表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年Z  作者: 髙田田
五月・下
111/123

・木崎まもり 15歳、絶対――――。

 むぅぅ――――。

「どうしたの、まもり? ブサイクな顔がもっと見られなく……目、瞑っても良いかしら?

 ちょっとツワリが。吐き気がするの……」

 お姉ちゃん!! 私は真面目に話してるの!! どうして京也を連れてこなかったの!?

 私が言っても全然、聞かなかったけど、お姉ちゃんなら言うこと聞かせられたでしょ!?


「断られたからよ? 結婚しましょって言ったのに、区役所の人がいないよって。

 ほら、私達の住民票は世田谷になるでしょ? だから、届けも世田谷区役所になるじゃない?」

 真面目に聞いてっ!!


「――――お姉ちゃん真面目よ?

 真面目に申し込んで、真面目にフラレちゃった。……この滑走路は子育てに向かないからだって」

 えっ!? えぇぇぇぇぇぇっ!?

 ホントに……フラレたの? お姉ちゃんが!? お姉ちゃんラブの京也にっ!?


「京ちゃんのお家でも、フラレちゃった。……このお家は子育てに向かないからって」

 ――――ねぇ、お姉ちゃん? 実際、京也と何処まで行くつもりだったの?

 そういうフシダラなことは厳禁って、お姉ちゃんが言ったんじゃない!!


「京ちゃんよ? 京ちゃんが我慢できなくなっちゃうと困るから~って。

 フシダラ厳禁のルールを作ったのよ? 知らなかったの? 教えてないものね」

 ――――教えてもらってないのに分かるかーっ!!

 じゃあ、なんで京也が自分で言わないの? 甲斐性無しだから?


「――――まもり、京ちゃんに迫られて、断れた?」

 えっと、その、お気持ちは嬉しいけど……ボディーブローかな?


「じゃあ、出て行けって言われても、断れた?」

 ――――え、う、あ……やだ。そんな京也はやだ。嫌い。大嫌い。

 京也は馬鹿みたいに優しくて、女の子には弱くて、だらしない顔で笑ってるの。

 そうじゃなきゃ……嫌だよ。


「京ちゃんだって男の子。一日、一日、男に近づいていったのよ?

 それに――――朱音ちゃんを守るために、男の子から男に、無理やり変身しちゃったから」


 ズキリと胸が弾んだ。私が言った、言いました。

『京ちゃん!! 助けて!! お願い!!』と……それから一人称がボクから俺に、似合わないなってずっと思ってた。

 だらしない犬の笑顔が、なにかを噛み締めた、不敵な作り笑いに……。


「私じゃ駄目だった。……でも、アザミさんが協力してくれるようになって、少しずつ、男の化けの皮が剥がれて男の子に戻っていったのよね。……女として屈辱だわ! あのマザコン男!!」

 ――――お姉ちゃん、京也のことそう思ってたんだ。

 うん、私もそうだと思ってた。なにかあれば、最後は沙也香さんだったもんね。


「そんなアザミさんが頼んでも、一緒に来てくれなかったのよ……。

 京ちゃんには京ちゃんの考えがあるんですって、大事な役割があるんですって」

 ――――私達を放っておいて、どんな考え? どんな役割?


「一度、関係をリセットしたいって。命を握った主従関係を離れて、平和に過ごして欲しいって。

 佐渡島でカッコイイ彼氏の一人でも作って、平和な普通の世界で、女の子してきて欲しいって。

 京ちゃんは、佐渡島に万が一のことがあったときの為に、あの滑走路を守らなくちゃならないんだって――――」

 え? それって?


「私達、みんな、フラレちゃったの。理由は、私達の幸せのためだって。

 どうしていつも、その幸せの中に自分を入れようとしないんでしょうね? 京ちゃんは」

 フラレた? 私? 知らぬ間に? 後ろ回し蹴りも解禁ね?

 ファーストキス返せ!! ファーストおっぱいも返せ!! ついでに色々と返せ!!


「……京ちゃんはね。とってもとっても優しい子。優しすぎる子。昔から、知ってるでしょ?

