20匹目 日の出と朝食+オマケ
「キャー素敵ーっ!」と思わず叫びたくなるようなランドキングビーさんの男前な提案により、ここでの相棒となる本人公認なモンスターを無事に手に入れ……失礼しました訂正します、心強いボスが正式にできました。私、子分その1。わーっ、拍手拍手。
なんにも取り柄のないやつですが、今後ともお世話になります。よろしくお願いします。そう言ってランドキングビーさんにジャパニーズ土下座(ついでに説明しました)をすると、「ああ、貰ってやる」とのお言葉が。……あれ?何だこの返事の違和感。ま、いっか。
いやあ。何はともあれ、目下一番の問題が解決してスッキリ気分爽快。マザーツリーさんの懐でぐっすりと安心して眠りにつき、夜は更けていったのでした。
そして朝チュンです。チュンチュンと小鳥のさえずりはないけど、毛玉モンスターのチィチィという鳴き声が聞こえる。どうせイチャついてんだろ、おまえら。おーおー朝からお盛んなこって。ぺっ、ぺぺぺっ。これがリア充というやつか。いや、充じゃなくて獣だな。リア獣め。
散々脳内で納得いくまで悪態をついたところで、欠伸をしながら起き上がり、ゴシゴシ目を擦る。うううっ、日の出が超眩しい。空気が澄んでいることと何か関係がありそうだ。汚れてない分、都会の空気と比べて光が通りやすくなってるんだろう。
慣れてきたところでランドキングビーさんの姿を探すが、この穴の中に居なかった。
………あら?もしかして食事しに行ったのかな。結構な距離を飛んだのに、ずっと食べてなかったし。
成体のランドキングビーさんは何を食べるんだろう。変態後の昆虫って食べ物変わったりするよね。アオムシは葉なのにチョウになると花の蜜になるし、カブト虫の幼虫は腐葉土なのに成虫になると樹液になるし。あ、カブト虫は果汁とかゼリーとかも食べるな。などと考えていたら、翅を鳴らせて帰ってきましたよ────大きなハイドモスさんを抱えて。
うえええええええええーーーーーっ!!?まさかのハイドモスさん!!?
丸裸にされ気を失っているウジ虫……じゃなかったハイドモスさんがドサリと私の横に落とされる。その真っ白な体には太い針が一本、深々と刺さっていた。こ、こいつで仕留めたんですね、ボス。
私の前には糸の網が落とされる。網の中にはタンパク源になりそうな豆っぽい木の実と、既に剥かれてある昨日の果実が沢山入っていた。
「グルルル」
食うぞ、ってあーた(某夫人調)。せっかく道案内してくれたハイドモスさんを食べるって………なるほど、ランドキングビーさんに対してのあの異常な怯えようは、コレが理由だったのか。
なにをコメントすべきか悩んでいる間にも、ランドキングビーさんは豪快にがっつき始め、ハイドモスさんの豆腐のような肉塊をあたりにビチャビチャと散らせていく。正直、汚い食べ方だ。ランドキングビーさんの顔や胴体が豆腐まみれだけど、本人がそれを気にする様子はない。よっぽどお腹が減ってたのか、ムシャムシャムシャムシャ休みなく顎が動いている。
…………………………。
合掌。よし、私は何も見なかったぞ。
ランドキングビーさんにお礼をいい、私もいただきますと食べ始めることにした。
むむっ、むむむむっ。この網、ひとつなぎの球状になってる。どうやって解けばいいんだ。
■
ランドキングビーさんは、私の住んでいた場所に帰る方法を探してみてくれるらしい。探すが、なければ潔く諦め、この大陸で生きろ。出立前に、私に向かってそのように仰られた。
────お父さん、お母さん、それから妹よ。花子は何故か、モンスターとやらが跋扈するよく分からない土地に迷い込んでしまったけど、すべてが不幸というわけじゃなかったよ。
こんなにも私を気に掛けてくれる、優しいモンスターに出会えたんだから。
ありがとう。本当に、ありがとう。ランドキングビーさん。大好きです。言い表わせないくらい、感謝してる。
……………ただ、ちょっと。
せっかくランドキングビーさんってば格好いいこと言ってくれたのに、顔が豆腐まみれになってるのが惜しい。実に惜しい。可愛いけど、格好よさ半減。仕方ない、私が取ってやるとするか。ちょっと屈んで動かないでね。ゴシゴシ。
《オマケ》
花子の脳内モンスターナンバー009
【マザーツリー】
プラント系。最大モンスターで長命。根はむき出しで移動のための足になっており、赤混じりの茶色の幹で、葉は見えないほど高い場所にある。体長の半分あたりに、いつも微笑をたたえる顔がある。(池や湖など水場のある)樹海にしか棲めない。透明化や魅惑、部分変形などの能力をもち、博識で大陸の様々なことを知っている。声は無音(超音波)。優しく慈悲深い、森の母。
花子の脳内モンスターナンバー010
【ウッドマウス】
ビースト系。アルマジロのようなフォルムをした、深緑色の毛玉。マザーツリーに寄生して生きているものもいれば、地中に穴を掘って生きているものもある。番いと何時でも一緒どこでも一緒な習性がある。鳴き声は「チィ」。リア獣である。




