39話 『銅《カッパー》ランク冒険者モルス・ディアス』
「あ、いらっしゃいませ〜! ポーション屋【フェア】へようこそ!」
(さっきまでぼーっとしてたのに反応早いな……)
店内に入ったランスが最初に聞いたのは大声で、なぜか早口な女性の声だった。
その女性が誰かは知っている。
ソフィー、ポーション【フェア】で一年ほど前からポーション配達員をしている人物だ。
【フェア】にランスは週に一回ポーションを買いに来るため大体の従業員の顔と名前は把握している。
「相変わらず仕事をサボっていたみたいだなソフィー……」
「げっ……誰かと思ったらランスさんじゃないですか! 挨拶して損しました……」
「何だその反応は……しかも客に言っていいセリフじゃないぞそれ」
「それでランスさんは今日もポーション買いに来たんですか?」
(こいつ……何でクビにならないんだ?)
思いながらも理由はわかっていた。
それはソフィーがランス以外の客に対しては普通だから、逆に言えばランスにだけ塩対応だからだ。
それに加えこの店の店主が適当な人というのがソフィーがクビにならない理由だろう。
「あぁ、それもあるが今日は人を探しにきた。ソフィー、ここにモルスという男……が……」
ここにきた一番の目的。
モルス・ディアスが来ていないか聞こうとしたランスは途中で黙った。
そしてソフィーの後ろの店主の部屋と客室につながる廊下に立っているひとりの青年を見る。
「お前は……モルス・ディアス……だな……?」
青年、モルスの姿は組合にいた時に一度見たから間違えるはずはない。
しかも初めて会った時に足をかけられ派手に転ばされたのだからなおさらだ。
ランスの言葉を聞いたモルスは大きな声を上げ、ランスが予想もしていなかったことを口にした。
「組合であった上から目線の人だ!!」
「……」
あまりにも酷いセリフにランスはまた黙る。
そして今日で二度目の言葉を言った。
「何だその反応は…………!?」
☆☆
(や、やばい! つい思ってたことが!)
店内に入ってきた客……組合で一度会った人に俺はつい内心で思っていたことを口に出してしまった。
彼に対してのイメージは、金髪イケメン、上から目線ぐらいしかない。
一度しか会った時がないためイメージが少ないのは当たり前だろうか?
「す、すいません! 今の言葉はつい口から出ちゃったというか何というか……」
なんとか言い訳を探す。
だが言い訳探し終える前にすぐに彼から言葉が飛んできた。
「上から目線の人じゃない……ランスだ」
「ランスさん……ですか?」
「そうだ。……お前はモルス・ディアスだな?」
二度目の彼、ランスからの質問に俺は一つ頷く。
「はい、そうです」
「そうか……僕はお前に会うためにここにきた」
「? 俺に?」
なぜ?
ランスが俺に会いにきた理由がさっぱりわからない。
もしかして初めて会った時のことを恨んでて「謝罪しろ」とかだろうか?
俺は首を傾げる。
すると空気を読んで黙っていたソフィーが口を開いた。
「モルスさんってランスさんのお知り合いだったんですか?」
「いやそんなことは全然ないです」
「そうなんですか? ……えっと……客室使います?」
「あぁ、使っていいなら使わせてもらおう」
「え……?」
いったい客室で俺はランスと何を話さなければならないんだ……。
けっこうな不安を覚えながら俺は困惑した。
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