49話 『他人の優しさを受けるのは甘え』
「銅貨3枚で注文できる食べ物……」
「お、おいモルス? そんな真剣な顔して何メニュー見てんだ?」
俺は一階のカウンター席に座り、料理のメニューが書かれた髪を手に持ち真剣にメニュー表を見る。
「フライドポテトかパン……か」
メニューに書いてある料理の中で銅貨3枚で注文できるものというのはかなり限られる。
銅貨3枚で注文できるのは二つしかない。
フライドポテトとパン。
どちらも腹を満たすには何か足りないようなものだ。
所持金が全くないからしょうがないこととはわかっているがそれでもお腹いっぱいに御飯を食べたいと思ってしまう。
「もしかして……金が全くないのか?」
「…………はい」
隣の席から声をかけてくる男の声にテンション低めに返事する。
「だったら……なんかメニューの一つぐらい奢ってやろうか?」
「!! 本当ですか!? ぜひお願い……はっ!」
男の言葉にすぐにテンションを高くした俺だったがすぐに今までのことを思い出した。
ルールに無料で宿屋に泊まらせてもらったこと。
アシュリーに料理を無料で食べさせてもらったこと。
ゴーグに依頼を手伝ってもらったこと。
どれもが誰かに助けてもらってばかりで他人の優しさに甘えた結果だ。
ここでまた誰かの優しさに甘えてはたしていいのだろうか?
いいやダメに決まっている。
「奢ってもらわないで大丈夫です!」
「え? でもーー」
「大丈夫です! お気持ちだけ頂戴します!」
店内に響く冒険者たちの声よりも大きな声で俺はそう言った。
「ガルシアさん! パン一つお願いします!」
「パンだけですか?」
「はい」
パンを注文する客は普通にたくさんいるがパンのみ単品で頼む客というのは珍しいらしくガルシアは驚いた顔をして俺を見る。
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
ガルシアは俺にそれだけ言ってカウンター席の奥の奥、厨房に入っていった。
☆☆
「……おかしいな」
ただ純粋にそう思った。
注文したのはパンだけなのだから普通こんなに持ってくるのに時間がかかるものだろうか?
もしかしたらこの宿屋はパンにこだわりがあって貯蔵していた日持ちのするパンじゃなくて、一からパンを作っているのだったらわかる。
数十分、いや数時間ぐらい時間がかかるだろう。
でも隣に座る男も俺と同じように思っているらしく「なんかあったのか?」と口にしているのでパンを一から作っているわけではないないようだ。
「……なんかいい匂いする」
ガルシアが厨房に入ってから二十分が経過していた。
荒くれ者とかならクレームの一つや二つ……いやきっと普通の人でもクレームの一つや二つぐらいいいそうなぐらいの時間が経った。
厨房からはパンからは絶対に発せられないいい匂いがする。
俺が注文したものではない料理を先に作っているのだろうか?
そんなことを考えていると厨房からガルシアが出来立てのステーキとサラダとパンが一つ乗った白い皿を手に出てきた。
どうやら考えていた通り違う人の注文したもののようだ……。
そう思った次の瞬間ガルシアが持っているその皿は俺が座っているカウンターに置かれた。
「…………へ?」
「お待たせしました。パンでございます」
「い、いやいやいや! これパンだけじゃなくてステーキとサラダまで付いてるじゃないですか! 俺が頼んだやつと違ーー」
「あぁ、これは間違って余分に作ってしまった料理でして……捨てるのももったいないのでぜひ食べてくださるとと嬉しいです」
「だ、ダメですよ! 俺が頼んだのはパンだけですし、ステーキとサラダの分のお金も払えませんし!」
「ですからこれは私が間違って作ってしまったものですので代金はとりません」
余分に作ったなんて絶対に嘘だ。
それは誰から見てもわかることだった。
これはガルシアの優しさだ。
パンしか注文できない俺はかわいそうと思っての行動だ。
だが俺はもう他人の優しさには甘えないとーー、
「よ、余分に作ってしまったんならしょうがないですね! じゃ、じゃあ遠慮なくいただきます」
「はい、そう言ってくださると私も助かります」
目の前の出来立ての、恐ろしいほどに食欲をそそる肉、ステーキを見てそう言ってしまった。
他人の優しさにはもう甘えない!
そんな俺の決意は目の前の美味しそうな料理によって簡単に壊れた……どれだけ脆い決意だったのだろうか……。
こうしてモルスはまた他人の優しさに甘えて美味しくご飯を食べた。
周りにいたものたちはそれを羨ましそうに見るのではなく「よかったな……」という荒くれ者たちが絶対に口にしないような言葉を口にする
モルスを見るその目は子供を見る親のものに似ていたがモルスはそんな視線に一切気が付かないままだった。
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