参考にしていたほどに。
シルドにとってマクスは尊敬できる人物だった。
そんな人物がニグルム騎士団を脱退、副団長という地位を捨てるという話を聞いた時のこと、マクスがその後闇ギルドを立ち上げたということ……そのどれもがシルドにとっては絶対に忘れられないものだった。
しかも最近はそんな闇ギルド【魔石】の活動は今まで以上に活発となっていたためシルドの中でマクスはいつしか尊敬できる人物から倒さなければならない人物に変わっていた。
「それで……一体何の話なのでしょうか? 闇ギルド【魔石】がまた何か問題を起こした……とかでしょうか?」
「いや違う……闇ギルド【魔石】の本拠地が見つかったのだ」
「そ、それは本当ですか!? なら話というのはその本拠地を強襲するための作戦を立案しろ……というものですか?」
シルドはつい椅子から立ち上がって驚く。
今までニグルム騎士団は闇ギルド【魔石】が起こす問題の多くは阻止してきた。
その動向を掴み、次に襲うであろう都市や街を予測して問題を早急に解決してきたが肝心の【魔石】の根城、本拠地は見つけることができていなかった。
それが見つかったのか、驚くのは仕方がないことだろう。
「いいや、違う」
「違う……?」
「あぁ、本拠地の強襲をニグルム騎士団に頼んでいるわけじゃない。シルド、お前にこの情報について教えておこうーー」
王のいつも以上に真剣な顔を見てシルドは息を呑む。
そして王が次に発した言葉にシルドは驚き以上……驚愕の声をは上げた。
「ーー闇ギルド【魔石】のリーダー、マクシスだが……。昨日、アフォレスト街の冒険者たちによって打倒、殺害された」
「……え……?」
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