break daily life
1.normal life
学校中がチャイムの音で響きわたり、今日も学校の終わりを告げる。
「おーい透、カラオケ行こーぜ!」
友人の涼太が勢いよく話しかけてくる。
「ああ」
下駄箱には僕達を待っていたいつもの3人がいた。
「はやくしろよ~!」
少しチャラい優がせかす。
二人の女子はいつものようにファッションだのなんだのと話している。片方の女子は幼なじみで名前は夢。もう片方は由美誰とでも仲良くなれそうなすごく明るい人だ。
この五人は高校一年生から一緒で、今は高校二年生。涼太は野球部に所属しているが、試合でのけががトラウマになり、もう練習には行っていない。退部届けをだすか迷っているらしい。他の四人は部活には所属していない。だから皆暇で毎日のように遊んでいる。
本当に普通の高校生活......まぁそれなりに楽しいが、本当にこのままでいいのだろうか......
2.different world
カラオケも終わり、帰り道。木の上から猫の鳴き声が聞こえた。
「ったく、しょうがねぇな」
透は昔から変な正義感を持っている。まぁ、アニメや漫画の影響なのだが...
「ほらよっ......あ!」
「いてててて......」
猫を抱き上げたその瞬間、足を滑らして落ちてしまったようだ。幸いけがは無さそうだったが落ちている時に変な感覚を覚えた。急に激しい頭痛に襲われ、体がフワッと浮いているような感覚だった。
「あ、あれ、猫は?」
気がついたらもう猫はいなくなっていた。そして何かが頭に引っかかった。
――――俺、こんなところにいたっけ?
確かに俺は家の前の木で猫を助けようとしてたはずなの に......?
周りを見渡すと何かの会社の仕事場らしかった。机があり、パソコンがあり、知らない機材もたくさんあった。だが、一つおかしい。ここにいるのも十分おかしいが、それよりもまず出口が無いのだ。窓はあるが高層ビルのけっこう上の階らしく、そこから出るのは不可能に等しかった。窓から見えるのは日本には絶対に無さそうなス○イツリーより断然高いタワーがあった。
「ここは......日本じゃない!?」
そして、思い出したかのように急いだスマホを開いてみた。wifiは通っているらしいが、ロックがかかっている。それよりも、位置情報がおかしい。位置情報が家の前になったままなのだ。
――――とにかく、ここから出ないとなにもわからないな......
ここが仕事場な以上どこからか出入りする方法があるは ずなんだ。
まず、気になったのは目の前にある大きな黒い機材だった。人が一人入れるくらいのカプセルのような形をしたもので、外側にはボタンが一つついている。ワープでもするのかと少し期待をしてしまうようなものだった。
「ガチャ」
ボタンを押すとカプセルが開き、電気がついた。中にはモニターと指紋認証のようなものがあり、モニターにはパスワード及び指紋認証をしてください、と書かれている。中に入ってみると自動で扉が閉まった。これは無理そうだと思い、外に出ようとした時はもう遅かった。扉が開けられないのだ。しょうがなく、パスワードを入力してみるが案の定開かなかったが、五回目のパスワード入力を終えた時、警告音がなり響き、扉が開いた。この機材の周りを武装した人たちが囲んでいる。部屋もさっきとは全く違う。やはりワープをするための装置だったのだ。
「あ、あの......」
「なんだ?なぜここにいる?答えろ!!」
武装した人で一番偉そうな人が強い口調で聞いてくる。
――――......?日本語で話している......?ということはここは日本なのか?っていうかこれは現実なのか?夢なのかもしれない。きっとそうだ。
「早く答えろ!!」
そう言って胸ぐらを掴んできた。
――――あれ?苦しい。夢って苦しいとか痛いって感覚無いんじ ゃないっけ?まさか、本当にこれ現実?!
そう思うとすぐに今までのことを話した。
「それを俺に信じろってか?なんで木から落ちてここに来るんだよ?さっぱり理解できねえ」
――――そりゃそうだよな。俺も理解できてないからな。
「けど、本当なんです。信じてください。」
「それは無理な話だ。おい、こいつをあそこにぶちこんでおけ。」
そう言うと、ワープの機械の設定をして俺を乗せた。扉が閉まり、すぐにまた開く。今度の部屋は薄暗く、周りには牢屋がある。降りるとそこにも武装した人がいて、すぐに牢屋に入れられた。そしてしばらくするとさっきの偉そうな人がきた。
「おい、おまえ荷物を見せろ」
抵抗するだけ無駄だということがわかっていたので素直に見せた。バックの中に入っていたのは財布とスマホくらいだった。まず、武装した人は財布の中身を確認し始めた。そしてお金を見て、首を傾げていた。
「これはなんだ?」
「お金です。」
「どこの国のだ?」
「日本です。」
そして武装した人は少し黙りこんで考えていた。そして次はスマホを見始めた。
「おまえはいつの時代の人だ?」
「いや、いつって言われたって......」
「じゃあ今は何年だ?」
「2○○○年です。」
そしてまたしても黙りこんだ。
「もしかして......」
少したったあとそう言って去っていった。
――――俺、どうなるんだろ......
