14匹目 目的はありました+オマケ
2匹仲良くそろって木陰に消えたかと思いきや、戻ってきたのはランドキングビーさんだけだった。おや、もう1匹は?赤サイのあんちゃんはどこ行った。
「グルルル」
なんと、群れに戻らせてきたそうで。そっか…移動中だったもんね、無事に追い付ければいいんだけど。なかなか感じのいいモンスターだったから、別れの挨拶とかしたかったのになぁ。ちょっぴり残念です。
あの物静かで殺伐としていた荒野も、あれだけの群れが移り住むとなると、さぞや賑やかになることだろう。荒野の全部を知ってるってわけじゃないけど、私の見た中で、あそこの生物は少なかった。やっぱりサボテンとかあったのかもしれないな。ライノーセラスさん達が今度こそ食べるものに困らなきゃいいんだけど。草とかプラント系って言ったって────…はっ!サースティブレイドちゃん!私の可愛いエンジェル、サースティブレイドちゃんが!!うわああああああああああああああ!!
脳裏によみがえるつぶらな瞳が、涙を流して私を見つめる。
どうしよう、どうしよう!とランドキングビーさんに詰め寄れば、呆れたような声で「あの種族なら一晩で幼体が何百何千と生まれているから心配は無用だ」と慰められた。
うわっ、すごい繁殖力。さすがプラント系モンスターと言ったところなのか…じゃなくて。食べられる前提で話してませんか、それ。
…………………。
グッバイ、サースティブレイドちゃん…。子孫の繁栄を切に願ってます。安らかに眠り給え…。
■
さあ冒険っぽく火山地帯に行って悪さをするドラゴン系モンスターの退治か!?と思いきや。
綱を引かれて、散歩の続きとなった。
そうだよね、ランドキングビーさんは好き好んで厄介ごとに首を突っ込むような酔狂な方ではないだろう、と短い間だけど一緒に過ごしてきて納得する。むしろ火山地帯は避けるか、興味がないかのどちらかだ。
てくてく、てくてく、進んでいくとも、あてもなく。
ミノムシのように全身を葉や枝を糸で綴って隠し、木にぶら下がっているモンスター群を前方上部に確認。2メートルはあろうか、巨大なミノムシである。速やかにボスに意見願おう。
冗談さておき、モンスター辞典のランドの旦那にあれは何だと聞く。『ハイドモス』というモンスター名らしい。
中から某アーティストみたいなのが全裸で出てくるかなとドキドキしながら挨拶したけど、顔を出したのは初期のランドキングビーさんに似たウジ虫っぽいインセクター系モンスターでした。そうだよ、ここはそういうところなんだよ。
『シー』って低い声で一鳴きしてくれた。確かにいい声をしていたけど、世の中そんなに甘くはなかったか。
ランドキングビーさんが散歩を始めてから、はじめて私の前へ出た。大きな背中だ。
ハイドモスさんを鋭い眼光で見上げる。
ランドキングビーさんがよっぽど恐ろしいのか、性格なのか、ハイドモスさんはガタガタ震えててなんだか可哀想だ。インセクター界のギャングだったのか、ランドの旦那。
「グルルル、グルル」
「シ、シー…シー」
「グルルルルル」
「シ、シ、シー」
おうおう、あんまり揺れるから葉っぱが落ちてきた。
昔見たヤクザ映画の取り立てシーンを思い出す、この怯えよう。わかりますとも。この旦那からは覇気が出てますよね、近づきがたい何かがありますよね。
空中飛行を楽しんだら私は感じなくなっちゃったけど、慣れたのかな。
「グルル」
「シー、シー」
なになに?道を聞いてるの?あそこへは…ってどこへ行こうというんだろう。モンスター界の隠語か?
なんだ。気まぐれに見えて、ちゃんとランドキングビーさんには目的があったんじゃないの。私の散歩とかはこの序いでだったんだね。
《オマケ》
花子の脳内モンスターナンバー004
【ホットライノーセラス】
ビースト系。群で行動し、この系統では珍しく思慮深いモンスター。赤く硬質な皮膚と同色の首まわりの鬣が特徴の、見た目は赤サイ。オスには鼻先に象牙色の角があり、メスにはない。体温が日射のように熱い。棲息地は主に火山地帯など熱い場所。鳴き声は「フゴフゴ」。
花子の脳内モンスターナンバー005
【サンライトドラゴン】
ドラゴン系。黄金色をしている。眩しく発光する炎を自由に操り、最強種と呼ばれるドラゴン系の中でもべらぼうに強い。暴君。
花子の脳内モンスターナンバー006
【ファングタイガー】
ビースト系。系統屈指の攻撃力を誇るモンスター。
花子の脳内モンスターナンバー007
【キングパンサー】
同上。
花子の脳内モンスターナンバー008
【ハイドモス】
インセクター系。ミノムシのように体まわりを葉や枝で綴り、木にぶら下がっているモンスターで、大変怖がり。中身の本体は白いウジ虫。体長は2メートルほど。鳴き声は低く、「シー」。