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少年Z  作者: 髙田田
五月・中
93/123

・閑話休題 川上美冬の憂鬱(参考データ)

 米・本編ではありません。作中の情景を楽しくイメージするための資料です。


 正体不明の粘菌Zくんですが、そんなZくんについて補足しておきたいと思います。

 Zくんの感染条件は二つ。萌芽した状態で直接体内に感染させられる経口感染。ガブリンチョ。

 もう一つは人間の肺胞などに付着した胞子が萌芽して、体内から感染させられる空気感染の二通りです。

 粘菌状態のゾンビ汁と、胞子状態のゾンビ種の二系統ですね。

 さらに補足ですが、ゾンビ汁とゾンビ種は、耐性が違います。

 ゾンビ種はかなりしつこい頑固な子、カビキラーを使わないと殺せないでしょう。


 本文中では死体が~と書かれていますが、これは作中の人物達の比喩表現です。

 たとえ心肺が停止しても人体の細胞自身は生き続け、肺胞は酸素と二酸化炭素の交換を続けます。

 そして、ある程度の酸素濃度を切ると萌芽、一気に全身を粘菌Zが汚染します。


 ですから正確には心肺停止の瀕死や仮死、昏睡状態からZになると言ったところです。

 子供がふざけて息の止めっこ勝負をしていたら、いきなりZに……それは痛ましい事故ですね。

 シェルター内部では人間が気絶する程度に酸素濃度を下げて~と、ありましたが、うっかりすると全員Zです。


 なので、本当に自殺したいのであればギロチン台が最も適した自殺装置になります。

 気管の胞子が萌芽する前に頭が体とお別れできますから。

 あばよ、Z形のとっつぁん!! ザシュッ!! ボトッ!!


 そんな粘菌Zくんですが、煮れば食えます。水に戻した食感は、キクラゲでしょうか?

 内部の胞子も胃酸で消化されますから、上手くいけば世界の食糧事情が一変です。

 少し生の方が良いんだよ。なんて食通ぶってるとZになりかねませんけどね?


 彼等が何処からエネルギーと質量を得ているのか、これは内緒の秘密だよ。

 きっとゾンビ界からのエネルギーを受け取っているに違いない。


 ◆  ◆


 作中の民間人の意識では一年間、Z=ゾンビ。こんな意識でした。

 主にロメロさんのためです。あの理性を取り戻す動画が流されるまではZ=ゾンビでした。


 でも、頭のよろしい方々は、

『は? 死体が動くわけないだろ? キミたちさぁ科学って知ってる? 義務教育卒業した?』

 と、このように判断しておりました。人間を狂わせる『何か』があるとだけは断定したわけです。

 念のため捕獲したZを検査しても脳波が検知されたため、死者ではないと判断されました。


 そして完成したZくんを守る最強の盾。それは人権という名の盾です。

 総理大臣様がZくん皆殺し命令を出しても、最高裁がお前それ違憲どころじゃねぇぞ!!

 と命令の差し戻しをしてくださるわけですね。そりゃあ、自衛隊もろくに戦えません。

 だから、たかだか徒手空拳のZくんに銃を持った自衛隊が勝てないんですね。


 機動隊の皆さんは暴徒鎮圧の名の下に、日々のZ解体作業、ご苦労様です。

 残り一億人ほどですが、是非ともお相手のほどよろしくお願いします。


 作中にあまり出てこない海上自衛隊、航空自衛隊の皆さんは、日本のEEZ、排他的経済水域の防衛に努めております。

 難民船か工作船かZ船かもしれない流木を相手に発砲する訓練に勤しんでおります。

 映像記録? ちょっと装置に不具合が……。海難信号? ちょっとアンテナの調子が……。

 全弾命中だけなら誤射かもしれません。


 ◆  ◆


 後藤の人がなかなか帰ってくれなかった理由ですが、任務には期限というものがあるからです。

 一週間、関東圏を偵察してこいと言われれば一週間滞在しないといけません。

 一ヶ月、関東圏を偵察してこいと言われれば一ヶ月滞在しないといけません。

 その辺が、組織人ではない京也くんには解らなかったんですね。奴は小卒だし。


 イジメれば帰るだろう。そう、思い込んじゃった。

 実際は、帰りたくても帰れないが正解でした。


 そもそも、任務が関東圏の偵察に摩り替わったこと自身を、京也くんの視点では知りません。

 沙耶ちゃんを助けに来た。なら、もう助かったんだし帰れよとずっと思ってました。

 もしも帰れないことを知っていたなら、毎日三食が45倍だったのに。

 女帝と世紀末覇王が君臨する地獄が待っていたのに、とても残念です。

 日々、男性を除いた上での大宴会が開かれていたことでしょう。

 可哀想なので、北沢さんは含みます。本当に泣いちゃうから。


 期限一杯までは滞在しますし、期限が切れたなら滞在できません。

 勝手に帰っても、勝手に帰らなくても始末書ものです。一週間の出張は、一週間です。

 今回は、少々特別な事情として大量殺人の容疑者、田辺京也くんを北海道に送り届けることになりました。

 ですが、彼等自身の任務は継続中です。ただ、ヘリも無しにどこをどう偵察しろというのでしょう?

 パイロットの北沢さん、殺人容疑の田辺京也くん、それを逮捕して護送する後藤さん。

 男が三人だけの色気の無い北への旅路ですが、どうなりますことやら?

 吉村くんと保科くんが女性陣の怒りの前に。毎日45倍かな? それとも断食かな?

 ロクマルと言う屋根のない曇天の星空の下、雨に怯えながらの野宿くらいで済めば良い所でしょう。

 あるいは、ジョナサンをただ焼いて食う、そんな野生の日々か。――――可哀想に。


 ◆  ◆


 沙耶ちゃんを含めた民間人の八名ですが、実は皆で扱いに困っています。


 滑走路組では、扶養義務ないし?

 自衛隊組では、まだ帰れないし……。

 こんな具合の扱いです。悲しいけど無力な民間人。

 勝手に自活して。と、放り出しても良いわけで、世紀末社会ならではの悩みです。

 最終的には、道端で拾いました!! で、佐渡島に連れ帰ればいいんですけどね。

 それまでの時間が……。


 不自由はさせないが自由も与えられない。

 銃器や刃物といったものには絶対に触れさせない。

 食料等も毒を含ませられる恐れがあるため、絶対に触れさせない。

 世田谷でアザミさんが受けた待遇と、ほぼ同等の状態だとでも思ってください。


 当の民間人は、防衛省からの地続き、一年前の人間の感覚なのもややこしい。

 連れ出された。また保護された。でも、お客様かと言われればそうでもない。

 Zの恐怖を身に染みて知っているかといえば、シェルター組なので知らない。

 まだ、世紀末社会に慣れてない人々です。可哀想と言えば可哀想な人達なんですよ。


 犬に牙を剥かれて追い掛け回されなきゃ、野犬の怖さ、解りませんからね。

 民間人の皆様方、一年遅れの世紀末ライフのスタートを頑張ってくださいませ。

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