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27匹目 侵入、そして対面

 迷路のように左右に曲がったりグルグル回ったりと、複雑な構造をしている奥を邁進していく。と言っても、私はランドキングビーさんの背中に乗っているだけの楽な仕事ですが。

 右に曲がったり左に曲がったりと、ランドキングビーさんとヴィヴィットバブーンさんは忙しい。分岐していないのが救いだけど、まるで疲れさせることを目的としたような道だ。アンシェントリザードさんは用心深いモンスターなのかもしれないな。洞窟の中はこんな感じだし、入り口も教えて貰わなきゃ分からないような場所にあったし、あのナイトメア・サンライトドラゴンの怒りを買っていてもちゃっかり逃げ切れてるし。

 私の中でのアンシェントリザードさんのイメージは、もう、経験を積んで円熟してて狡猾なお爺ちゃんに固定されたぞ。若者をからかうことが好きなんだ、きっと。

 そんなモンスターには何て挨拶すればいいんだろうなぁ。あ、通じないんだった。




「ヒヒッ?ヒヒーン」


「グルッ、グルル」



 不思議だよね。それぞれ鳴き声が違っててもモンスター同士では意志が通じてるっていうのに、どうして私とは通じないのかなぁ?────とか考えていると、何やらヴィヴィットバブーンさんの言葉を受けたランドキングビーさんが、「私は動けない。お前が行け」と返しているではないですか。

 えっ、なになに?何事?光がないから今の状況がよく掴めない。仲間外れだ。

 ランドキングビーさんの指令に短く返事して、タタッと動きだしたヴィヴィットバブーンさんと同時に、カサカサカサカサ…と何か擦れるような音が前から聞こえたけど、それは直ぐ止んでしまった。

 な、何だ何だ?一体どうしたんですか、ボス。




「グルルル…」




 え、モンスターだったんですか?何か凄く嫌そうな声色なんですけど、どうかし………うわ臭っさ!!!!何じゃこの腐敗した生ゴミにアンモニアを惜し気もなくブッかけたような臭いは!!!?




「……グルルルル、グルル」



 見えないので外見は分からないけど、インセクター系モンスター『スティンクカックローチ』というやつが現れていたらしい。自分の身が危険になった時にこのような刺激臭を放って、敵が臭いにやられているうちに逃げるんだとか。

 カサカサカサカサカサカサ…。な、なるほど、後方から逃亡の音が聞こえる。

 はっ!!!!そうだ!か、カックローチってゴキブリのことじゃないか!

 なんでカメムシと似たような能力持ってんだよ!鬼に金棒持たせるなよ!!臭ぇーーーーーーっ!




「「ゲホゲホッ!」」



 私とヴィヴィットバブーンさんが仲良く咳き込むのに対して、説明後は無反応のランドキングビーさん。わかる、私にはわかるぞ。見えないけど目の間に皺を寄せているぞ、ボスは。

 それとヴィヴィットバブーンさんがえづいてるんだけど大丈夫か。下からカハッって鳴き声じゃない声が出てるんだけど。…ううっ、ひとを憐れんでいる場合じゃないな。私も気持ち悪い……吐きそう…。



 既にヴィヴィットバブーンさんが追い払ってくれているようなので、鼻をつまみながらとっととこの異臭の場から離れます。

 幸い私達が来た道の方へと害虫スティンクカックローチは逃げたようで、風向きの助けもあり、少し進んだだけで臭いはしなくなった。良かったですよ、ホント。今まで嗅いできたどんな臭いよりも強烈だったぞ。嗅覚大丈夫かな?




「グル」



 「最深部だ」。鼻をさわさわして確かめ、害虫の名残が消えないうちに─────どうやら洞窟の最も深い場所まで到達してしまったようだ。ランドキングビーさんは止まり、下降して地面に降り立った。

 風の音はしなくなり、前方から代わりに大きくゆっくりとした呼吸作用の音が聞こえる────いや、実際に近づいてみて分かったんだけど、コレを風の音だと認識してしまってたんだな、私は。

 ゴオオオオ、フーーーーッ。ただ吸って吐いているだけなのに、あらゆる生命までも息づかせるような感じ。かなりの肺活量とみた。

 その距離は近い。

 暗闇の中に何かとてつもなく巨大な存在があるのが、なんとなく分かる。




「グルルル」



 そこに居るのがアンシェントリザードだ─────…と言われても、真っ暗で何も見えないからコメントしづらいんだよなぁ。居るのはわかるんだけどね、居るのは。光があればいいのに。



「…ヒヒィ、ヒヒーーン、ヒヒッヒヒッ」


「グルルルル」


「ヒヒィ、ヒヒヒヒッ。ヒヒーーーーン」


「グルル」


「ヒヒーーーン」


「グルッ、グルルルル、グルル」



 ヴィヴィットバブーンさんが暗闇に向けて何事か言い、ランドキングビーさんがそれに補足をするような形で言葉を付け足している。

 断片から察するに、挨拶と、私とランドキングビーさんのことについてと、今までの経緯のようだ。

 あらかた話し終えると前から溜め息が吹きかかり、その強い風に髪がなびく。風からは、土の臭いがした。




「…ヴォ、ヴォエエエエエエエエエエエーーーーッ」




 ………………。

 ねぇ、ランドさん。いま何か邪悪な怨霊の叫びがアンシェントリザードさんの所から聞こえてきませんでしたか?

 呪いとか破滅の呪文みたいな。

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