21匹目 飛びます飛びます
探してくれるとは言われたものの、何か手掛かりはあるんだろうか。
恐縮しながらランドキングビーさんに聞くと、マザーツリーさんのように博識で有名な他モンスターを手当たり次第訪ねるつもりでいるんだとか。ただ、マザーツリーさんのように大人しくて欲しい情報をホイホイくれるモンスターはごく稀で、これからは気性が激しいビースト系やプライドの高く気紛れなドラゴン系を多くあたることになるので、期待するものが得られるかは厳しいそうで。ランドキングビーさんは私に「済まない」と言った。
いやいやいや、何を言ってるんですか。十分すぎますよ。ランドキングビーさんが謝る必要なんてないじゃないですか。ええ、全くないですよ。
むしろそこまでしてくれるなんて……とまた感動で目が潤んでくるけど、お得意の般若の相で持ち堪える。これからは簡単に泣いちゃならねぇ、泣くなら帰るときだ。それがランドの旦那への誠意ってもんだろう。これだけ尽くしてくれるんだ、強く前を見なければなるまい。
さて、はじめに向かうは『アンシェントリザード』というドラゴン系モンスターのところだ。ドラゴン系では一、二を争うくらい長生きする種で、そのアンシェントリザードの中でも一番ご高齢になるアンシェントリザードさんが、この樹海と火山地帯の狭間にある山場に一匹で隠居するように住んでいるらしい。何でもこのご隠居、大陸ができたときから生きているんだとか。こちらの種はドラゴン系でも比較的穏和な部類に入るらしいので、近いし、先に攻めてみるか、というわけだ。
因みに情報源はマザーツリーさん。力になれなかった代わりにと、知識の豊富そうなモンスターの棲息地情報をランドキングビーさんに教えてくれたらしい。この抜かりのなさ、流石です、樹海の母。
ブーーーーーーン。
ただいま、ランドキングビーさんにおんぶされながら樹海上空を進んでいってます。
このおんぶはですね、飛んでいるときは翅がうまいこと広がっていることを先ほど発見し(残飯をランドキングビーさんが片付けている時)、試しに背中に乗ってみたところ、今までのどんな抱き方より無理がなく、具合がよろしゅうございます。これから飛ぶ時はここを私の定位置にする。
ランドキングビーの旦那には「ハナが見えない、不安定だ」と最初は拒否されたけど、鉤爪が当たらないから痛くない、ランドキングビーさんの手足(主に鎌)が自由に動かせるようになるから急にモンスターに襲われる事があっても対応しやすい、肩より広くて私の身体に負担が掛からないから長時間の移動には助かる、などと理由を並べ、何とか説き伏せることに成功。でも最後まで釈然としない様子だった。背後を取られたくないのかな。つくづくゴ〇ゴ13のような御方だよな、ボスは。
ブーーーーーーン。
……………1、2時間くらい飛んでるというのに、一向に樹海から抜ける気配がないな。もっと早く飛んでも大丈夫だよいいよと言ったんだけど、ランドキングビーさんはお前が危ないから駄目だの一点張り。心配性なんだなぁ。えへへ、嬉しいな。………すいません調子に乗りすぎましたすいませんごめんなさいだから石を投げないで下さい!ひいっ!
冗談さておき、抜けられるんだろうか、この密林。本当に山場に着くんだろうか。
たまに点在する湖の形以外は同じ景色だ。緑、緑、緑。この途方も無い距離をよく赤サイ軍団は走ってきたよね。大移動を渋る訳だよ。子供が多く混じってるって言ってたけど、とんでもねぇ体力のモンスターだったんだなぁ。スゲーや。
あ、マザーツリーさん発見。別個体であろう、これでこの樹海に2匹目か。持っている情報は共通らしいので、こちらのマザーツリーさんは素通りします。でもお世話になったので、ヤッホーと手を振ると微笑を返してくれた。いや、いつも微笑んでるんだけどね。怒ってるときとか、あるんだろうか。いつも微笑だと分かりづらいね。
マザーツリーさんを通り過ぎると、遠くの前方から鳥っぽいモンスターの群れが綺麗に横に一列になって飛んできていた。これだけ離れてるのに、ギャーギャー声がデカくて非常に五月蝿い。
「グルルル」
おおう、ビースト系モンスター『バルドイーグル』か。そろそろタロウチャンとかシャチョサンとかオバハンとか、そういうモンスター名を聞いて腹を抱えて笑い、自分の名前に安心したいものだ。うむ。
バルドイーグルさんが近付いてくる。どれも一様に頭がピンク色にハゲている、かわいそうな鷲さんだった。足でランドキングビーさんの腰をしっかり挟み、耳を両手で塞ぐ。ううっ…耳を押さえててもギャーギャーうるせぇモンスターだな、こりゃ。公害レベルじゃないか。
などと思いながら目を閉じていたら、パン!パン!パン!パンパン!と銃が連射されたような音が聞こえ、シーンと静かになった。おやおや?と目を開くと、落下しているバルドイーグルさん達。そのピンク色の頭部には、先ほどハイドモスさんに突き刺さっていたものと同じものが深々とみんな刺さってるではないですか。相変わらずランドキングビーさんは私を乗せながら飛び続けてて、バルドイーグルさんに触れてすらいません。
………………飛ばせるのか、毒針は。しかも一発で終わりじゃなくて、連射可能ですか。コントロールもいい。
こりゃどうやら、ランドキングビーさんは私が思ってた以上に強いモンスターだぞ。インセクター系のランドキングビーさんがこれだったら、最強だというドラゴン系はどれだけ強いんだって言う話ですよ。インセクター系の中でもランドキングビーさんが特別なだけ?
ぶるぶるぶるぶる。どちらにせよ、必要以上にモンスターを敵に回したくない。気を付けなくちゃ。