・閑話休題 エリカ=ハイデルマンの憂鬱(参考データ)
米・本編ではありません。作中の情景を楽しくイメージするための資料です。
作中、油が無い、ガソリンが無いと皆が嘆いています。
その原因は、日本への原油の輸入が完全に停止したためです。
原油の輸入が止まった理由。それはとても単純なもので、日本に購買力が無くなったためなんです。
商品棚に原油が並んでいても、それを購入するためのお金が無ければ買えません。実に当たり前の理屈です。
少年がトランペットを眺めていても、それをプレゼントしてくれる素敵な紳士が居ないんですね。
作中では穀倉地帯に自衛隊が防御線を移したと描きましたが、
正確には新潟、秋田、北海道に点在する油田の死守です。
他にも原発、水力発電、石炭、ガス、とにかくエネルギー資源の保護に戦略の切り替えを図ったわけですね。
燃料が無ければ戦車も巡洋艦もタダの箱。なんにも活動は出来ません。
人道を無視してでも押し通すべき優先順位は解ってるんですよ。
中東、ロシアからの天然ガスや石油のパイプラインは元栓が締められ、ヨーロッパは楽しい状態です。
EU諸国『北海油田の油を寄越せや! 電気寄越せや!! 移住させろや!!』
イギリス『は? ボク、キミ達から脱退するって決めたところだし?』
フランス『あ、ボクんちの原発の電気もタダじゃないから。今月の友達料金よろしくね』
アイスランド『うちに難民送るのとかホント止めてよね? 狭いから、ウチ。』
こんな感じの情勢です。さすがはヨーロッパ、昔からとっても仲良しさんですね。
国内資源でおおよその国内需要を賄える、
アメリカ、ロシア、そこから大きく離れてイギリスが世界三強の状態となっております。
Z研究に従事しているのがWHOではなくCDC単独なあたりも、その辺が原因です。
アメリカついでに話しておきますと、在日米軍はとっくの昔に撤退しています。
Z騒動は日米安保の対象外ですから、米国兵、つまりアメリカ国民の避難が最優先事項。
簡単に言えば、日本とか碌な資源も無い国もうどうでもいいわー、状態。
もしも仮にゾンビナオールをCDCが開発したとしても、
映画のように無償で提供されるほど優しい世界ではありません。
世界中の医療機関や科学者同士は手を結んでいますが、
国家同士は決して手を結んではいない、そんな冷たい世界です。
自国権益第一主義、ふつうに当たり前の世界のままです。
作中の人物、エリカ=ハイデルマンが世界に情報を無断で流しましたが、
あれで彼女の人生は終わってしまいました。
彼女の将来はあまり明るくない、ということだけは書いておきます。
さて、暗い話はここまでにして、明るい話。
多摩川の最果てに存在する羽田空港D滑走路はとても面白い建築法が採用されています。
羽田空港から海にピョコンと飛び出た滑走路。あぁ、追加で作られたんだなと一目瞭然です。
三分の一は金属の支柱に支えられた鉄筋コンクリートの板の桟橋部。
残る三分の二は埋め立てによる人工島という不思議なハイブリット工法が採用されています。
多摩川の流れを塞き止めないようにという理由で採用された工法ですが、カッコイイですね。
D滑走路で検索すると出てくる画像を見てみてください。普通に考えて、これは登れません。
この金属支柱、百年たっても大丈夫という触れ込みなのでホントに丈夫です。
ゾンビを相手に立て篭もるなら離島が良い。
だけど、寂しいから本土からあまり離れたくない。
そんなアナタにぴったりの物件です。
天然のネズミ返し工法が漂着ゾンビを撃退してくれるので、砂浜の離島よりもずっと安全。
問題はなんの遮蔽物も無い吹きさらし構造なので、沖からの潮風が強いことくらいでしょうか。
塩害が強く、残念なことに人工島は農耕地に適しません。
代わりといっては何ですが、お魚は24時間釣り放題です。
釣り馬鹿にはたまらないロケーションでしょう。
お近くには羽田空港というお宝の眠ったダンジョンもありますから、日々の冒険にも飽きさせません。
ゾンビハザードの際は、C4を背負ってD滑走路へどうぞ。
下手に離陸して機内でゾンビに襲われるよりもよっぽど生き残れることでしょう。
あるいは着陸前に外国の戦闘機に撃墜されるよりもよっぽど生き残れることでしょう。
ゾンビが発生して食べるものに困った。
そんなアナタにお勧めなのは、蟻です。
まず内側に油を塗った一升瓶を半分ほど土に埋め、砂糖で上手に蟻を誘導。
瓶の中に入り込めば成功です。無限蟻地獄の完成です。
後はすり鉢でゴリゴリするなり、鍋で煮るなり好きに調理しましょう。
歯触りはゴマです。味は酸っぱい。きっと蟻酸が含まれてるせいでしょう。
菌が怖いので、ちゃんと火は通しましょうね?
