4話 『酒場での出会い』
「まだ昼か……なら暇だし下にある酒場を見にいくか……」
金ないけど。
ルールに案内された俺が泊まる部屋の構造はベッドが一つと机と椅子が置いてあって窓からは光が差しこんできていた。しっかりカーテンもついている窓だ。それに部屋の広さも一人だけ泊まるということを考えても十分なものだった。元の世界では俺の家、というか住処にしていたのはボロボロの廃墟だったのでこんなにしっかりと部屋を見るだけでつい感動してしまう。
感動したまま俺は部屋から出て階段を下りた。
一階からは宿屋に入った時から聞こえていた笑い声、騒ぎ声が聞こえる。
でも、その笑い声も騒ぎ声は決して不快なものではなくむしろ聞いていて楽しいものだった。一階から聞こえる声にそう思いながら俺は階段を下りきって酒場についた。
そこにはまだ昼なのにかなりのお客さんがおり、その半数以上の人が酒を飲んでいた。騒がしいのはいいが昼からこんなだらしなく酒を飲むのはどうかと思う。酒を飲んでいる人の中にはガタイのいい人や兜だけを外し鎧を着たままの人などがいた。
「うっ……」
(酒臭いな……酒場だから当たり前のことかもしれないけど)
一階にはすでに強烈な酒臭さが漂っていた。あまりの匂いにとっさに俺は自分の鼻をつまんだ。
それほどの酒臭さだった。
「お? お前はさっきルールの嬢ちゃんと一緒に来てたにいちゃんじゃねーか」
「ん?」
「こっちだよ、こっち」
「あ、こんにちは」
「よう、こんにちは!」
酒場にいた俺は後ろから声をかけられた。
振り返ると後ろのカウンター席から俺に向かって手を振っているおじさんがいた。どうやら他の人とは違ってあまり酔っていない様子だ。
「こっちにきてちょっと話さないか? 一人で飲んでいるのも退屈でな」
「あ、はい」
木製のジョッキに入った酒を一口飲んだおじさんはドンとジョッキをカウンターテーブルに置いて俺を隣の空いた席に座るよう言った。
特にたいした理由もなくその席に座り俺はおじさんと話すことになった。おじさんも他の酔っぱらいと同じくガタイがよく、茶色の革服、革鎧を着ていた。
☆☆
「にいちゃん、名前は?」
「モルスです。そういうおじさんは?」
「俺か? 俺の名はゴーグ。ただの冒険者だ」
「冒険者……?」
この異世界では初めて聞いた単語だ。
「ああ、冒険者だ。……ってもしかしてモルス、まさかあんた冒険者のことを知らないのか?」
「……はい」
冒険者……。
言葉通りの意味ならモンスターを討伐したりするゲームによくある職業みたいなもののことか?
「それは珍しいな。この世界で冒険者について知らないとはあんた結構な世間知らずみたいだな……よし、なら俺が冒険者について簡単に教えてしてやるよ」
「助かります……!」
どうやらこの世界にいる多くの人は親切ないい人のようだ。それともこれはたまたま俺が出会った人たちがいい人だというだけだろうか?
まぁとりあえずそんなことを考えるのは一旦やめてゴーグが教えてくれる冒険者についての話を聞くことにしよう。
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