イチ
何を期待したって、何を望んだって。
どうせ何も叶いやしない。
何を信じても裏切られるだけ。
高々15歳の高一のガキが何知ったかぶってんだと大人には思われるだろう。
しかし、それをいうならば聞いてほしい。
不幸自慢にもとれるだろうが、俺の過去話は結構暗い。
小一で両親が離婚。
母親が出ていったため、祖父母と父母、俺の5人暮らしだった宮地家は4人となった。
祖父母はだいぶ歳でもう家事があまりできず、父は『男は家事なんてしないもの』という世代の人だから当然できやしない、どころかする気もない。となると、必然的に俺の方にその重荷はのしかかる。
更にだ。それ以来俺はいじめられ始めた。最初の頃は「母無し子」「落ちぶれた家族」だなんて軽いもので済んでいたものの、次第に重くなっていき、「キモい」「うざい」「死ね」なんて言われ始めて階段から突き飛ばされたり傘をズタボロに切り裂かれててびしょ濡れで帰宅したり、まあいろいろあった。それがエスカレートしまくりながら中二まで続いた。しかしその中にも味方はいた。たった1人、だがだからこそ信用しきっていた。………裏切られた。俺を深く傷つけるために味方のふりをしていたらしい。
中三の時、転校した。
その頃すでに、俺の精神はズタボロだった。
転校した先の中学は、前の中学と比べるととても大きなものだった。当然人も多い。
笑いあっている人たちを見ると、俺が笑われているように感じた。
偶然当たってしまっただけなのに、狙って俺に当たってきたように感じた。
誰も彼もが敵に見えた。
「お前、なんかすごいイラっとするよなー」
ただの冗談のその言葉が、俺の心を壊す決定打となった。
どこにいったって俺は必要とされない。
家事と並行して勉強も頑張った。部活動にも入らずに趣味の時間も1人の時間もとらずに。学年一位を取っても何もかもで賞状をもらっても、結局皆が見るのは外面の俺だった。
俺は皆の中では『完璧人間』となっていたようで、逆に遠巻きに見られるようになった。近づいてくるのも、大抵俺の外面のうちのどれか狙い。誰も俺自身を見ようとはしない。誰かが言った「強いは孤独」というのは、案外本当らしいとこの身をもって経験した。
じゃあ俺はなぜ生きている?
なぜ生まれてきた。
なぜ首に添えた包丁を引けない。
なぜ泣きたいのに泣くことができない。
なぜ皆を恨めない。
なぜ。
なぜ。
なぜ?
もう嫌だ。何もしたくない。
死んでしまいたい。
もちろん俺だって、悪いことばかりだったわけじゃないし、俺より苦しんでいる誰かがいるのも知っている。だが、だから何だ?俺より苦しんでいる『誰か』がいるとして、『誰か』は他人だ。俺じゃない。事実として知っていても、俺のこの苦痛は変わらない。ならばどうしろっていうんだよ?
人生が嫌になるのもうなずけるだろう?なあ?