2話 『アフォレスト街での出会い』
看板に書いてある通り右に向かって歩き出して数分後、街についた。
そして街についてわかったことがある。
まず、この街がアフォレスト街であっているということ。それは入り口に立てかけてあった看板を見てすぐにわかった。とりあえずアフォレスト街にはちゃんと来れたらしい。
だけど……だけど……!
「ここどこだよ……ここどこだよ!」
俺は街に入ってものの数分で道に迷った。案外この街が広いと気付かずにはしゃいだのが原因だろう。だけど目の前にファンタジー世界によくあるような石畳の道に中世風の建物の数々が広がっていたら……
ーー俺じゃなくてもはしゃぐ奴はいると思う。
はしゃいだ結果、俺は街中で道に迷い、今俺は裏路地に立っていた。自分がどの方向から来たのかも定かではない。正直「俺馬鹿すぎ!」とはしゃいだ数分前の自分自身に言ってやりたいほどには自分の行動を悔いていた。
(とりあえずここから出ないとな……異世界来て早々に街で道に迷うとかやばすぎるし……)
まずはこの裏路地から出ようと踵を返して表に俺は出ようとした。だが次の瞬間、
「だ、誰か! 助けてください! 誰か!」
「!? 悲鳴!?」
そんな元の世界では何度も聞いたことのある悲鳴、異世界では初めて聞こえたその悲鳴に俺はすぐに裏路地から出て悲鳴がした方に目を向ける。
目を向けた先には茶髪でそれなりに長身の女性とボロボロなフードで顔を完全に隠しているいかにも怪しいやつがいた。二人をお互いに何かの袋をとりあっている……というか確実に女性が怪しいやつから何かを盗られそうになっている事件現場だ。
(異世界でもやっぱいるよなそういうやつ……)
そんなことを思いながら俺は50メートルもない距離を埋めようと地面を蹴って走った。そして、
「とりあえず盗ったもの、返せ!」
「!? がはっ!!」
思いっきり怪しいやつの頭部めがけて膝蹴りをした。なかなかに威力があったのか怪しいやつは道に派手に倒れて意識を失う。手からは女性から無理矢理奪い盗ったのだろう何かの袋を落とした。
(元いた世界だったら念のために殺すけど……今は)
それより先に強盗にあっていた女性を心配するべきだろう、常識的に考えて。
俺は落ちた袋を拾って驚いている女性に手渡した。
「えっと……大丈夫ですか? ケガは?」
「あ、だ、大丈夫です! 私を助けてくれて本当にありがとうございます!」
俺が手を差し伸べれば地面に尻餅をついていた彼女は俺の手をしっかり掴んで立ち上がってから少し涙目になりながら俺に感謝の言葉を口にして頭を下げた。元の世界でそんな言葉をかけられたことのなかった俺は内心どういう反応をすればいいかまったくわからなくて、
「そ、そうか。ならよかったです。じゃあ俺はこれで……」
それだけ言って俺は彼女の前から去ろうとした。
「そ、そんな命の恩人になにも返さないなんて……ぜひ私に恩返しさせてください! 私の名前はルールです。あなたは?」
「……モルス。モルス・ディアスです」
だが彼女、ルールは俺のことを命の恩人だと言って手を掴んできた。ただ単に俺は当たり前のことをしただけだ。
強盗にあっていた人を見つけて「助けて」と言われたら誰だって助けるだろう。
……そもそもルールは何を盗られそうになっていたんだ?
そう思いルールが持つ小さな袋をみれば中からはチャリンという金属と金属がぶつかる音がした。
(なるほど金を盗られそうになっていたのか)
「モルスさんですね? ならまず恩返しの一つとして私が働いている宿屋まで案内します! もちろんお金はとりません!」
「え、え?」
ルールは義理堅い人らしく何が何でも俺に恩返ししたいらしい。俺の言葉を聞かずルールは俺の腕を掴んで走り出した。ルールが指差す方向にはこの街の建築物としてはあまり見ない木造の建物が建っていた。
(案外強引な人だな……この人)
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