鳩、カラス、鳶。街中でよく見かける三大空中栄養素ですが、あまり食べ応えはありません。
空を飛ぶ生き物のため、可食部が少ないんです。鶏ほど肉付きはよくありません。
よくザルと棒で作った罠でスズメを捕まえようとするシーンがありますが――――あんな罠なら囮に撒いた米をそのまま食べた方がマシなんじゃないでしょうか?
スズメなんて一口か、二口分しか可食部はありませんよ? 重金属汚染も酷いですし。
鳥類を捕まえる際のお勧めは、綺麗なガラスやアクリルの板です。見えないんですよ、彼等の目には。
何ならサランラップでも構いません。この場合は一回ごとに張りなおしになりますけれども。
細い糸でも良いのですが、その場合は霞網猟と言って禁猟法に該当するので、お勧めしません。
餌があると思って滑空しながら近づいたところに透明な物体があると、彼らは位置エネルギーの偉大さを思い知ることになります。
餌を食べて飛び上がったところに障害物があっても同じことです。空中で一度崩れたバランスは戻りません。
衝突時の衝撃と、自由落下の二段構えで捕殺完了です。
鳥の骨って中空構造で折れやすいですからね。
何処かの骨がポキリと折れてしまえばもう飛べない。飛べない鳥は、まな板の上の鳥です。
それでもスズメを捕まえたいアナタ。お米をお酒に漬ければ良いんです。
小さな体。さっさと酔って、さっさと電線から落ちてきますから。
飲酒飛行も危険ですしね。位置エネルギーは本当に偉大ですね。
スズメの糞の被害にかなりムカついたからといって、ちょっと謎の大量スズメ落下死事件を起こしてはいけませんよ?
市役所や保健所の方に多大な御迷惑を掛けてしまいます。
さて、ゾンビ社会で最も手に入りやすいカロリー源、
ゾンビの安全な捕まえ方も説明しておきましょう。――――焼けば良いんですよ、焼けば。
スネアトラップです。簡単に言うと、カウボーイの投げ縄です。処刑台の縄とも言います。
縄の中に獲物が引っかかると、大きな輪がキュッとしまってゾンビの足を自動的に縛ってくれます。
縄の高さをうまく調節すると、大きな輪がキュッとしまってゾンビの首を自動的に縛ってくれます。
なぜ、ゾンビの捕獲に銃なんて使うんでしょう?
パン食い競争のように道一杯に首吊り縄を下げておけば、自動的にゾンビは掛かるというのに。
鋼線で輪を編めば、自動的に肉を裂いて頭を落とすギロチンワイヤーになってくれるというのに、不思議ですね?
再利用の際は、締まった輪を広げ直すだけ。ね、簡単でしょう?
これで毎日の食卓に乗せるゾンビ肉にも困りません。――――焼けば良いんですよ。焼けば。
なお、ゾンビ食によるゾンビ化現象の是非について、当方は一切関知いたしませんので悪しからず。