 誰かが笑っている為には、誰かが支えなくちゃいけない。だから京ちゃんは滑走路に残ったの。

 でも支える人って、重たいよね? 苦しいよね? そして、下に居るから見えない人よね?」

 お姉ちゃん? 泣いてるの? ――――頭、撫で撫でしようか?


「それは、心の京ちゃんにやって貰うから良い。妹如きに慰められて堪るもんですか!」

 ――――ムカッ!! 如きとは何だ!! 姉如きが!!


「私達の命を握りながら、いつでも下働きの顔をして……今だってそう。現在進行形。

 佐渡島には人が多いけど、だからって確実に安全なわけじゃない。何かあるかもしれない。

 ――――何かあったら戻っておいで、他の人を連れてきても良いからさ。なんて……」

 それは京也が言いそうな言葉ね?

 他の人かぁ……沙耶ちゃんとか自衛隊のみんなとかかな?


「――――姉として、妹の脳みそには失望しました。

 この類人猿に、京ちゃんの心配りは生涯解らないことでしょう」

 なんですとー!? 姉と妹、どっちたが上か、今すぐ決めても……お姉ちゃん? 何で銃なんて持ってるの?

 へ、へー、テイザーガンって言うんだ? 銃の形のスタンガンで、京也からのプレゼントなんだ?

 お姉ちゃんには合気道があるじゃない? だ、だから、大事にしまっておかないとね~?

 え? 充電式だから何度でも――――いぎゃああああああああああああああああああああ!!


「ふっ、馬鹿ね。姉より優秀な妹なんて居るはず無いじゃない。


 ……。

 ……。

 ……。

 ほ~か~の~ひ~と。解らないの?

 この佐渡島で出会った素敵なダーリンでも、その赤ちゃんでも連れてきて良いって言ったのよ?

 ……馬鹿。大馬鹿。ば~~~~か! ば~~~~~~~~~~~~~~~~~~か!!」

 ね、ねぇ、お姉ちゃん、その馬鹿にいま何割くらい私を含めてた?

 それから、やっぱり、泣いてるの? 泣いてるんでしょ?


「京ちゃん以外なんてヤダ……。でも、私の財布には葉山先輩の写真が入ってた。それが全て。

 京ちゃんが好き。大好き。愛してる。でも、人の心は変わっていくから……。染まっていくから……。

 同じ中学校から高校に離れただけで、こんなに浮気性……。滑走路と佐渡島はもっと遠いのに。

 ――――ヤダな。……京ちゃんのこと、考えなくなっていく、忘れていく自分が嫌だな。

 嫌だよ京ちゃん。ずっと傍に居て欲しいのに、意地悪を言わないでよ……。ば~~~~か」

 ……そんなこと、無いよ? 私、京也のこと、忘れたりしないよ?

 絶対だよ!! 絶対に忘れないもん!! 絶対に忘れたりしないもん!!

 浮気性なのはお姉ちゃんだけだから!! このアバズ、いぎゃあああああああああああああああ!!


「京ちゃんのこと、好きだったことは忘れないよ? でもね、誰かに上書きされちゃうの。

 ずっと、ずっと、傍に居て。京ちゃんの色で塗りつぶしててくれなきゃ駄目なのに……。

 私は、いつまで京ちゃんのことを愛していられるのかな? ……京ちゃんの、馬鹿。

 愛させ続けさせてくれない意地悪……。でも、私のために滑走路を守るって……。

 京ちゃんは、優しすぎるのよ。ば~~~~~~~~~か……」


 ――――私は、お姉ちゃんと違う!! 朱音ちゃんも、お姉ちゃんとは違うもん!!

 ずっと、ずっと、京也のことが好きなままだもん! 絶対だもん! 絶対、なんだもん……。


 嫌だ。嫌だよ。京也、京ちゃん、傍に居てくれなきゃやだ……。なんだか私、怖いよ……。

 ずっと、好きなままで居させてよ。ずっと、私の隣で……。滑走路なんていらないから!!

 ――――ばか、ばか、ばか、ばか、ばか、ばか、ばか、ばか、ばか、ば~~~~~~か!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
男はフォルダ別に保存 女は上書き保存ってやつですね 男は昔保存したファイルのためなら割と頑張るからなあ
[良い点] あ、元の一人称ってボクの方だったんだ……ならいい……いや、いいのか悪いのかわかんないな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