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13匹目 ホットライノーセラス談

 ランドキングビーさんが群れの端にいたオスの一匹を糸で巻き捕らえ(あまりの素早さに縛られた当人はしばし呆然としていた)、話を聞くことに成功した。

 と言っても、やっぱり私は他のモンスターと言葉が通じなかったので、ランドキングビーさん伝いで教えてもらったんだけど。

 何でかなぁ、どうしてもランドキングビーさん以外は鳴き声なんだよね。


 さて、話に入ろう。

 ホットライノーセラスさん達は食糧となる草やプラント系モンスターを求め、この緑生地帯に隣接する火山地帯から、私とランドキングビーさんが邂逅したあの荒野へと大移動しているらしい。皆で走っているのは、自分たちの高体温が緑生に与える影響を知っているから、ダメージを少しでも減らすためだ。ここ近辺を縄張りや住みかにしている他のモンスターに気を遣ってのことで、ビースト系には珍しく思慮深いモンスターなのである。


 じゃあ、なんでこんな普段居ないような場所を通ってまで移動することになったのだろう。


 ホットライノーセラスさんら草食系モンスターは、生態系を壊さないようにするため一定の季節ごとに大移動を行っている。

 大移動は地帯内で行っていくのが慣わし(というより本能的な行動・習性)だったが、最近になってその火山地帯に、ドラゴン系統の『サンライトドラゴン』という最強種と評されるドラゴン系の中でもべらぼうに強い黄金色のモンスターが移り住んできたことにより、状況が変わってしまった。

 眩しく発光する炎を自由に操るこのモンスターがまた暴君で、いたずらに草食系のモンスターの食糧を奪うものだから、ホットライノーセラスさん達の食べるものが一帯になくなってしまったのだ。

 食うものがない草食系のモンスターは生きるため、食糧を求めて地帯外へ移動を始めようとする。火山地帯から、草食系モンスターが減っていく。

 これに怒ったのはさらに草食系モンスターを食糧とする、肉食のモンスター達だ。火山地帯を縄張りにする『ファングタイガー』と『キングパンサー』というビースト系屈指の攻撃力を誇る2匹の肉食モンスターが、その『サンライトドラゴン』に挑み、何度も交戦を続けているらしい。しかし、その2匹をしてもまだ力の差があり、勝てそうにない。他に果敢に挑んだ、血の気の多い肉食モンスターはとうに倒されてしまった。

 群には子どもが多いため大移動は避けたいホットライノーセラスさん()は、始めは見守っていたのだが、そろそろ食糧が厳しくなってきたので渋々見切りをつけ、樹海を渡り、火山地帯から一番近いあの荒野に向かっているのだという───。



 何て言ったらいいか。モンスター界も色々大変だ。

 強き者が弱き者を苛むことが当然許される、弱肉強食のシビアな世界ですよ。

 人間界なら人権尊重だとか権利保障だとかで問題になりそうだけど、ここは力こそが物言うところで、完全にアウトローだからなぁ。食物連鎖的には受け入れるのが正解なんだろうけど、モンスターにもこうして意思があるものはあって、生きている訳で……うーん、善悪がつかないよね。

 難しいなぁ。ホント、何て声をかければいいのやら。



「フゴ、フゴフゴフゴ」



 うんうん、そうね、はい。とりあえず相づちをうつ。

 言っていることは一つも分からないけど、その『サンライトドラゴン』の悪業の愚痴だろうとは察しつくよ。苦労なさってるんだね。

 私でよければいくらでも聞くからよう、赤サイのあんちゃん。


 労るようにふわふわの鬣を撫でようとして────ランドキングビーさんの鎌に、その手を遮られた。え、どうして止めるの。



「グルル」



 触るな────はっ!そうか!糸でぐるぐると簀巻きにされてたからあまり感じなかったけど、このモンスターってば、めっちゃ熱いんだった!



「うおー危なかったぁ!熱いよね、火傷するところだったよ。ありがとうランドさん。優しいね」



「………グル」



「フーゴフゴフゴ、フゴフゴフゴフゴ!」



 あれ?なにゆえランドキングビーさんは顔を反らすんだろう。もしや照れたのかな。

 おいコラそこ、なんか分かった風なホットライノーセラスさん、ひとり笑ってないで教えやがれ。

 あ。ホットライノーセラスさんがランドキングビーさんに引き摺られながらどこか連れていかれてく。フゴフゴ私へ必死に言われても、何の事やらさっぱり。

 出会ったばっかりだけど2匹は仲良しなんだな。よきかな、よきかな。微笑ましいので手を振ってお見送りします。


 …ランドの旦那は力持ちだなぁ。




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