43話 『転生神と死裁神』
「……」
「……ナトス。そろそろ機嫌なおしてくれない?」
「機嫌をなおす? なら今すぐあの人間の魂をこちらに持って来てください」
「それは彼を殺せってこと?」
死の檻にある真っ暗な空間でアマスは苦笑した。
そんなことはできない……と。
そんな言葉を含んだアマスの顔に赤い目をした黒髪の美少女、死の檻の管理者ナトスはジト目でアマスを見た。
「あなたならそんなことせずともあの人間の魂だけを取ることだって容易でしょう……」
「まるで僕以外は容易にできないみたいに言ってるけど君だってやろうと思えば簡単にできるだろう?」
「……あたりまえです」
「だったらなんで自分で彼の魂を回収しに行かないんだい?」
「それは……」
「死の檻での仕事が山ほどあるからそんなことをしている暇はない……そんなところかい?」
「わかっているならなおさらあなたが回収して来てください」
死の檻にくる魂は生前、誰かの心を痛め傷つけたような黒ずんだ、邪悪な魂のみだ。
誰も傷つけずに生涯を終える。
そんな綺麗な魂は非常に珍しい。
死んだ人間の魂は圧倒的に邪悪なものの方が多い。
そのため死の檻の管理者、最高責任者の死裁神ナトスの仕事も他の神に比べて圧倒的に多いものになる。
しかもその一つ一つの魂をナトスは丁寧に管理するのでなおさら仕事に時間がかかる。
だからナトスにはアマスが勝手に転生させた人間の魂を自分の力で回収しに行くことさえできない。
「だからやだよー。君どうせ彼の魂を連れて来たら問答無用で死の檻の中にぶち込むでしょ?」
「当然です。あの人間の魂は邪悪なものですから」
アマスが転生させた人間、モルスの魂は邪悪なものということは間違いない。
なにせ死の檻の『幽閉監獄』。
死の檻の中にある魂を閉じ込める場所としてはもっとも警備が厳重であり、与えられる苦しみ一番酷いものである場所に閉じ込められるはずだった魂だ。
邪悪でないはずがない。
「そういえばナトス……君、僕がこうしてここに来る前に何か面白いことしてたよね? なにあれ?」
「……なんのことですか?」
「君って本当に嘘つくの下手だよね……彼、モルスを殺そうとしてたことだよ」
「……バレていましたか」
「バレバレだよ。バレバレ」
アマスは宙にふわりと浮くとナトスに近づく。
「アフォレスト大森林は今日一日中雲ひとつない晴れだってアポロが言ってたのに急にくもりになってそこそこ強い魔物が現れるなんて……普通はあり得ないからね。彼を殺したい誰かの仕業だとすぐにわかったよ」
「あの人間は死にませんでしたがね……」
「そりゃそうさ。なんせ彼は元いた世界じゃ最強最悪の連続殺人鬼だからね」
アマスはにこりと笑う。
だがそれが偽の笑みというのはすぐにわかる。
アマスは口でこそ笑っているが目は笑っておらず、その目からは殺気すら感じた。
いつものアマスはのんびりとふわふわしたような神だ。
だからこそ、その殺気にナトスは息をのんだ。
「今度彼を殺そうとするときは一言僕に言ってよ……じゃないと彼、死んじゃうかもしれないだろ?」
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