42話 『自由依頼《フリークエスト》は悪くない』
「ではいつもの魔力回復ポーションと瞬間回復ポーション五本ずつで金貨十枚です」
「あぁ……」
ランスは皮袋から金貨十枚を取り出してソフィーに渡した。
「はい、確かに」
「…………」
「ランスさん……?」
「あ、いやなんでもない。ポーションを売ってくれていつも助かってるよ、またな」
「はいはいまた買いに来てくださいね〜」
元気よく手を振るソフィーに軽く手を振ってランスはポーション屋【フェア】を出た。
モルス・ディアスに対しての疑問を何一つ解けないまま。
☆☆
「なんだよ……レベル?って……」
客室に一人残された俺はソファーに座りながら頭を抱えてそう呟いた。
自分のレベルが知れると思ったらこれだ。
何が見た相手のレベルがわかるスキルだ。
まともに機能しない欠陥スキルじゃないか……!
レベル?ってなんだよ!?
強いか弱いかすらわからないなんて……。
もし自分のレベルが低かったなら上げようと思っただろう。
もし自分のレベルが高かったならこれからも頑張ろうと思っただろう。
(あのランスって人のスキルは欠陥スキル……覚えておこう)
ソファーから立ち上がって俺は客室を出た。そして店内にいるソフィーのもとに向かった。
「ソフィーさん、すいません。長く待たせちゃって。これ店主さんがなくした皮袋だと思います」
店主であるフェアナがなくした皮袋がこれ! とは言い切れないためそう言って見つけた皮袋をソフィーに手渡す。
「こ、これは間違いなくフェアナさんのなくした皮袋です! 見つけてくれたんですね! ありがとうございますモルスさん!」
「はは、見つけれてよかったです。これで依頼達成ですね……じゃあ俺はこれで」
普通の依頼なら報酬がもらえるがこれは自由依頼。
報酬金額も決められていない依頼だ。
そのため依頼を達成した後は組合に行って依頼達成の報告をする必要がない。
だから依頼達成後はすぐに依頼場所から立ち去るべきだろう。
「ちょ、ちょっと待ってください! お礼といってはなんですが……」
「?」
出入り口のドアに足を進めていた俺はソフィーの声に足を止めて後ろを振り返った。
「どうぞ……一本だけですが!」
「これは……!」
ソフィーさんはショーケースを開けて、その中から一本の小瓶……ポーションを取り出した。
小瓶の中には赤色の液体が入っている。
「自動回復ポーションです。一本、銀貨五枚とポーションのなかではかなり安価なポーションですが報酬として……どうぞ!」
「え? そ、そういうのって店主さんに言わず勝手に決めたらダメなんじゃーー」
「あ、それなら大丈夫です! フェアナさんがもし依頼を受けてくれた人がいたらその人にポーション一本、タダであげてもいいと言ってました!」
「そうなんですか? ……いやでもーー」
「遠慮とかいりませんから! はいどうぞ!」
そう言ってソフィーは無理やり俺にポーションを持たせてきた。
「……本当にもらっていいんですか? もらって」
「全然いいですよ! というかフェアナさんの部屋の中を綺麗に片付けてくれて、皮袋も見つけてくれたんですからポーション一本じゃ安いぐらいですよ!」
「そうですか……」
もらったポーションをジーンズのポケットに入れる。
「なら、ありがたくもらいますね」
「はい、皮袋を見つけてくださって本当にありがとうございました! ポーションが欲しくなったらぜひまた【フェア】にきてくださいね! モルスさんに売るときは安くしますから!」
「それソフィーさんが決めれる事じゃないでしょう……でもそうですね……また来ます!」
「はい!」
俺は報酬でポーションをもらいポーション屋を後にした。
☆☆
「自由依頼を受ける理由もあまりないって受付さんは言ってたけど……」
受付担当の青年の言葉を思い出しながら俺はどこに行くでもなくアフォレスト街を歩く。
自由依頼。
「案外メリットもあるんだな……!」
高価なポーションをタダでもらったうえに今度来た時には値引きしてくるらしいし、また新しい人と仲良くなれた……メリットだらけだ。
(自由依頼も悪くないな)
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