13話 『銅《カッパー》ランク冒険者』
「なるほどな。安全な薬草採取か少し危険性がある魔物討伐……たしかに昨日冒険者になったばかりのあんたにはなかなかに難しい二択だな」
「はい……」
二つの依頼についての話を聞いたゴーグは腕を組んで、ふむ……と思案してから口を開いた。
「ならどっちとも受ければいいんじゃないか?」
「え? そんなことできるんですか!?」
「はっはっはっ、そりゃ同時に依頼を受けることは可能だ。それにモルス、今あんたが悩んでたこの二つの依頼に書いてあるビギナル草とリトルゴブリンだがこの街近辺にあるアフォレスト大森林に行けばどちらの依頼も一緒に達成できるぞ」
「! まじですか!?」
二つとも受ける……か。
その考えはなかったな。
でもはじめての仕事で依頼を二つ受けるって……不安しかないんだけど?
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だ。俺もこの依頼二つ、あんたのはじめての仕事の手伝いをしてやるからよ」
「(不安が顔に出てたか)……いいんですか?」
「おう。酒場で冒険者のことを教えて、その教えた相手が冒険者になって早々死んだりなんかしたら寝覚めが悪いんでな」
ゴーグは俺の肩を優しくたたきながらニッと笑った。
「じゃあまず依頼を受けるか」
「はい、わかりました」
俺はボードに張り出せれていた二枚の紙を剥がして手に取り受付カウンターに向かう。それをカウンターにのせて「お願いします」とだけ言った。
「ギルドカードはお持ちですか?」
「はい、えっと、これですよね?」
「はい確認させていただきますね」
ジーンズの左ポケットからギルドカードを取り出して受付嬢に手渡した。受付嬢は受け取ったギルドカードにすぐ目を通して俺にギルドカードを返してくる。
「確認しました。銅ランク冒険者、モルス・ディアスさんですね?」
「は、はい……」
組合内にいる他の人たちにも聞こえるような大きな声で受付嬢はそう俺に確認してきた。それと同時に周囲にいた何人かの冒険者たちからバカにしたような笑い声が上がる。
銅ランク、最低ランクと聞いて俺をバカにしたものたちだ。だがそれに対して俺は何も口にしない。新人なんてどこの世界でも多分こんなものだろう。新人の時から周りの人にちやほやされているなんて異常だし、これが普通なのだ。……少し腹が立った。
「銅ランクの依頼を二つ同時に受ける……ギルドカードを見ればわかりますがモルスさんは今回がはじめての仕事ですよね? どちらか一つずつ受けた方が安全だと思うのですが……」
「で、ですよね……でも二つとも同時に受けたいんです。だからーー」
「やめとけやめとけ!怪我する前に子供はとっとと帰れよ〜!」
「そうだ、ここはお前みたいなヒョロヒョロ男が来るところじゃねぇーぞ!」
「銅ランク冒険者なんざゴミだゴミ! さっさと消えろ!」
「…………」
俺が受付嬢としゃべっている途中にまた邪魔な声が聞こえてきた。
誰が子供だ。これでも18歳だ!
それにヒョロヒョロが冒険者組合に来たらだめなんてルールないだろ!
銅ランク冒険者がゴミって……他の銅ランクの人に謝れ!
思いながら俺は無視すると決める。
だが俺の隣に立っていた人、ゴーグは違った。
☆☆
「さっきからうるせーんだよクソどもが!」
「ひっ!?」
「!? な、なんだっ!?」
ゴーグは受付カウンターを強く叩き、組合内に響くほどの大きな怒鳴り声をあげた。
その怒鳴り声に今さっきモルスをバカにして笑っていた冒険者の男たちが怯える。
「こいつが最低ランクでヒョロヒョロな子供冒険者だと? ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!」
「! や、やめ……!」
モルスをバカにした男の一人に歩み寄ったゴーグは思いっきり男の胸ぐらを片手で掴み軽々と持ち上げた。男の一人はさらに怯えた様子で声を出す。
「銅ランクの冒険者だからといってお前らがモルスを笑っていい理由にはならねー。そもそも銅ランク冒険者をゴミというならお前らだって最初はそのゴミだったじゃねーか」
ゴーグは男の胸ぐらを掴む手にさらに力を入れる。男は苦しそうに悲鳴を漏らした。
「た、助け……!!」
息が苦しく今にも意識を失いそうな男。
そんな男を無視してゴーグはさらに手に力を、
「ゴーグさん! 早くその人離してあげてください! 死んじゃいますって!」
「……すまんな。俺らしくもない、少し暑くなっちまった」
入れる前にかかったモルスの声に力を緩めて男を離した。
「俺のためにこの人たちに怒ってくれるのは嬉しいですけど、それでゴーグさんが人殺しになる必要なんてありませんよ」
モルスは言いながら微笑んだ。
☆☆
慌てて俺は男を殺しそうになっているゴーグに声をかけた。
「……すまんな。俺らしくもない、少し暑くなっちまった」
「俺のためにこの人たちに怒ってくれるのは嬉しいですけど、それでゴーグさんが人殺しになる必要なんてありませんよ」
俺みたいな元殺人鬼のためにゴーグのような優しい、いい人が人を殺し、手を汚すなどあってはならない。俺は「自分は大丈夫だから」という風に微笑んでみせた。
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