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少年Z  作者: 髙田田
IFストーリーライン・エリカとボクと苦悩の日々
122/123

・田辺京也 36歳、エリカとボクと苦悩の日々、その死地

 回復したエリカは簡単に、事の真相に気が付いてしまった。

 やっぱり頭の出来が違いすぎるよ。ジーニアススクール卒は違うね。

 そして、全ての出来事を治療薬を開発した自分の責任にしようとした。

 だから、初めて暴力を振るってしまった。本当の悪役はボクなんだから。


 気付けのつもりだったのだけど二度三度と叩き返されて、しがみつかれ泣き疲れたから大丈夫。

 半分ずつ。六四、七三、その罪を独り占めしようとするエリカから奪い取るのは大変だったよ。


 一日、二日、三日経つにつれて、このド田舎の東京府にも人が集るようになってきた。

 アザミさん、宮古ちゃん……見た目は若いままだから、扱いと目のやりどころに困っちゃうな。

 神奈姉、まもり、朱音……結局、みんな女の子でしたか。アンチエイジングは大切だね。

 日名子さんに沙耶ちゃん。あと恵一ちゃん。

 ――――Z化しても、熱い熱いさんは、熱い熱いさんだったんだね?


 川上さんはソツなく結婚して三児の母。

 山本さんは――――何がどうしたのか、保科さんに変わってた。子供の将来が超心配。


 あの日のメンバーよりも若干増えた、羽田の跡地。

 居ないのは、後藤さんと北沢さんだけか――――。

 後藤さんは、何とかしようと悪足掻きを続けているんだろう。疲れたら、帰ってくると良いよ。

 北沢さんは……Zなんて御免だって、先に逝っちゃったからなぁ。お盆にだけは帰って来なよ?


 親類でもなければ縁者でもない。そんな人の声が届くほど安っぽいシェルターじゃない。

 ウチのシェルターは、アメリカ合衆国の敷地内であり、個人所有のシェルターなんだよ。

 日本の要人もアメリカの要人も、受け入れるような隙間は無いんですよ。

 とっても心の狭いシェルターで、ごめんなさいねぇ?


 そもそも要人を自称するなら、なんでシェルターを個人所有してないのさ?

 当たり前の顔をして、他人の家に潜り込もうとしないでくださいよ。

 金持ちになると知らない親戚の人が増えるって、ホントなんだなぁ。


「ねぇ、お父さん? ……あのね、お友達の人、呼んじゃ駄目? 困ってるみたいなの」

「――――駄目。その顔は、きっと男の子だから許しません」

「おかーさーん! お父さんが虐めるからカレー作ってー! 辛口のもっと辛い奴。泣く奴!!」

 それはお父さん虐めでしょう? 恵一ちゃんも一緒に怯えて泣いてるじゃないか。

 恵一ちゃんの娘の麻耶ちゃん。ニタリとした唇の三日月が怖いです。


 個人所有のシェルター。いえ、ただの頑丈なお家ですから。

 だから、中に招き入れるのも親類縁者だけに決まってます。

 でも、CDCの局員家族も含まれるから、たぶんIQの平均値はとっても高い。

 ちょっと格差が酷いけど。でも、公用語は日本語だからね? このお宅はっ!!


 九十を超えるリチャードさんは、『今更だ』そんなことを口にして来なかった。

 四十を過ぎた若々しい姿の子供達には、『諦めて、祖国に尽くせ』だってさ。

 ただ、何も知らない若い孫や曾孫だけは送りつけてきた。無言はズルイよ。


 でも、その基準だとエリカは……あ、カレーの辛味香辛料を増やさないでください、お願いだから。

 なんで心を読めるのさ!? ――――あぁ、もう瞳で通じ合う仲だからか。

 それくらい、長く一緒に居たんだ……だから、入れないでって気持ちも通じてるんだよね?

 なんでそこは都合よく通じないのさ!? 泣くよ!? 恵一ちゃんが!!


 ◆  ◆


 ボク自身、大きな計算違いがあったことは認める。

 本当は、もっとゆっくりとZくんは萎んでいくものだと思っていたんだ……。

 だけど、Zくんにとって地上は宝石箱で――――最後の最後まで全力疾走を止めなかった。

 何億歳、何十億歳になるのか解らないけど、子供だったんだね。お休みZくん。さようなら。


 渋谷。ううん、メキシコ沖から引っ張り出されて、地上の遊園地で走り回って、死んじゃった。

 最初から最後まで全力で、人類は大きく振り回されちゃったけど、それはたぶん自業自得だよ。

 今日よりもっと、明日よりもっとを探し続けて引き当てた、災厄箱の一つだったんだからね?


 ……でも、最後に聞けて良かったよ。


 ――――ずっと地中、眠ったままで居たかった?

『地上に出られて楽しかった。死ぬのは、よく解らない。初めてだから、ちょっと楽しみ』

 ごめんね、Zくん。怖かったんだ。キミの好奇心が怖かったんだ。

 娘が出来て、守るものが生まれて、キミの存在が怖くて仕方なかったんだ。

 ごめんなさい。ほんとうに、ごめんなさい。

 ――――もっと、キミを楽しませてあげられれば良かったのにさ。ごめんね?


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