38話 『自由依頼《フリークエスト》達成とお客様』
「……これで……136冊目……」
一人で呟きながら俺は部屋にある四つの本棚のうちの一つ、三つ目の本棚の中に入っている本を取る。
最初から本棚に入っていた本なんて記憶していなかったので片っ端から本棚に入っていた本を取り、中に皮袋がないか確認。
こんなことを延々と繰り返していた俺。
正直すごい疲れた。
よく考えてほしい。
この部屋にある本はなぜか全部が全部辞典並みに重い本だらけ。
そんな重さの本は手に取るだけでも疲れる。
本を取り出し、手に取り、本棚に戻す。
こんな動作をするだけで手と腕が疲れるのだ。
一つ目の本棚の時はしっかりと一冊一冊丁寧に確認した。
二つ目の本棚の時には本を取り、中を確認するという簡単な作業すら面倒くさくなって二冊同時に取って中を確認した。
三つ目の本棚の時には本棚から本を手に取っただけで中にものが入っているか入ってないかを本の重量だけでわかるようになった。
多分ここにある本の重量がほぼ同じ、辞典のような分厚さの本のためだ。
最初からそんなことができれば大して疲れもしなかった……だろう。
だがそんな苦痛でしかない作業もやっと終わりを告げた。
「……これは……! か、皮袋!?」
本の中、最後のページを確認するとそこには焦げ茶色の袋が挟んであった。
手に取って軽く振ってみると中から、チャリン、という金属音がした。
間違いなくこれがなくした皮袋なのだろう。
「や、やっと見つかった! 探した甲斐があった!」
喜びと謎の達成感に俺は震える。
できればこんな作業はもう二度としたくない。
……というかなんで皮袋をこんな本の中に挟んだままなくしたのだろうか?
「……なんだこれ……?」
本を本棚に戻そうとした時、皮袋が挟んであった最後のページから一枚の紙切れが落ちた。
床に落ちた紙切れを拾い見る。
紙切れには小さな字で『この本の続き買う!』と書いてあった。
(……つまりはこの本を読んで続きを買おうと決めて本に皮袋を挟んだのか……そしてなぜかそのまま本棚の中に入れたと……いやなんでだ!?)
納得できそうで一切できない俺は紙切れを机の上に置いて、皮袋だけを手に持つ。
(とりあえず皮袋を見つけたしソフィーさんに渡しに行くか……忘れかけてたけどこれ依頼なんだよな……)
俺には途中から、ちょっと優しめの罰ゲームにしか感じられなかった。
皮袋を持ち俺は部屋を後にしてソフィーがいる店内に歩き出した。
店内に入るとソフィーはショーケースの近くで暇そうにしている。
仕事しろよ……いやお客さんがいないからすることないのか? いやそれでも……仕事しろよ……!
先ほどの作業で少しばかりの苛立ちを覚えていた俺は内心で、心の底から思った。
「ソフィーさん、皮袋見つかりーー」
ソフィーに声をかけようとした時に店のドアが開いた。
俺が入ってきた時と同じドアベルの音が店内に響く。
「あ、いらっしゃいませ〜! ポーション屋【フェア】へようこそ!」
ドアベルの音に気付きソフィーは慌てて、早口で決められたようなセリフを言い、入ってきた客を迎えた。
(……あれ? この人どっかで見たような……)
店に入ってきた客を見るとなぜか俺はそう思った。
金髪……それにあの真っ白な鎧……。
……あっ……。
(前に、組合で冒険者登録した時に話しかけてきた上から目線の人だ!)
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