歩いていく、その先に
ここから見える空の裾も、だんだんと明るくなってきた。
わたしは思いきりのびをする。今日もいい天気になりそうだ。
――みんな、おはよう! 一緒に歩く練習をしない?
わたしのまわりには、わたしと同じようによそから集められてきたコたちがたくさんいる。みんなまだ眠たそうで、いつものように、あんまりいい返事はなかった。
――できないわそんなこと
――できないわ。できっこないわ
――やる必要だってないんだもの
――どうして、必要ないことをしようとするの?
必要、ない。
確かにそうかもしれない。だけど禁止されてるわけじゃないのにな。やろうと思えばできるはずなのにな。
どうしてみんな、やろうとしないのかな。
……さびしいな。
本当はみんなと一緒なら心強いんだけど。仕方がないから独りで歩く練習を始める。
まだカラダはあまりうまく動かない。それでもここへ来たばかりの頃よりずいぶんとましになった。
無理をすると後であちこち傷むから、ゆっくり時間をかけて少しずつ。
前へ。もう少しだけ、前へ。
――そんな無駄なこと、しない方がいいのに――
どこかからそんな言葉が聞こえた。
無駄かな? ……そう、なのかな?
でも気にしない。無駄かどうかなんて。
わたしはただ、“やりたい”だけ。
自由に動けるようになりたい。自分の意志で自分の行きたいところへ行けるようになったら。それはどんなに素敵なことだろう。
ねえみんな、わたしは先へ進むよ。
まだみんなが知らない、新しい場所へ――
* * *
「なあ……この植木よお」
ねじりはちまきのベテラン庭師は、1本の若木の前で気味悪げにふり返った。
「昨日来たときと、立ってる場所が変わってねぇか」
「俺もそう思ってた。まるで歩いたみたいに土が盛り上がってるしな」
「気味悪いこと言うなぃ」
「それよりどうすんだよ親父、売れんのかこれ」
「下手に売って、お客からクレームもらってもなぁ。……斬るか?」
-END-
ぐうたらパーカーさん主催の短編企画「陽だまりノベルス」第2回参加作品です。お題は「進化」、ただし「進化という言葉は使わない」。出題者です。