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23匹目 厄災は過ぎ去るまで待ちましょう

 一体あのドラゴンは、何をあんなに血眼にして探してるんだろうか。何に対してあんなに咆えているんだろう。

 苛立ち、怒り、不満、焦燥。そんな感情が痛いほど伝わってくる。

 探しているのは私とランドキングビーさんの姿だろうか。いや、私達はサンライトドラゴンに何もしてないし、心当たりもない。道が分からないとか、穏やかなものでもなさそうだ。───それとも違う何か(モンスター)か。




「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



 サンライトドラゴンは自分の欲求不満を晴らすかのように大地を震わす大声を何度も上げ、翼が巻き起こす風圧で山林一帯を騒めかせる。

 それに反応し、あちらこちらで焦ったような鳥獣の悲鳴が続いて上がった。それは波紋のように広がって、絶え間なく森のなかで続く。

 一匹なのに、居るだけでこれほど影響力をもつなんて。

 ───どちらにせよ、手に負えない厄災は、早く過ぎ去ってくれることを願うしかない。胸の中で暴れ狂うような心臓の音を聞きながら手に汗を握り、サンライトドラゴンの動きを見開いて待つ。


 ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…。


 日光に反射し、眩しく金色に輝きつづける姿態はまだ上空に居続ける。

 それぞれ自由に動き回っていた三頭が向きを同じにすると、コウモリのような翼を大きく伸ばした。

 そこにある空気を押さえつけ、つむじ風をおこし、木の葉を吹雪のように舞い上がらせる。

 ある程度の高度まで達すると広げていた翼を流線型に縮ませ、何トンもあろう体の重さをものともせずグライダーの滑空のように、空を滑り飛んでいった。

 勢いづいて、速度はだんだん速くなってくる。

 一瞬で小さくなるまで遠ざかり、山にその姿が隠れたところで、私はやっと安堵の息を吐けた。肩に入っていた力が抜ける。


 ────ふぅ……。


 なんという邂逅だったんだろう。

 一目見ただけなのに、恐怖のトラウマを植え付けられてしまった。

 あれがドラゴン系、最強系統。なんという存在感、支配力。最強と謳われるにも頷ける。これまでのどこか微笑ましいモンスター達とは違うんだってことを、まじまじと思い知らされてしまった。

 これからあんなモンスターを相手しに行くんだ、覚悟しなくちゃいけない。ふざけられない意味で。

 その意味じゃ、サンライトドラゴンを今見れたことはラッキーだったかもしれないな。アレだけインパクトがあると後のものが可愛く見えるよ、きっと。


 なんて私がポジティブに考えて自分を勇気づけていると、ランドキングビーさんが一言呟いた。「不味い」、と。

 え、何で?サンライトドラゴンはどっか行っちゃったのに。




「グルルル、グルルルルルル」




 ………なんと。さっきの怒気を孕んだ大声は、「アンシェントリザードのジジイ、どこに居んだゴラァ!隠れてねぇで出てきやがれクソッタレ!あのクソジジイめ!ファック、ファック!見つけたら即刻腹ぶっ裂いてやる!」などと叫んでいたらしい。アンシェントリザードさんへの文句が問題なのではなく。

 二匹の間で何か諍いがあるのだとしたら、強さではドラゴン系の下位をいくアンシェントリザードさんの身が危ない。しかもご老体を指名しているときた。せっかくの情報源が、無くなってしまうかもしれない。

 そしてそのアンシェントリザードさんは例の一番高い山に今は居らず、目印も何もないどこか別のところに隠れている確率が高く、この山々の中での捜索が難しくなることが問題だ。アンシェントリザードさんを探しているらしい同じ系統のサンライトドラゴンが、系統の特徴を理解して一番高い山をはじめにあたらない筈がない。そこには居なくて、だからこうして飛び回ってまで探しているんだろうとランドキングビーさんは言う。


 ──────そりゃ急がねぇと!!

 何としても怒り狂ったサンライトドラゴンよりも先に見つけてお話を聞かねば。二匹の怪獣大戦争(?)に巻き込まれたくはない。

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