4話
想像したらダメです。想像したら。
「朝食、夕食込みで、一泊140セトだよ」
「なん…だと…」
雷華は冒険者ギルドを出た後、夕暮れ時の街を歩き、紹介された宿に行った。雷華の予想では二泊ほどできると思っていたのだが…
「ほんとの本当に一泊140セト…?」
「ああ、ほんとの本当に140セトだ」
「NO…」
このざまである。
「部屋は二階に上がって二部屋目だよ。ほれっ、鍵。朝食は朝7時、夕食も夜7時だよ。昼食は別料金、希望するなら弁当も作ってやるからね」
「ハイ、オーケーです。ワカリマシター。ハハハハ、ハァ…」
女将から鍵を受け取り、二階に上がって行く。
ちなみにこの世界でどうやって時間を確認しているかというと、広場にある鐘が朝6時から夜12時まで1時間おきになるので、それで確認している。
部屋に入った雷華は簡素なベッドに腰かけ、硬さに顔を顰める。
「明日すぐに依頼受けないとなぁ、じゃなきゃ宿追い出されちゃうからね。定番の雑用依頼に賭けるしかないかな」
雷華が討伐依頼を除外したのは防具がないためとお金を得られる保証がないためだ。モンスターに出会わず、宿を追い出される、なんてことになったら目も当てられない。
しばらく明日のことについて考えたあと魔獣化について考えていたことの練習を始める。魔力がなくなったら休んで回復し、練習を再開する。それを繰り返しているうちに夕食の時間になった。
「はい、たいしたもんじゃあ無いけどお食べ」
夕食はパンとスープ、そして何かの肉のステーキだ。
「美味しい…」
はっきりいってこの二日間調理された食べ物を食べていなかった雷華は夕食を食べて思わず一気に食べた。その様子を見ていた女将にサービスだ、と言っておかわりを出された時はとても嬉しく思った。
「いやー、食った食った。女将さんありがとうね」
「いいって、あんなに美味しそうに食べる人間はしばらく見てなかったからね。嬉しくてねぇ」
「あ、そういえば女将さん、ステーキの肉ってなに?」
「ワームの肉だよ。美味しかっただろ…て、いったいどうしたんだい!?」
「…ミミズ…流石ファンタジー…うぅ」
さて、色々あったが部屋に戻った雷華は魔獣化の練習をした後にベッドに横になった。ベッドが硬くてよく眠れなかったが。
「知らない天井だ」
雷華は人生で一度は言いたい言葉ベスト10にはいっている言葉を口にして、起きた。
ーゴォーンーゴォーンー
「ーっるさ!これで目が覚めたのか」
二度寝の誘惑に抵抗しながら身だしなみを整え、一階に降りる。一階には明らかに冒険者、といった者たちが朝食を食べていた。
「女将さん、おはよー。そして今何時?ご飯大丈夫?」
「おはよう、今は7時だよ。朝食も、もちろんできてるよ」
「ありがとう女将さん」
朝食はパンとスープとサラダとソーセージだった。ソーセージに変な段がついていたが気にしない。昨日のような思いはもうこりごりだからだ。
「ご馳走様でしたー。あ、そういえばさ、女将さん、ギルドで魔法の本的なのって借りられる?」
「借りられるよ。無料だから安心しな」
「マジすか、無料!ひゃっほい!女将さん、ありがとう。ギルド行ってくるねー!」
「あ、ああ、行ってらっしゃい」
宿を出てギルドに向かう雷華。雷華は知らない、自分が美しいということを。
そして、街の者達の視線を集めていることを。