45話 『酒場宿屋【ベオ】』
酒場宿屋……つまりはルレット夫妻の宿屋のように一階が酒場、というような宿屋なのだろう。
酒場兼宿屋【ベオ】が少しでもいい宿屋……過ごしやすいところであることを期待して歩く。
そしてある店の前で足を止めた。
その店こそが酒場宿屋【ベオ】だ。
入り口には両開きの大きなドアがあり、その横には酒場宿屋【ベオ】と書かれた木の看板がある。
字は汚い……というか書き殴って書いたような字だった。
(一体どんな宿屋なんだろ……)
そんな字で書かれた店の名前を見てふと考えた。
今更押し寄せてきた不安に俺はドアに手をかけたまま動きを止めて固まる。
酒場があるということはゴーグのような酔っ払いがたくさんいるのだろうか?
だとしたらやっぱりめちゃくちゃ絡まれるのか?
ひょっとしたらお金を盗られたりするのでは?
不安は尽きない。
「……何をビビってるんだ俺。しっかりしろ」
不安なことばかり考える自分自身にそう言ってドアを開け酒場宿屋【ベオ】の店内に俺は入った。
☆☆
「これで俺の5連勝だな」
「おかしいだろうが! てめぇ! イカサマしてんじゃねぇーだろーな!」
「お前の運がないだけだろ」
「てめぇ!」
「はっはっはっ! いいぞお前らもっとやれ!」
カラン、という鈴の音が店内に響き店内に入った俺が最初に聞いたのは怒鳴り声と笑い声。
いきなり聞いたその声に俺は驚いて肩を震わせた。
やばいところに来てしまったのかもしれない。
直感的にそう思った。
「お前ら、やかましい……黙れ」
次に店内に響いたのは低い声。
だがそれだけの言葉で先ほどまで騒いでいた人たちが黙った。
俺は声のした方に目を向ける。
声がした方にはカウンターが一つあり、その奥にスキンヘッドの仏頂面の男がいた。
「…………」
その顔が今までこの世界であった人の中で一番怖くて……人を殺した時がありそうな顔だったために俺も他の人たちのように黙ってしまう。
いや俺自身この店に来て一言も喋っていないけど閉じた口をさらに強く閉じる。
「いらっしゃいませ。ようこそ酒場宿屋【ベオ】に。申し訳ございません、うちに来る客はいつもこんな感じでうるさくて……」
「……はっ! あ、はい、大丈夫です!」
仏頂面の男が自分に喋りかけてきていることに気付いて俺は強く閉じていた口をすぐに開いた。
「私の名前はガルシア。酒場宿屋【ベオ】の店主です」
仏頂面だった顔をにこりと笑顔に変えて男、ガルシアは言った。
(あ、もしかしたらこの人、顔が怖いだけでいい人かもしれない……!)
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