アニメや漫画だけだと思っていたようなこんな非現実的なことが実際に起こるとワクワクなんてしない。楽しめるのは第三者だけなんだとわかった。今あるのは不安と孤独だけ。普通がやっぱり一番なんだとこんなに思ったことはない。「早く元に戻らせてください。」今は本当に神頼みしかない。
3.parallel
あれから何時間たったのだろう。いまだに人の来る気配がまるでない。もう俺一生ここにいるのかもとか考えてしまいそうだ。
「はぁ......」
ため息をついたとき急に激しい頭痛に襲われた。それはまるで木から落ちた時のように。そして一瞬家の前の景色が見え、そしてすぐにさっきより激しい頭痛がまた襲い、そこで意識がとぎれた。
目が覚めたら研究室の様なところにいた。また違う世界にでもとばされたのかとも思ったが、どうやらさっきいたところと同じようだ。目の前にあの「偉そうな人」がいたからだ。ただ、今その人はすごく小さく見える。もっと偉い人でもいるのか?そんなことを考えているうちに俺が起きたことに気がついたらしい。
「先ほどはすまなかった」
第一声でそんな言葉が来るとは予想できず、驚きの表情が隠せなかった。
「え、ええ?! いや、そんなにいきなりどうしたんですか?」
「お前が言っていたことは本当だったらしいな。まさかあっちの世界から来ていたとは......」
......?!
「え?あっちの世界ってことは、ここは異世界ってことですか?」
まあ、異世界なんて信じていないのだがここではすぐにその言葉がでてきた。
「異世界っていうかパラレルワールドってやつだ」
パラレルワールドって言葉はアニメや漫画で聞きなれていたのですぐに理解をする事はできたが、状況はまだ理解できていなかった。そもそもなんでこっちの世界にこれたのだろうか?
「どうしてそれがわかったのですか?」
「そりゃこっちの世界はパラレルワールドを行き来できるし、タイムトラベルだってできるからな。言っても信じないかもしんないがここはパラレルワールドでも上位、ほとんどの選択で良い方にいったときの世界で、けっこう技術が発達してるんだ。そんで、お前が持っていた金を調べたのさ。」
「......?こっちからは行き来できるとして、俺のいた世界からはなんでこれたのでしょうか?」
「それはこいつのせいだ」
少しうしろで研究をしていた女の人がつれてこられた。
「あ、すみませーん。さっきは助けてもらっちゃって」
女の人が陽気に話してくる。
――――俺が助けた...? !?
「あの~もしかして、木の上にいた......」
「うん!あの猫だよー」
「本当ですか!?動物にもなれるのですか?」
「うん!その世界に実在しないものにはね。」
「え!?猫はあっちの世界にもいましたけど......」
「あー、そういうことじゃなくてね、え~っと」
「だから、おまえがいない世界だったらおまえになれるってことだ」
あの偉そうな人が説明してくれた。
「そ、そういうこと~!」
「けど、なんでですか?」
「う~んとね~、おんなじ人が二人いるとあとに来た方は地球が排除しようとするからだよ~!」
「すみません、話を戻すようですが......」
「あ~!どうして来れたのかだっけ?それはね~落ちそうになったからこっちの世界に戻ろうとして~君がついてきちゃったわけ!まぁ結局落ちたあとにワープしたけど......」
「すみませんでした......けど、あの部屋にいなかったですよね?」
「あ~それは、この前開発したリストバンド型の小型ワープ機でビューンとね!君に気がつかずに行っちゃったわけ。あと、私たちにも名前があるから名前で呼んでね!私が梨花で、あいつが剛士だよ~!よろしく!」
「俺は透っていいます。よろしくお願いします」
そう言うとなんか今まで悩んでたことが少し理解できて気が楽になった。
しかし、次の瞬間またあの頭痛が襲って来た。
「......っ!!!!」
そしてまたもや意識がとんだ。
気がつくともうさっきから二時間ほどたっていた。
「あ!気がついた?よかった~!あと、君の気絶の原因調べといたよ!え~とね、結論からいうと君のことを地球が排除しようとしてるからだよ。」
「え!?じゃあこの世界に俺は......」
「そう!二人いるの!!」
「それなんだが、本当だったら一刻もはやくあっちの世界に帰ってほしいのだが...少し問題があってな......」
「......?問題ってなんですか?」
「まだ理由はわからんが、パラレルワールドの境界線が歪んでいてな......あっちの世界でのおまえの存在が消えてしまったようなんだ......」
「!?じゃあ俺はどうすれば......」
「すまないが、俺たちの研究が終わるまでこっちの世界で違う人間の姿で過ごしてくれないか?」
「マジですか......」
もう、驚きで敬語も使えなかった。
こうして俺の並行世界での生活が始まった。